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勝手に動画分析 #25「手振れのローファイ演出がキャッチーなスポーツアパレルPV」

こんにちは、BYNDのNATUです。

BYNDではナビゲーターやTAとしてセッションに参加しています。

noteでは「週末にゆっくり嗜む動画」というコンセプトで個人的に気になった動画を毎回一つ取り上げ、4つのベース項目と1つのエクストラ項目の計5つを軸にその動画の唸るポイントを分析したり解説したりしてみたいなと思ってます。

今回はパリ・サン=ジェルマンxNIKEのプロモ動画から。とても今っぽいなと感じる要素詰まったかっこいい作品です。


PSG

 (via vimeo|KINOU cinematographer agency)


Directed by Pablo Babinet
Produced by Aswan
DP : Lara Perrotte


今回の5項目チャートはこんな感じです。

今回のエクストラ項目は「ブレ絵」。手ブレを活用した絵の意味です。


そしてそれぞれ5つの項目のショートコメントがこちら。



[LOOK:★★★]


キレイという絵ではないですが、このLOOKにむけて撮影現場のセッティングから確実に作り込んでいてクオリティはとても高くかなりキャッチー。深掘りは後述していきますがマイナスのビジュアルを配置することで、そうでない絵との差分(コントラスト)を作っているのが構成としてもとてもうまいです。

LOOKとしてはサッカーチームらしいビジュアルでしっかり練られています。
一方で撮影や編集でテクニカルに仕掛けてくるフッテージも多く見ごたえある作り。


[音:★★★]


サウンドデザインはなかなか興味深い作り。レトロなズーミングに合わせてチープな機械音を当ててたり、本来は没入感を妨げる「撮影してます感」を音も掛け合わせてより強調しながら逆張りしていくスタイル。リアリティを作るためのサウンドデザインではなく、動きを強調するためのサウンドデザインという点ではモーションデザインでの考え方に近く、この使い方は面白い。このなんでもありなフリーダムさは個人的にはまさに「動画」という感じがしてとても好きです。絵からも音からも瞬発力ある強い熱量を感じます。

レトロなズーミングにチープな機械音。
こういう演出が随所にあり決め所で音数を絞る演出の効果を高めています。


[編集:★★★★★]


かなりトリッキーに見えますがしっかり見終えることができる編集になっていてエディターが視聴者の視線やフォーカルをしっかり意識してカットを組み上げているのがわかります。こういった目まぐるしい構成を整えるには意外と古典的な編集文法がカギなので分析する側としても勉強になります。

一貫して中央構図がとられていて、見やすい。
構図を合わせる。シンプルな技法ですが効果抜群。
このへんのつなぎもうまい。
下向く動作を重ねてから跳ね上がるボールに繋いでガラリと変わる解像感を中和。
こういう細かい編集のうまさが作品を支えています。


[構成:★★★★]


いま逆に新鮮だよね、という表現が盛り盛りでシンプルに見た目で楽しめますが、うまいのがそういったローファイなたくさんの素材をしっかり「見づらい画」として捉えて効果的に使っているところ。とても巧い。基本的この動画の主役は解像感バッチリの画です。そこをバチッと印象付かせるために「引き」として一旦ローファイに下げる。動画や映像において一旦下がる構成は定番ですが、この作品は下がる際に「かっこいい素材」を使っていて「下がってるんだけど下がってない」状況をキープしているのは見事です。そう考えるとローファイ素材って今すごく便利なんだなと改めて思いました。

主役はこっちの絵。
ローファイって便利だったんだなと目から鱗。


[ブレ絵:★★★★★★]


構成の項でも触れてますが、この作品はローファイがカギです。ただ、他作品と違って面白いのが解像感や色でのローファイだけでなく、激しい手ブレ感もローファイに含めてしまっているところ。そう考えると手ブレする画って今の若い人たちには表現として新鮮だよなと。もちろん実際問題として視聴者が酔うこともあるので取り扱い注意なのは間違いないですが、激しい手ブレの画も表現の一手法として手札に持っておくことは必要だなと思わされました。

オフショットと組み合わせているのもうまい。
ブレ画の使い方が完全に計算ずくです。




さて、以上いかがでしたでしょうか。

動画の面白みに少しでも触れてもらえたなら嬉しいです。

それではまた次回。NATUでした。

(Writer:スタッフ NATU)

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