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SV MONTHLY DISC-PORT(『STUDIO VOICE』2009年1月号)

引き続き。このコーナーを担当する上で意識していたのは、「本当にいいものしかちゃんと誉めない」ことです。大体はなんだか誉めてるのか誉めてないのかわからないようなトーンにしていました。たとえばこの回だと麓健一『美化』は本当に誉めてます。

SV MONTHLY DISC-PORT

美化

麓健一『美化』
都内で活動し、2005年頃からリリースしていたCD-R作品(にせんねんもんだいが運営する美人レーベルからも2枚リリース)が軒並み高い評価を受けていた、ニック・ドレイクとも比較される男性シンガー・ソングライターの初のフル・アルバム。例えば90年代半ば以降の日本の「フォーキー」や「うたもの」というタームは、街の風景が浮かび上がる歌詞やアコースティックな音色、メロディアスな部分ばかりを強調しがちだった。これはドラッグが禁止されアシッド・フォークを咀嚼しづらい日本特有の事情もあるだろう。だがギター、キーボード、リズムボックス、サンプリングを駆使し、派手ではないが幻想的な空気をまとう麓健一の音楽には、生活感がおおよそ欠けているにも関わらず、内向的かつ神聖なものへの畏れを滲ませる言葉や、囁くような歌声や、各楽器の深遠な響きによって、切迫したリアリティがある。ノン・ドラッグのサイケデリック・サウンドスケープ。

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2001年以降に雑誌等に書いた記事を全部ここで読めるようにする予定の定額マガジン(インタビューは相手の許可が必要なので後回し)。あとnoteの有料記事はここに登録すれば単体で買わなくても全部読めます(※登録月以降のことです!登録前のは読めない)。『教科書には載らないニッポンのインターネットの歴史教科書』も全部ある。

2001年以降に雑誌等に書いた記事を全部ここで読めるようにする予定です(インタビューは相手の許可が必要なので後回し)。テキストを発掘次第追…

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