王女モドキ物語 強力な新人剣士編 (小説)
【王女モドキ物語 強力な新人剣士編】(完成版)
灰色のツインテール、それから青白い肌、目の下には、ピンクのひし形、そんな女性キラメアは、最近、元気がない。
彼女の主、王女モドキという赤い二本のしっぽを生やし、全体的には、黒髪で、紫の髪が混じる王女モドキという男は、そんな彼女を心配していた。
暖炉と古い本棚が置かれた薄紫色の壁で囲われた、屋敷の一室で、話をしてみる。
「キラメア、何か心配ごとでもあるのかい?」
キラメアは、うつむく。
「王女モドキ様、私、怖いんです。最近、怪物、人よらずを狩りに、このあたりまで、剣士達がよく来るようになりました。今まで、人がここまで、来ることは、めったになかったのに」
王女モドキは、片手にどこからともなく、本を出現させ。表紙をなぞる。
「私もそれは、気にしているが、人間であるキラメアを奴ら、剣士の集まり剣団(つるぎだん)が襲うことは、ない。君は安心していい」
キラメアは、首を振る。
「だからこそ、心配なのです。貴方様は、赤い二本のしっぽの生えた人よらずの一体なのですから!王女モドキ様が倒されるようなことがあったら私、耐えられません……」
黒い髪に混じる紫の前髪をつまんでいじりつつ、王女モドキは、ソファーに深くもたれる。
「人よらずは、その名の通り、人の領域を離れたすごい魅力的で強い生き物だ。そうそう、奴らただの人間には、負けないよ」
紫の左目がツインテールの娘を見る。
「唯一負ける可能性があるとすれば、我らの住みかであるこの森を出た時だ。ここから出たときのみ、我らは、不死身でなくなる。それがなければ大丈夫だ」
王女モドキは、キラメアの頭に手を乗せて、優しくなでた。
その日の、夜は、なかなか寝付けず、キラメアは、王女モドキのそばで、ずっとずっと、彼を見つめていた。
王女モドキもまた、寝ないで暖炉の火を見ていた。
時は、ゆっくり、ゆっくり流れた。
日が昇るその時まで、彼女の心配や不安をずっと、王女モドキは、そばで、聞いて。うなずき。
心が本の少しでも、軽くなるよう。彼女の心を重くしている。心配ごとを一緒に心の手で持つ。
反論も否定も、助言も必要ない。ただ、ただ、聞いて、彼女がいたいだけ、隣で話を聞いた。
朝、鳥が鳴くころ、キラメアは、疲れてソファーで眠る。
王女モドキは、緑色の毛布をそっとかけ。部屋を後にした。
キッチンにおもむくと、木製の机にお皿と野菜のスープが用意されていて、その横で、オレンジの髪に、緑色の目、赤い口紅をぬり、化粧に気を使っている二十代の女性がいた。
「やあ、香乃、起きたのかい。」
「おはよ。モドちゃん」
「おはよう、さて、早速だが、話がある。最近、剣団がここまで、たどり着くということがちょくちょく起きているのは、しっているよね」
オレンジ髪の女性、香乃は、うなずく。
「この屋敷は、人よらずの陣地となったこの森の中央付近にある。本来こんな奥地まで、人よらずの力を借りずに人間が来るのは難しいはず。おかしい」
朝食を済ませると、王女モドキは、調査に赴(おもむ)くことを決めた。
深い緑の森を歩いて見回る。地道だが、しょうがない。
王女モドキの能力は、見た生物の現在までを伝記にして見ることができること。
それで情報を得るには、この紫の左目に奴らを映さなければはじまらない。
二時間ほど、歩き回り。一度木の根で休憩していると。
ドゴォォ!!
という地面や岩を砕くような。音がする。
王女モドキは、音が聞こえた方に走った。
距離はそこまで遠くない。百メートルくらい先だ。
すぐに駆け付ける。
走りたどり着いた先では、水色の制服を着こんだ剣士達が巨大な大蛇を相手にしているところだ。
大蛇は、目が一つで口から腕のような。触手が生えており、尾の先は赤く、二本に別れている。
人よらずの怪物レレラだ。
大きな緑色の網目の入った長い体で、次々、剣士達を締め上げようと襲いかかる。
だが、ミディアムヘアの茶髪に赤目の女性剣士がレレラの体を握りしめ、片手で投げ飛ばし。その後、間髪いれずかかと落としを当てる。すると、雷がかかとから、現れレレラの体を這い回る。
レレラは、悲鳴をあげ意識を失う。
王女モドキは、木の裏に隠れてその様子を見ていた。
剣団は、とんでもない逸材を見つけたらしい。
レレラを気絶させるなんて、人がそうそうできるものじゃない。
茶髪に赤目の剣士は、あの強かった大蛇レレラを仲間の剣士に命令し、口から生えたおぞましい、手のような黒い触手をロープで縛らせた後、持ち上げ、自国の方に歩いて行った。
人よらずは、森の中では命を失わず。倒しても倒してもすぐさま完全に回復し、本沈みの沼というところから現れる。
奴らは、不死の力を使うことができなくなる。人よらずの森の外にレレラを出そうとしている。
王女モドキは、迷った。このままレレラが連れていかれ。完全に倒されてしまえば、森に入る難易度が下がり、私達の平穏が壊されかねない。
だが、レレラみたいな暴れものを助けるのは、気が進まない。王女モドキは、ため息を吐くと、近くに横たわる枯れ木を蹴り、大蛇を持ち上げている剣士に向け飛ばした!
しかし!難なく剣士は、それをかわして、こちらに足を向ける。
かかとから雷が一本ジグザグに放たれる!
王女モドキは、なんとか、よけて一発しのぐ、そして、再び、周りにある、岩や、枯れた枝。砂や、土を蹴り、レレラを持つ、茶髪で赤目の剣士にぶつけようと飛ばす。
剣士はよけて、よけて、余裕そうにしている。
それでいい。王女モドキは、心の中でそう思った。
とにかく、近づきすぎず、攻撃をぎりぎりかわせる距離で、時間を稼ぐ。
「レレラ、起きろ!」
声を出し、少しでも早くレレラが気がつかないか、騒がしくする。
さあ、運が良ければ、助けられるかもしれない。
大蛇を持っていない。手の空いている剣団の剣士達が地面を蹴り、接近してくる。
王女モドキは、最初に近づいて来た者の剣をかわし、蹴りを腹に当てる。
一人、後ろに倒れる。
次の者は、手から魔法を使い炎を出す。距離が近いため、避けたつもりが白い上着の端に火が燃え移る。
すぐさま、上着を脱いで。全体に燃え移らないようにする。そして、脱いだ上着を魔法を使った張本人に投げつけ怯んだ隙に、蹴りを足元にいれ、転ばす。
大蛇を持っている者を含めて剣士は、五人。その内二人は蹴られた痛みで少しの間動けない。
後二人、倒せば。大蛇を持っている奴にたどり着ける。
奴から、なるべく雷が飛んでこないように。他の剣団を壁にするように、立ち回る。
壁にしながらも、しっかり蹴りをいれて、残る二人に一撃ずつ与えうずくませる。
そして、痛みに悶える1人を背中側から捕まえて、持ち上げ、盾にしながら、大蛇を持ち上げる女剣士に接近する。
その後、
女性剣士に向け蹴り入れる振りをして、彼女が持ちあげている、大蛇、レレラを力一杯蹴った。
大蛇は、大きく吹き飛び、離れた樹木にぶつかる。
すると、その痛みで意識が戻ったレレラは、身をくねらせる。
そして!
レレラは、怒り興奮し、落ちている剣や、岩、木に、口から生えた触手を拘束するロープをぶつけ回っている。そして、こちらにも何度も縛られた触手を叩きつけてくる!
王女モドキは、それに当たらぬよう動きつつ。女剣士と戦う。
かかと落としと剣技を交互に繰り返す女剣士、かかとが当たれば気絶させられ、負け。
あと、何回しのげる?
残念ながら、今回は、調査だけして逃げるつもりで、油断していた。王女モドキの刀、名刀ひとめを持って来るのを忘れて来ていた。
相手の剣とかかと、両方、受けずに、回避だけするのは、難しい。
せめて刀があれば、剣は、受け止められるのに。
女剣士の斬撃は、鋭く、足を狙ってくる。足を斬りつけ体勢を崩した瞬間、雷のかかとを当てるつもりだ。
よけろ!よけろ!
王女モドキは、必死にかわし、距離をとろうとする。
だが、相手はぐんぐん攻撃のテンポをあげ、高速で距離をつめる。
次の瞬間、今回の戦いで最速の斬撃が迫る。
避けきれない。
王女モドキは、足を少し斬られ、体勢を崩す。
勝ったと、女剣士がニヤリと笑う!
これで負けか……。
そう考えたとき。レレラが女剣士を口から生えた触手で後ろから殴り飛ばし。
間一髪助かる。
腕のロープをなんとかちぎったらしい。
なんにせよ助かった。
女剣士は、吹き飛ばされた森の木の枝に引っ掛かり気絶している。
王女モドキは、安堵(あんど)した。
彼女は、最後の今回最高スピードの剣が当たって、一瞬油断した。だから、レレラの攻撃の注意が少し甘くなった。
それが今回彼女の敗因だった。
茶髪の赤目の剣団の剣士は、他四人の剣団の剣士に抱き抱えられ退却を始める。一番強い彼女が負けた時点で戦意がなくなったらしい。
一目散に逃げていった。
レレラは、追おうとするかもしれないと思ったが、さすがに疲労したらしい。追わずに休んでいた。
我らは、森の中では不死だ。致命的なダメージを負えば沼から回復して、戻って来る。
だが、今回のように、二体とも、心臓が止まるようなダメージは、受けてない場合は、完全復元は、されない。
二体は、疲れていた。
人よらずの怪物二体がかりで、倒すのに苦労する人間が現れた。二体の目は、不安を感じていた……
END