M2-1 オタク×アートの約二十年(2010年12月『モダニズムのナード・コア』)
オタク的モチーフ、オタク的想像力を自身の作品に取り込んできたアーティストは少なくない。しかし大抵の場合、作者がオタクであるわけではない。子供の頃に体験したものを自作に取り入れるのが第一。その奇想/奇形/奇抜さをアートに持ちこむことで化学反応を起こさせようとするのが第二。本当にオタクが当然のように持ちこむのが第三。どれが正しいというわけではないが、第一から第三へ流れてきているのが昨今の傾向である。ここでは既に歴史化できるほどの潮流を成してきたオタク×アートの関係性について、ふり返る意味をこめて解説を加えていく。
一九九〇年代 ● その一
八〇年代後半に流行したシミュレーショニズムの日本版として、日本では『美術手帖』一九九二年三月号が「ネオ・ポップ」と呼んだ動向がある。これはキャンベル缶やマンガのコマなど日常品をアートにした六〇年代ポップ・アートのリヴァイヴァルとして名づけられた。一九六〇年前後生まれの日本の若いアーティストにとって、日常に溢れるオタク的な題材をアートに取り入れることは自然な選択だった、というわけである(本当かはここでは考慮しない)。
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