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かくれんぼ 【短編小説/怖い話/ミステリー】スキマ小説シリーズ 通読目安:3分

あの日、ここでさよならといった君は、いなくなった。
次の日から、何の前触れもなく、二度と姿を見せなくなった。
俺はもちろん、君の両親も、友達も、誰も行方を知らなかった。

あの日、君は、朝、親と喧嘩したと言っていたけど、あのときの話を思い出しても、家出してそのままいなくなるようなものじゃなかった。
まだ幼かった俺にも、それだけは分かった。
俺も、親と何度も喧嘩したことがあったから。

だから、分からなかった。
なぜ、君がいなくなったのか。

でも、ようやく分かった。
君がなぜいなくなったのか。
なぜ誰にも言わなかったのか、なぜ誰も君の行方を知らなかったのか。

分かったのはそれだけじゃない。
あの日、君がいなくなってから、俺にとって、君がどれほど大切な人だったか・・・
・・・どれほど君のことが好きだったかに気づいた。
本当に大切なものは、失ってから気づくと言うけど、本当に、そのとおりだった。

けど、もうどうでもいいことなのかもしれない。
理由が分かっても、行き先が同じでも、君に会えないなら・・・

いや、もしかしたら、会えるかもしれない。
でも、もし会えたとしても、きっと、君はもう・・・

キキィーッ!!

車が急ブレーキをかけて止まったかと思うと、複数の人間の足音と怒声と、何かがぶつかり合うような音が響いた。

なんだ・・・

何が起こっている・・・?

「おい、大丈夫か?」

急に話しかけられたかと思うと、視界が開け、目の前にはスーツを着た男がいた。

「大丈夫・・・です・・・」

少し離れたところでは、数人の男が警察に取り押さえられている。
話しかけてきた男も、警察のようだ。
それが分かったとき、状況が理解できた。

俺は助かったのだ。

「怪我は?」

「怪我も・・・ していません・・・」

君のときも、助けが来ていれば・・・
もっと早く、動いてくれていれば・・・
いや、今はそれを嘆いている場合じゃない。
あのときは、

「それより刑事さん、お話したことが・・・」

君の居場所は分かった。
でも、警察にどこまでできるかも分からない。
俺にどれだけのことができるか分からない。
一人では到底無理だろう。
けど、呼びかけ続けることはできる。
君を連れ戻すために・・・

必ず、助け出してみせるよ・・・


みなさんに元気や癒やし、学びやある問題に対して考えるキッカケを提供し、みなさんの毎日が今よりもっと良くなるように、ジャンル問わず、従来の形に囚われず、物語を紡いでいきます。 一緒に、前に進みましょう。