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怪しの話

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You Tubeのの星野しづくさんのチャンネル「不思議の館」と、ツイキャス(You Tube)の「怖い図書館」に投稿した、不思議な話や怖い話をほぼ週1回のペースで掲載しています。
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2023年12月の記事一覧

はじめての彼女

 これは昔、仕事仲間だった川田君という男性の、若くてウブだったころの体験談です。 川田君が関東にある大学に合格して、一人暮らしを始めてしばらくした頃のことだそうです。 彼はとある居酒屋でアルバイトをしていましたが、そこにお客として来ていた雪絵さんという女性とひょんなことから親しくなり、やがて付き合うようになりました。 年齢は川田君よりふたつ上とのことでしたが、愛嬌があり、見た目も可愛い女の子です。 自慢ではありませんがこの川田君、イケメンというよりは醜男に近く、高校時代ま

罰(ばち)

この話は10年ほど前、仕事で1週間ほど関東地方に出張していたときに、偶然聞いた会話の断片です。 それは平日の午後3時頃のことでした。 私は遅い昼食を摂るために下町の中華料理店にいました。 片側に8人ほどが座れるカウンターと、反対側に4人掛けのテーブルが3つほどの、夫婦で経営している小さな店です。 中途半端な時間帯だったためか、客は当初私ひとりでしたが、しばらくすると3人連れの客が入店してきました。 3人とも白髪のまじりはじめた50代くらいの初老の男性で、いずれも黒いスーツ

キラキラ星

これは今から60年以上前、私が3、4歳の頃の記憶です。 当時、私の一家は市内中心部の、戦後すぐに建てられた古い平屋の一軒家に住んでいました。 玄関の引き戸を開けると、目の前には道幅3メートルほどの歩道があり、その先は片側2車線の県道が東西に通っています。 玄関の目の前の県道を右に少し行けば、「新京橋」という大きな橋へと続いていて、左にまっすぐ行くと市役所方面に出る、今も変わらない幹線道路沿いに住んでいたのです。 玄関先の軒には浅い庇があり、足元にはその庇よりも少し大きいく

はしゃぐ子供

私は週3回病院通いをしていますが、これはその帰り道での出来事です。 かかりつけの病院からの帰路は、最寄りの停留所から一旦JRの駅行きのバスに乗り、駅で自宅方面行きのバスに乗り換えて帰ることにしています。 病院の最寄りのバス停は、大きな五叉路の交差点の一角にあり、平日だと3方向から、ほぼ10分間隔で駅へ向かうバスがやってきます。 その中でも特に便数が多いのが、すぐ近くにある大学病院を経由して来るものでした。 つい先日のことです。 その日もかかりつけの病院を出て、バス停に着い

ケベック焼きまんじゅう

わが家の前の道を、車で西へ15分ほど行った先に、以前から気になっている一軒の店があります。 表通りから一本はずれた、住宅地に小規模な店舗が点々と混在している地域の中をはしる、片側一車線の狭い県道。 その道が左に大きくカーブした先の、小さな交差点の角にその店はありました。 上から見ると、長方形の右下の角を削ったような形のその店は、一見すると小さなパン屋のようにも見えますが、周囲に駐車場はなく、交差点と接するように敷地いっぱいに建っています。 軒には固定式のテント看板が取り付け