「素人」の書き手がプロの記者に勝つ方法 ~「面白い文章」の書き方、教えマス~
執筆のステップ3段階あり、勉強会では以下のように説明しています。
1.読みやすい日本語で文章を書く。
2・根拠を示す。
3・面白い文章を書く。
専門家が文章を書くにはまず1の条件をクリアする必要があります。専門知識があることと文章が上手いことは近いようで全く別のスキルです。したがって99%がここで脱落します。トレーニング無しでまともな日本語は書けません(誰でも簡単に書けるならライターも編集者も仕事はとっくの昔になくなっています)。
2も言わずもがなですが、エビデンスという言葉も最近よく使われるようになりました。例えば医療の世界で根拠・エビデンスの無い(少ない)治療を医者が行うことは通常ありません。やると同業者からも患者からもトンデモ医師としてバカにされます。これは執筆も同じです。
■ウェブの記事は大半がスマホで読まれている。
1と2の条件をクリアすると、専門家として恥ずかしくないレベルに到達できますが、これはスタート地点です。
読みやすくて根拠があるだけでは読まれません。
つまらないからです。
現在、ウェブメディアのニュースは大半がスマホで読まれています。
スマホにはゲーム、音楽、動画、漫画、書籍、SNS、そして様々なアプリまで何でも揃っています。電話やメールやLINEで友人とや恋人とコミュニケーションも取れます。買い物も出来れば他のニュースもあります。
いずれも「コンテンツ」と表現されるものです。
そしてあらゆるコンテンツは他のコンテンツと激しく時間の奪い合いをしています。可処分時間と言って、人が使える時間は有限だからです。
そんな状況で自身の書いた文章を読んでもらうには圧倒的な「面白さ」が求められます。
面白い記事を書くなんて専門家の仕事じゃない
そう思った人は時間の無駄なのでブログやSNSを書いて集客することは完全にあきらめてください。つまらないコンテンツを読む義務は読者にないからです。
ウェブの記事を勉強のために読む人もいません。特にウェブメディアならばその傾向は顕著です。理由は面白いコンテンツが他にいくらでもあるからと書いた通りです。
では作家でもシナリオライターでも漫画家でもない専門家が面白い文章を書くにはどうしたらいいのか?
■面白いことの強さとは?
講師の中嶋は元々作家志望です。
昔は小説やシナリオを書いて食っていきたいと考えていました。
ただ、作家としてはまったく才能は無かったようで箸にも棒にも引っかかりませんでした。その分どうすれば面白い文章を書けるのか、面白い話を作れるのか、子供の頃からずっと考えていました。才能の無さを補うために小説の書き方といった本も多数読みました。それが今役に立っています。
漫画・映画・ゲーム・小説などなんでも構いませんが、好きな作品はありますか? そのストーリーを説明できますか? 多分だれでも一つや二つはそういったハマった作品があると思います。内容を詳しく説明することも簡単だと思います。
そんなの好きな作品なら当たり前、と思いますか?
実は全然当たり前じゃありません。
よく考えると凄い事です。
例えば本一冊分の長編小説なら原稿用紙で300枚以上、10万文字を超えます。漫画なら長いものでは数十巻も続きます。それだけの情報量を覚えて、なおかつ時間がたっても忘れていないわけですから。教科書を丸暗記しているような凄い状況です。
なぜ記憶しているのか?
それは「面白い」からです。
面白い記事を書けば読者の記憶に残る、編集者が好んで使う表現で言えば「読者に刺さる記事」になります。それだけ面白い事は情報発信をするうえで強みになります。
念のため説明しておくと、ここでいう「面白い」は変なこと、奇抜さ、ジョークを交える、笑える、炎上目当てといった意味ではありません。参考記事は最後にのせておきます。
■「物語の手法」でプロの記者に勝つ。
例えば自分が書く文章は、マネー、ビジネス、経済等に関する記事です。これらの記事は経済誌や新聞にも載っていますから、本来ならばFPごときが勝てるわけがありません。
それらの記事を書くのはトレーニングを受けた新聞記者や雑誌記者、あるいは経験豊富なベテランライターです。文章力でも知識でも(多分)負けています。これは素人とプロの戦いと言っても過言ではありません。
それでも、自分の書いた記事はそういった記事と比べて引けを取らないほど読まれます。場合によっては何倍も差をつけてアクセス数で圧勝することも珍しくありません。日本最大のウェブメディアであるヤフー!ニュースの経済カテゴリでアクセスランキングで1位になったり、総合カテゴリで1位になることも珍しくありません。
それが可能な理由はベテラン記者やライターでも全く知らない、そして使いこなすこともできない「面白い記事を書くテクニック」を駆使しているからです。このテクニックは作家志望の時期に学んだ、小説や漫画や映画などを作る物語の手法、エンターテインメントのテクニックを応用したものです。
そんなテクニックを作家ではない人が習得できるのか?と思うかもしれませんが、作家の世界で全く成功しなかった自分程度のレベルで習得すれば十分なので、難しくはありません。
手順としては最初に紹介した3つのステップの3段階目で応用編にはなりますが、書きながら徐々に覚えていけば良い、ということになります。
■物語の力は人を動かす。
過去に書いた記事でこのような「物語の手法」を活用した記事で上手くいったものは以下の記事です。
お天気お姉さんの井田寛子さんを取り上げた記事はヤフートップに掲載されて爆発的に読まれました。お天気お姉さん=カワイイ、天気に詳しい、そんな手あかにまみれた視点とは全く異なる「働き方」という新たな視点が「物語の手法」によって浮き彫りになった結果です。
この記事の掲載直後、執筆の参考にしたと紹介した井田さんの本は即売り切れになり、増刷されたほどの反響でした。そしてこの記事以降の井田寛子さんのインタビューは、すべてこの記事を参考、場合によっては真似たような内容になっています。
自分は井田さんの本を参考に記事を書いただけですが、本人にインタビューをして記事を書くライターですら、記事で浮き彫りにした「物語」から逃れられないほど強烈なインパクトを与えた事が分かります(お天気お姉さんである井田寛子さんに働き方をテーマにしたインタビューを行う、という企画自体が記事の視点と全く同じです)。
セブンイレブンの記事も掲載時には多数のアクセスを集め、加えて編集部には当事者であるコンビニオーナーから素晴らしい記事だとわざわざ電話が来たと聞いています。こんな反応はまずないと担当編集者の方も驚くほどでした。「物語の手法」によってセブンイレブンが起こした問題の本質に迫ることができた結果です。
「面白さ」といっても色々意味にとれますが、表面的な説明や描写にとどまらずに本質をえぐり出す、そして他の見方が出来なくなるほど強烈なインパクトを与える、そんな事も可能になります。執筆で目指すべき面白さはそのレベルです。
■アマゾン創業者のジェフ・ベゾスが重視する、本質をえぐり出す「物語の構造」とは?
ネット通販最大手、Amazonの社内で行われる会議ではプレゼンテーションソフトのパワーポイントが禁止されている、会議の冒頭に文章で書かれた資料を全員で読む……これは度々話題になっている有名な話です。
ベゾスは2004年に社内の幹部へ送ったメールでその理由を説明しています。
この逸話は図やグラフでなんとなく分かったような気分で仕事を進めないようにするためだ、とパワポのデメリットばかりが強調されていますが、箇条書きの資料も同じくダメだとベゾスは指摘しています。注目すべきは創業者のジェフベゾスが「ナラティブ・ストラクチャー」が重要と説明していることです。
ナラティブは日本語に訳しにくい単語ですが、おおむね物語と理解して問題ありません。和訳すると「物語の構造」となります。ジェフ・ベゾスはパワポがダメとか文章が良いといった表面的な話をしたのではありません。文章によって伝わる「物語の構造」が重要である、と考えているわけです。
“Full sentences are harder to write,” Bezos told Fortune. “They have verbs. The paragraphs have topic sentences. There is no way to write a six-page, narratively structured memo and not have clear thinking.”
How Jeff Bezos Uses Faster, Better Decisions To Keep Amazon Innovating フォーブス、2018/10/24
既に書いたように、物語の形にすると膨大な情報量であっても記憶に残る、受け手に突き刺さる、といった効果があり、それを仕事に応用していると言えます。アマゾンジャパンで13年も広報として働いた女性が、「アマゾンで学んだ! 伝え方はストーリーが9割」という書籍も出しています。いかにベゾスが物語の手法を重視していたかがわかります。
面白い記事とか物語の手法とか言っても何のことやら??と思われるかもしれませんが、ジェフ・ベゾスも物語を重視している、と説明すれば納得してもらえるのではないでしょうか。
■物語の手法を具体的に教えます。
過去に物語の手法を説明した記事は以下二つです。
100日後に死ぬワニ、感動と炎上の理由は「物語」にある。 https://note.com/bz_write/n/n96b99f0fc79c
NHKの「プロフェッショナル・仕事の流儀」を見ながら、ドラマ「逃げ恥」が平凡なのに面白い理由を考えてみた。 https://note.com/bz_write/n/nb129f2ad6efa
二つ目の記事で触れた漫画編集者の佐渡島さんご本人からは以下のようなコメントを頂いています。
どちらの記事も参考になると思いますが、物語的な要素のある記事はどう書けば良いのか?までは説明していません。出し惜しみではなく単純に深掘りが足りなかっただけです。
勉強会の詳しい案内を読みたい方はこちらからどうぞ。
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