星の灰

落ちてきた ずっと遠い遥か向こうから
夜の匂いをした 君の名前を知らない
空が燃えていた 白く眩むような色をして
夜を裂いて咲いた 君の名前を知らない

埋めることのできない 大きな穴をあけて
君は僕の中に 散り散りになった
どこから 何をしに
いつから 何のために
聞けないままで 会えなくなって

舞い上がった灰が ゆっくりと降り積もる
冷えてゆく星の上を 僕は歩いた
星たちが消えた 暗い夜の底で
君の火を 思い出していた

昨日と同じ 息をしている間に
いつでも世界は 終わりに向かっているんだ
会えた瞬間から 別れも始まっていたんだ
たった一呼吸 まばたきも忘れた
あの瞬間だけが 僕たちの全てだったんだ

埋めることのできない 心の空洞に
許す限りに 君の欠片を抱くよ
時間の洪水に 流されないように
壊れた世界に 積もった灰が
新たな世界に 生まれ変わるまで

いつかずっと 遠い未来に
僕たちは ひとつになる

幾億の 挑戦のはてに
星の灰は 宙に届く

君もそうだったのかもしれない
君も誰かの 灰だったのかもしれない



2021/10/2 病院

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