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2022年4月、世界経済フォーラムのGlobal Future Council on Agile GovernanceからRegulatory Technology(以下、RegTech)に関する白書Regulatory Technology for 21st Centuryが公開されました。Regulation(規制)とTechnology(技術)の造語であるRegTechは、2015年頃から規制に対するソリューションとして存在していましたが、第四次産業革命に代表される新たなテクノロジーの出現によって広く脚光を浴び、特に実社会の変化のスピードと規制のアップデートを対応させるアジャイルガバナンスの実装に不可欠な要素として注目されています。今回は、同白書で紹介されたRegTechのグローバルなユースケースから2事例を用いて、RegTech導入を成功させるために必要な要素を紹介していきます。

白書「Regulatory Technology for 21st Century」


世界経済フォーラムGlobal Future Council on Agile Governance 


RegTech(レグテック)とは?

技術やサービスの安心・安全を確保し、一定の質を担保するというのが規制の役割ですが、その一方で、規制には新しいアイデアや製品、ビジネスモデルの妨げとなり、イノベーションを阻害してしまうという局面もあります。
このような規制の社会的意義とインパクトを踏まえ、RegTechは新しい技術を活用して規制に関わるプロセスをデジタル化することで、規制する側の効果的なガバナンスを促進し、さらに規制される側のコンプライアンス負担を軽減することを可能にしています。具体的にはAIコンプライアンス管理、ブロックチェーンによるデータ追跡、スマート・コントラクトなどがその活用例に挙げられるでしょう。さらに昨今特に注目されているのは、対象とする市場の変化に対するアジャイル(迅速)な規制対応を支援することで、規制の継続的な評価と更新を可能にするという可能性です。


RegTechの成功事例

RegTechは実際にどのように活用され、どのような効果を与えるのでしょうか?同白書で紹介されたRegTechのグローバルなユースケースから2つの成功事例を紹介します。

事例① コロンビアのスマート・レギュレーション

コロンビアの次期政権がデジタル・トランスフォーメーションのための連携と指針の欠如が結果的にテクノロジーの採用を妨げていることを政策課題として掲げたことを受け、大統領府やラテンアメリカ開発銀行が国内のデジタル・トランスフォーメーションとAIへの取り組み、スマートレギュレーションについての設計・開発・導入に向けた主要なガイドラインという政策手段を作成しました。公共部門における情報の非対称性、そして公務員などのDXに関する知識不足という挑戦を乗り越え、結果としてこれはAIプロジェクトにおけるプライバシー・バイ・デザインとプライバシー・バイ・デフォルトを考慮した規制のサンドボックスの導入を導き、個人情報の収集、利用、処理に関わるプロジェクトで使用されるデータの適切な処理を保証することを可能にしています。さらに現在はデータを元に規制を実施し、またどの分野でさらなる規制が必要かをデータにより判断するという、よりスマートな規制のためのデータ活用が進められています。


事例② Xアルゴリズムによる ”Rules as data”

規制のテクニカルなシステムへの実装は困難とされる一方で、税制など精度の高いルールを効率的に自動化したいというニーズは以前から顕在化していました。Xアルゴリズム社は、「Rules as data」としてルールを動的に管理する手法(Oumghtoation)によって、あらゆるデジタルネットワークで使用できる、フリーかつオープンライセンスのリクエスト・レスポンス型のメッセージングシステムを開発し、誰でも簡単にルールを公開、発見、取得、精査、優先順位付けすることを可能にしています。


RegTech導入に必要な要因

こうした成功事例から、RegTechの導入に必要な要因を挙げていきます。

  • 技術導入:技術導入はRegTechの展開を成功させる要素です。規制する側は技術導入のロールモデルとして、RegTechを活用したアプローチを各業界に推奨しています。

  • 信頼関係の構築:規制する側と規制される業界や企業が信頼関係を築くことが、RegTechを適用する上で必要とされます。

  • ステークホルダーによる同意:規制当局や政府、社内関係者などのステークホルダーからの賛同を得ることでRegTechの展開と実装が効率化されます。

  • 官民の協調:パートナーとなる企業や組織が公共部門と共にシステムをデザインするなど、民間側が積極的に公共部門へ関与していく協調関係の構築が求められます。これは市場からの信頼を高めることを可能にします。

  • 支持者の存在:多くのステークホルダーが関与する場合、支持者が架け橋となってRegTechの導入を促進させます。情報の非対称性の低減や、新しいシステムの賛同を得るために支持者のような信頼できる人物の存在が効果的な役割を果たします。

  • ユーザーエクスペリエンス(UX)設計:ユーザー側の観点で設計を進め、彼らの体験を向上させることを重視した設計をすることで、UX設計を実現します。これは、よりユーザーのニーズに寄り添うことで、より優れたシステム開発を可能にします。

  • 多職種の連携:部門を超えたチームによる開発は、専門外からの知見や新しい着眼点を養うことを可能にするため、誰でも利用可能なシステム設計をサポートします。

また同白書では、最先端技術をどのようにRegTechとして活用するか、技術ごとの提供事例が紹介されています。

技術とその適用例

アジャイルガバナンス x RegTech

RegTechは、規制プロセスの標準化・自動化・合理化を進め、企業や市民の個別状況やニーズに精緻かつ柔軟に対応していくために必要な戦略です。アジャイルガバナンスの実現とRegTech導入は両輪の関係性にあり、日本でもより積極的に推進する体制を整えていくことが期待されます。私たちアジャイルガバナンスチームは、引き続きグローバルなRegTech活用事例を紹介していくとともに、RegTechの活用を積極的に支援していきます。

執筆
世界経済フォーラム第四次産業革命日本センター
水谷恵(アジャイルガバナンスプロジェクトインターン)
隅屋輝佳(アジャイルガバナンスプロジェクトスペシャリスト)
ティルグナー順子(広報)


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