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過去の災害を知る《4》埋立地の地震動増幅〜メキシコ地震(9月19日)~

 今年も日本のあちこちで大小の地震が発生しています。「震源は遠いし大丈夫だろう」とお考えのあなた、実はそうとも限らないのです。遠隔地で起きた地震で大きな被害を受けた事例が、過去にあります。

 少し遅れての投稿となりますが、本日は遠隔地の地震による被災事例の一つとして、1985年に発生したメキシコ地震についてまとめます。

メキシコ地震の概要
発生日時   :1985年9月19日13時17分ごろ(協定世界時)
発生場所   :メキシコ沖太平洋 深さ27km
規模     :マグニチュード8.0
被害     :死者9,500人以上、負傷者30,000人以上
        建物崩壊(collapsed)    420棟(メキシコシティ)
        大破(seriously damaged)3,124棟(メキシコシティ)

震源から数百km離れた首都で大被害

メキシコ地震

 この地震で特筆すべき点は、震源から離れたメキシコシティで揺れが大きかった点です。先に述べた被害の多くは、メキシコシティで発生しています。

 上の図を見ていただくと、震源より350km離れたメキシコシティの震度階級(日本の震度とは異なりますが、階級が大きいほど揺れが大きい点は同じです)が震源付近と似た黄色になっています。

 350kmというと、東京から京都の手前までの直線距離です。近畿地方で発生した地震で、名古屋や静岡ではなく東京が大きな被害を受けたと聞くと不思議だと思わないでしょうか。

埋立地の軟弱地盤が揺れを増幅させた

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 メキシコシティは内陸の高原地帯にありますが、実はかつて広大な湖に浮かぶ小さな島でした。17世紀よりスペイン人による干拓と埋立が進められ、現在の首都の姿になりました。

 埋め立てられて数世紀というと結構長い時間のように思えますが、地球の歴史から見ればほんの一瞬であり、十分に固まっていない「軟弱な地盤」と言えます。

 周囲の地盤と固さが異なる場所では、地中の地震波が反射等で増幅される場合があり、1985年の災害につながったと考えられています。

 実は、メキシコシティでは過去にも何度も遠方の地震により同様の災害が発生しています。メキシコシティは、地震災害に弱い首都と言えると思います。

日本でも発生の可能性が捨てきれない災害

 「埋立地」と聞くと、大都市のウォーターフロントが連想されます。また、巨椋池や岡山平野など干拓で拡大した町も多くあります。もしや、日本でも・・・と心配になりますね。

 もちろん、震源の位置や大きさ、更に地盤の小さな変化でも増幅の可能性は大きく変わりうるため「どこそこが危ない」とは一概に言えないと思います。

 しかし、私たちに大切なのは心構えです。「家の周りでは大きい地震の発生確率が小さいし大丈夫」でなく、「もしかしたら増幅されるかも」という注意一つで準備も大きく変わります。

 「大丈夫だろう」から「もしかして」へ。過去の事例から防災の気づきを得ていただければと思います。

参考文献等

・USGS(アメリカ地質調査所)

・NHK そなえる防災




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