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勝手に動画分析 #55「多重露光での時間の重なりにこだわった秀作」

こんにちは、BYNDのNATUです。

BYNDではナビゲーターやTAとしてセッションに参加しています。

noteでは「週末にゆっくり嗜む動画」というコンセプトで個人的に気になった動画を毎回一つ取り上げ、4つのベース項目と1つのエクストラ項目の計5つを軸にその動画の唸るポイントを分析したり解説したりしてみたいなと思ってます。

今回は多重露光やフェードといった映像が重なり合う時間表現にこだわった一作品を紹介。写真とはまた違った強力な表現力を感じてみてください。


Shame - Jennie Lawless


 (via YouTube|Jennie Lawless)


Director: Elizabeth Godar
DP: Adam Leene
Editors: Elizabeth Godar & Elliott Sellers
Color: Madeline Kate Kann
Costarring: Madisyn Ritland
Extras: Will Ward, Chris Gale, Madeline Kate Kann, Bren Perry


今回の5項目チャートはこんな感じです。


今回のエクストラ項目は「重ねる」。


そしてそれぞれ5つの項目のショートコメントがこちら。



[LOOK:★★★★]


シンプルで綺麗な色使いが作品の柱である多重露光の演出をとても効果的に見せていて、かなりよく考えられたLOOKだなと唸りました。透過具合はもちろん、重ねた時の色の混ざり具合まで意識して作られたという繊細なグレーディングによって多重露光という飛び道具がとても自然に作品世界に溶け込み、まったく悪目立ちしていないのはすごいです。

彩度は抑えつつも補色を使って色のコントラストを
高くしているので、重ねるととても映えます。


[音:★★★]


サウンドデザイン自体は少ないものの、楽曲の意味を汲み取りインスパイアされたビジュアルや楽曲前後に加えられているストーリーパートの丁寧なサウンドデザインがよく利いていて、MVでありながらショートフィルムとしての完成度も高いです。


[編集:★★★★★]


多重露光での演出を事前設計してからの撮影、そしてそれを編集で使いこなすということの凄さ。ひとつのシーンに複数の場面を重ね、それぞれをしっかりとコントロールするというのは離れ業すぎて唖然とします。逆に他の編集は極力シンプルになっていて、「重ねる」演出だけに振り切った取捨選択の勘所も見事です。


[構成:★★★★★]


時間軸に合わせて重ねる、回想で重ねる、美しさで重ねる、動画表現で映像を重ねることの意図やその強みを存分に生かす構成になっていて、それを企画段階からしっかりと計算していくというのがまずかっこいい。少数チームで作り上げ、監督がそのままエディターということで演出表現が世界観に直結しているのも気持ちいいです。

多重露光が映えるようにちゃんと光と影が
綺麗に出るシチュエーションが多くなっている


[重ねる:★★★★★★]


すでにちょこちょこ触れていますが、この作品では楽曲内容を受けて演出の軸として「多重露光」を選ぶところからスタートしていて、そこを前提として撮影や編集・カラー調整が行われているという珍しいスタイル。こういった挑戦的なクリエイションはやはりいいですね。動画においての多重露光の力に終始感心させられっぱなしでした。シンプルなものから凝ったものまで、本当によく考えられた様々な「重ね」が出てきますのでぜひ堪能してほしいと思います。




さて、以上いかがでしたでしょうか。

動画の面白みに少しでも触れてもらえたなら嬉しいです。

それではまた次回。NATUでした。

(Writer:スタッフ NATU)

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