カエルを選んだ話

先日、普段はあまり行かないディスカウントストアに久しぶりに行ってみたところ、大量のカエルの置物が投げ売りされていた。

スマホより少しだけ小さいかな？というくらいのブリキのカエル。

針金と薄い鉄板をチャチャっと溶接して作った感じ。
よく言えば味のある感じ、悪く言えば雑な感じでムラがある。
この緑色は塗装？
カエルのくせに雨が嫌なのか傘をさしている。

そんなカエルが大量に棚に立っていた。

最初に気になったのはその値段。なんと30円…。
30円のカエルが20？30個くらい？群れを成して置かれて、その奥には箱が数個あり、箱からカエルが覗いているのが見えた。
どうやら控えのカエルもまだまだいるようだった。

何の気なしに目の前にあった一匹を手に取って見てみると、やっぱり雑な作り。上あごの一部が曲がってる。
隣のカエルも手に取って見ると、もう顔が違う。

付いていたタグを見るとMade in China
まぁそうですよね。

（うーん、あまりの安さに気になったけど別にいらないよなぁ…でもどうせ30円だし…）

正直なところ、ゴミを30円で買うかってレベルで悩みながら、まぁじゃあ良いバランスのカエルがいたら買うかと思って棚のカエルの群れを観察した。

よく見ると全部違う。
下あごが出ていたり、逆にアヒル口のようだったり、立ち姿が前傾姿勢だったり逆だったり。

こいつは顔は良いけど前傾姿勢で今にも死にそうなカエルに見える
こいつだけ胴体細くないか？？？
こいつは色のムラが気に入らないな…

別に選ばなきゃわずかな差なのだけど、選ぶ気で見ると本当に全部別物に見える。

（こりゃベストなカエルもいないし、そもそも買っても用途ないし、いらないか…）

そう思ったところで、やっぱりどうしても最初に手に取った一匹が気になって仕方なかった。

実は見た中で一番各所が歪んでるのがコイツ。
上あごは片側がひん曲がってるし、下あごと上あごとの溶接部は右側と左側とで高さがあってないから口全体が歪んでる。
顔はほぼ口なので、つまりは顔全体が歪んでる。
顔が歪んでるので、その上に乗っている目も左右均等に配置されていない。
腕と胴体の溶接部も片方は雑過ぎて半分腕の針金が浮いている。
塗装ムラもあってよく見ると少し下地の茶色が見える。

これよりも隣のカエルの方がマシ…とは思ったものの別に隣のカエルも欲しいって程じゃない。
じゃあいらないじゃん。ってだけなのに、どうしてもコイツが気になって、うーん、どうすっかなぁ…とたかだか30円の置物に何をそんなに迷ってるんだと我ながら飽きれるくらいマジになっていた。
そもそもいらないのに…。

でもまぁ、考えて見ればこのカエルは中国で作られて遥々日本にやってきて、大量に売れ残ってこんなところで30円になっているわけで、その中でも歪んでる奴ってたぶん、そのまま売れ残るよな…。

と思ったところでハッと気が付いた。
これって海外製のハンドメイドの一点物なのかと。
この歪んだ顔のカエルも中国にいる誰かが一生懸命かテキトウにかはさておいて手作業で作った一点物だと思えば、歪んでて売れ残って廃棄はちょっと可哀想だなと。むしろ個性だと。

まぁ30円でここまで考えちゃったらそりゃ買いますわ。
ここまで来るともう、むしろこの歪んでるのに愛着あるし。
最初に手に取ったのも何かの運命だろうと。

しかしまぁ、何をそんなに気になっていたんだろうかというくらいこのカエルが本当に奇妙なくらい気になった。
もちろん、値段も後押ししていたんだろうけど。

カゴにカエルを入れて、でもこのカエルどうしようかなぁと考えた結果、あぁ、じゃあコイツをnoteのプロフィール画像にするか！これで買う必要性ができた！と決めたところでなんか色々スッキリした。

売れ残って価値が下がって投げ売りされてるカエルから、少しでも形の良い物を選ぼうとして、結局歪な奴は売れ残るってなんか人間もそんな気がして嫌だなぁと思ったのはあまりにもクサくて恥ずかしいので内緒にしたかったが、歪んだカエルにした最後の決め手だったのでまぁ最後に書いておくことにした。そもそも最初に手に取ったカエルに戻っただけだし、選ばなきゃ悩むこともなく同じものを買っただろうになんて馬鹿だったのだろうか。

ちなみに、カエルは部屋の植物が並ぶ棚の上に置いてある。
１匹30円…10匹買っても300円か…10匹並べたら…いっそのことあるだけ買ったって100匹はいない…写真的には三十三間堂の仏像のようにカエルを配置したらどうだろうか…と少し頭をよぎるのはカエルに呪われたんじゃないかと思う。