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勝手に動画分析 #43「動かしてみたいという気持ちの原点に立ち戻れる作品」

こんにちは、BYNDのNATUです。

BYNDではナビゲーターやTAとしてセッションに参加しています。

noteでは「週末にゆっくり嗜む動画」というコンセプトで個人的に気になった動画を毎回一つ取り上げ、4つのベース項目と1つのエクストラ項目の計5つを軸にその動画の唸るポイントを分析したり解説したりしてみたいなと思ってます。

今回は魅力的なイラストを動かした一作。動くことで原作とはまた違った世界を生み出しているのが面白い。


Pini

(via vimeo|Mute)


Illustration - Matteo Berton
Animation & Direction - Mute
Music & Sound - Zing Audio


今回の5項目チャートはこんな感じです。

今回のエクストラ項目は「動かしたい」。


そしてそれぞれ5つの項目のショートコメントがこちら。



[LOOK:★★★★★]


完成度が高い1枚1枚のイラストを使いながら動画作品として全体のLOOKがちゃんと整えられているのは見事。版画ということもあり色数が抑えられた原作の特徴をうまくカラーマッチ(作品通しての色味の統一)にもいかしながら、連作イラストとしての色の華やかさも踏襲してます。

カラーマッチのツールとして余白が機能しているのもうまい。


[音:★★★★]


どこかしら風情を感じさせるような原作のテイストに合わせて、モーション・サウンドともに落ち着きのある作りです。静止画を動画にする際に魅力の中核を担う音ですが、細かく気が配られたサウンドデザインはとても心地よく仕上がっています。

アンビエンス(環境音)やフォーリー(動作音)の選び方もすごくいい。


[編集:★★★]


各イラストをつなぐ際に「行間にあたる要素」を新規デザインとして作ったり、加えた動きをいかしてうまくトランジションしていたりして、原作へのリスペクトとともに編集力の高さを感じます。前後シーンの共通項(構図とか色とか)を引き継いでカットを切り替える「マッチカット」はイラストという元デザインがある中でとても効果的に機能しています。

芽が出る様子もちゃんと原作テイストです。
回転させてのマッチカットシーン。回し方も面白い。


[構成:★★★★]


魅力的なイラストの印象を損ねずに、より世界観が広がるような動画作品となっているのがまず驚きです。動くことの面白みなどモーションデザインとして足せる魅力はしっかりと加えながらも、全体通して動きの演出自体をさり気なくすることで静止画を見る際の「想像の余地を残している感じ」というのが動画なのにあるんですよね。カットの並べ方や間のとり方で緻密に作られたこの空気感、すごい構成力だなと唸りました。


[動かしたい:★★★★★★]


おそらくですが、「この素晴らしいイラストが動くところを見てみたい」と強く思ったのが発端なのかなと勝手に推測しているのですが、その動機ってすごく大事だなとこの作品を見て改めて思いました。動かないなにかを見たときに、どう動くと魅力が増すのか、もっと感覚的には「自分がどう動かしたいのか」というところって意外と忘れがちな欲求なのかもしれません。この作品を見てその根っこの感覚が少し蘇った気がしました。




さて、以上いかがでしたでしょうか。

動画の面白みに少しでも触れてもらえたなら嬉しいです。

それではまた次回。NATUでした。

(Writer:スタッフ NATU)


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