見出し画像

グーグルを疑う方法(2015年4月『Quick Japan』119号)

グーグルと野村総研が二月末に「インターネットの日本経済への貢献に関する調査分析」という報告書を発表したけど読んだ人いるかな。二〇一三年度の日本のアプリ経済の市場規模は約八千二百億円とか、二〇一四年時点で推計五六万五千人分の雇用を生み出してるとか、ますます成長するインターネットは日本経済の発展に不可欠!マジ期待!という話が書いてある。読んだらさすがインターネット!と思う人がいるかもしれない。

でもちょっと考えればわかることだけど、そのお金がまるまる日本経済に上乗せされたとは書いてないし、我々の収入がそのぶん上がってるわけでもない。ということは、ちょっと前まで他のことに使ってたお金を、今はインターネットで使ってるだけだよね。計算機を買う代わりに計算機アプリを買ってるだけ、計算機を作ってた人たちが職を失う代わりに、計算機アプリを作ってる会社の雇用が増えてるだけだ。そう考えれば、別に日本経済に貢献してるわけではなくて、インターネットがインターネット業界にいる人達に貢献してるだけじゃないだろうか。ネットを通じたモノの売買が増えているからといって、それは時代の流れに応じた市場のスライドが起きたにすぎない。「インターネットによって失われた日本産業の調査分析」を調べてプラスマイナスの試算を知りたいところだ。ちなみにシマンテックが二〇一三年に発表したサイバー犯罪による日本の被害額は十億ドル、約一千億円である。

それにしても、グーグルはAndroid向けのアプリのデジタルコンテンツ市場を用意している側だからこういう調査に協力するのだろうけども、まるで自分たちがインターネットであり、日本経済に貢献してるとでも言いたげな印象操作で、好みじゃない。当然だがグーグルはインターネット上のサービスの一つにすぎない。二〇一一年にグーグル検索はインターネット全体の〇・〇四%しかカバーできてないと話題になったが、検索で辿りつけない「ディープ・ウェブ」のほうが世界はずっと広いんだ。グーグルを使ってる限り、インターネットの九九%にアクセスできないんだよ、わかってる?

二〇一四年、ユニクロを経営するファーストリテイリング社がグローバルクリエイティブ統括に迎えた、世界的なクリエイターのジョン・ジェイ氏が「グーグルで答えが見つけられるからといって、それだけに頼っている人は、世界を理解しているとはいえない」と『日経ビジネス』オンラインで語っていたけど、その通りだと思う。グーグル検索があれば知識を頭に入れる必要はないというなら、グーグルさえあれば別にあなたも必要ないという意味だ。グーグルしか使ってない人は、グーグルの検索結果を読み上げるだけのロボットにすぎない。グーグルのこんな発表をうのみにしてるうちはあなたは必要ない。さあ、今すぐ「グーグルを疑う方法」を検索しよう。答えが出てくるかは知らないけどね。

<!--以下2020年コメント-->

ここから先は

449字
2001年以降に雑誌等に書いた記事を全部ここで読めるようにする予定の定額マガジン(インタビューは相手の許可が必要なので後回し)。あとnoteの有料記事はここに登録すれば単体で買わなくても全部読めます(※登録月以降のことです!登録前のは読めない)。『教科書には載らないニッポンのインターネットの歴史教科書』も全部ある。

2001年以降に雑誌等に書いた記事を全部ここで読めるようにする予定です(インタビューは相手の許可が必要なので後回し)。テキストを発掘次第追…

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?