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1989~1992研究者のためのノート〈三〉(岡崎京子の研究)

1989~1992研究者のためのノート〈三〉

*アンアンとマガジンハウス*

○ 世間的には「pink」が出る一九八九年以降の仕事が岡崎先生の本領発揮とされてますよね。その直前の「ジオラマボーイ・パノラマガール」みたいなテイストが好きな人も結構いますけど。
● うん。やっぱり後から見てもブレイクしてる感じがあって、八九年が仕事量は最多。『Me-twin』で「くちびるから散弾銃」はまだ続いてるでしょ、そんで『Pee Wee』で新連載「ショコラ・エブリディ」、『anan』で新連載「岡崎京子の4コマ好奇心」、『NEWパンチザウルス』で新連載「pink」、『CUTiE』で「ROCK」連載中、『漫画アクション』短期連載で「ハイリスク」、『月刊カドカワ』で続いてるイラストやコラム仕事、『思想の科学』でコラム新連載「家族」、『季刊都市』でコラム新連載「死体派観光宣言」、『NAVI』『宝島』『TV Bros.』で定期イラスト仕事。これらをしながら別の雑誌の仕事を単発で受けてる感じ。
○ 聞いてるだけで胃が痛くなります。それで単行本は『ジオラマボーイ・パノラマガール』『好き好き大嫌い』『くちびるから散弾銃1』『pink』が出てると。
● 河出書房新社から『バージン』復刊もしてるしね。
○ ワーカホリック、もしくは根っからの退屈嫌いなんですね。『anan』の「岡崎京子の4コマ好奇心」っていうのはどういうのでしたっけ。
● 目次横に載ってた軽い内容の四コママンガの連載で、買い物とか読んだ本とか身の回りの話、近況が主な感じ。読み応えがあるってわけじゃないんだけど、「くちびるから散弾銃」や「女のケモノ道」が好きな人は好きだと思う。週刊で八二回も続いた。
○ 『anan』は八八年からたびたびコメントで登場してますね。
● 岡崎さんが象徴的に言及するのは同じマガジンハウスのファッション誌でも『Olive』の方なんだけどね。『Olive』の仕事は多くないけど。
○ 象徴的に、というと?
● 消費社会の象徴として。ファッション・ブランドとメディアが手を組んで消費を煽る経済システム。『退屈が大好き』のあとがきで〈ところで私は〝オリーブ〟とゆう雑誌が大好きなのですが、この本を見ていると「物欲は愛だ」と思えてくるから不思議です〉と書いたり。
○ でも岡崎先生は「消費」とか「物欲」って好きですよね。
● 欲望に身を任せる楽しさもそれの危うさもバリバリ自覚的で、自覚しつつ波にのっちゃう。八三年頃は『Olive』の影響で髪型を縦ロールにしてデカいリボンをつけてたらしい(笑)。でも批評的な視点は常に持ってたんだと思いますよ。〈打ち寄せる「快適」と「素敵」の情報の波。ウカウカしていると「たのしい事」や「オイシイ事」を食べのがしてしまっちゃうんじゃないかしら? 私だけ、が。/これが今の二十代前半のギャルちゃんたちの強迫神経症です〉(『月刊Asahi』創刊号/八九年六月号、朝日新聞社)とか、〈女性誌は常に、私たち読者に向けて「ステキなアナタをオーエンします。ファイト!!」とはげましながら「でも、今のアナタは本当にステキかしら?」とも同時に囁く〉(『朝日ジャーナル』九一年一〇月一一日号)とか、読んでてドキッとした。
○ マガジンハウスの雑誌には他にも結構出てますよね。情報誌の『Hanako』とか。
● 『Hanako』の関西版『Hanako West』にも登場してレポート・マンガを描いてたりするね。『Hanako』本誌では作詞家の竜真知子さんと対談してる時に〈ハナコ族。っていうのもよく聞くけど「ハナコ族って本当にあるんですかァ」って感じ。だって私のまわりで「私たちハナコ族です」って人、見たことない〉(『Hanako』一〇一号)と言ったりしてて、編集部がちゃんとそれ載せるとか、いい時代だなあと思う。
○ 『クリーク』ってどんな雑誌ですか。
● コスメと美容のハウツーと結婚の話題が多かった女性誌。アンケート企画に答えたり、映画とか本とかカルチャーページが後ろの方に載っていて、そこでインタビューを受けたりしてた。
○ あと『Tarzan』って健康とか運動とかの雑誌ですよね。それも載ってたんですか。
● うん、『Tarzan』『ガリバー』『BRUTUS』に載ってるのは、岡本仁さんっていう、のちに『relax』のリニューアルで話題を集めた編集者が渡り歩いた雑誌だからじゃないかね。岡本さんが関わってる時代の『Tarzan』は小西康陽さんがコラム連載してたりして、その文化欄は面白かったな。『ガリバー』はバブルを象徴するような海外旅行カルチャー誌で、毎号海外取材してその街の穴場ガイドブックを作るって感じの雑誌。岡崎さんも香港取材してレポート・マンガを描いてる。『BRUTUS』は今も出てる特集制のカルチャー誌で、コメントしたり特集に参加したり色々。
○ 『銀座3丁目から』って雑誌にも初めの頃にマンガを描いてるみたいです。
● それはマガハが九〇年から九三年まで出してた小説中心のPR誌。岡崎さんは休刊しそうな雑誌によく描いてる印象あるけど、創刊号にもよく起用される人なんだよね。

*中尊寺ゆつこ*

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26,650字

2001年以降に雑誌等に書いた記事を全部ここで読めるようにする予定の定額マガジン(インタビューは相手の許可が必要なので後回し)。あとnoteの有料記事はここに登録すれば単体で買わなくても全部読めます(※登録月以降のことです!登録前のは読めない)。『教科書には載らないニッポンのインターネットの歴史教科書』も全部ある。

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