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ばるぼらさんの全記事アーカイヴ

2001年以降に雑誌等に書いた記事を全部ここで読めるようにする予定です(インタビューは相手の許可が必要なので後回し)。テキストを発掘次第追加します。あとnoteの有料記事もここに…
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2020年5月の記事一覧

エレクトリック・オカルティズムの時代(『STUDIO VOICE』2008年12月号)

70年代末から80年代にかけて『タオ自然学』をはじめとする多くの精神世界/ニューエイジ関連書籍の翻訳が出版され、数年遅れのシュタイナーやグルジェフのブームが到来した頃、LSDのアイコンことティモシー・リアリーは自作ソフト「マインド・ミラー」を片手にコンピュータにカウンター・カルチャーの最終形態を見出した。元ヒッピーのジョブスとウォズニアックがパーソナル・コンピュータMacintoshを発表し、60年代末に出た巨大カタログ『Whole Earth Catalog』の編集長スチュ

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アンビエントまんが(『CD Journal』2008年11月号)

ブライアン・イーノが『ミュージック・フォー・エアポーツ』で定義したところによれば、アンビエント・ミュージックとは「雰囲気的特異性を強調」し、「曖昧さ・不確定さを維持」し、「穏やかさ・思考する余地への導き」を意図するものだった。これにそのまま当てはまるマンガが、長らく一定の支持を得ていることに気付いたのは、わりと最近のことだ。バトルに勝つとか恋愛成就とか明確な一つのゴールを持たない物語。始まりと終りの輪郭が曖昧なままページに収められたシーン。そこにはハラハラ・ドキドキ・ワクワク

漫画レビュー:高野雀『低反発リビドー』(2015年6月『Quick Japan』120号)

二〇一五年一月に初の単行本『さよならガールフレンド』を刊行、その丁寧な会話劇と心理描写で大きな話題を集めている漫画家・高野雀の、半年待たずに出た二冊目が『低反発リビドー』である。

漫画レビュー: 高野雀『さよならガールフレンド』(2015年2月『Quick Japan』118号)

自分の斜め後ろから覗いてる監視カメラで自分ごと見えているみたいに客観視してしまう。このマンガはそんな人たちの物語であり、つまりそんなあなたの物語でもある。 日本最大の自主制作漫画誌即売会「コミティア」に二〇〇九年から参加、地道に人気を獲得していったマンガ家・高野雀は、二〇一四年に『フィールヤング』で商業誌デビュー。そこで発表したいくつかの短編と、コミティア読書会投票で第一位を獲得した表題作を含む、満を持しての初単行本が本書だ。 舞台は地方から都市まで、年齢層は学生からOL

漫画レビュー:うえむら『うえむら画集 おやすみまでのいくつかの瞬間』(2014年8月『Quick Japan』115号)

うえむらの初画集『おやすみまでのいくつかの瞬間』は初めて見たのにまるで二度目のような気持ちになるだろう。それは二つの意味でそうだ。一つはキャラクターの描線が古風でどこか懐かしく感じられること、もう一つはネットのどこかでイラストを見たかもしれないこと。そう、うえむらはネットで爆発的に広まったイラストレーター/マンガ家の一人なのだ。

漫画レビュー:panpanya『THE PERFECT SUNDAY』(2013年4月『Quick Japan』107号)

喜怒哀楽のうち、真ん中の「怒」と「哀」をマンガで表現する手段は、長い時間をかけて発達し効率化が進んできた。一番最後の「楽」がギャグのことなら、それも日々開発が続けられてきた。でも一番最初の「喜」の表現については、いまいち進化のスピードが鈍かった気がする。幸せなだけじゃお話にならないからとか、苦難を乗り越えてこそのドラマだとか、理由はともかくとして、思いもよらなかったこんな喜び、気づかなかったあんな喜びというバリエーションがさほど追求されてこなかった。このことに気づいた「空気系

漫画レビュー:hana to  yume『フワフワ・アチチ・ケーキ・大爆発』(2009年2月『Quick Japan』82号)

幾重にも練られ積み上げられた設定と伏線が回収され一つの線となり大団円を迎える。これが「物語」の定番の面白さではあるが、しかしマンガの面白さとはそれとイコールではない。たとえば杉浦茂を読む時のワクワク・ドキドキがそこに由来しないことは明らかだ。つまりマンガの面白さには物語以外の「発想」という軸があり、吉田華子の『フワフワ・アチチ・ケーキ・大爆発』はそちら側のマンガである。この作品にはキャラクターはいるが物語がない。もちろん女の子と動物が旅をする上での「展開」はあるが、発想と連想

パチパチ休刊(2013年6月『Quick Japan』108号)

『パチパチ』が休刊するなんて考えたこともなかった。今年の一〇月号で定期刊行を停止して、発行元のエムオン・エンタテインメントが運営する音楽チャンネル「MUSIC ON! TV(エムオン!)」に統合されるそうだ。他に『ワッツイン』も来年一月号で終わるという。CD不況と出版不況が力をあわせて最後の大ボスを倒すのを見てる気分だ。「大げさな。別に音楽誌が一つなくなるだけじゃん」という人もいるだろう。でも少しでもこの気分を言葉に残しておきたい。

漫画レビュー:ヤマザキマリ『ルミとマヤとその周辺』(2008年12月『Quick Japan』81号)

中学二年でヨーロッパを一人旅した経験を持つ、現在ポルトガル在住のヤマザキマリは、物語によって絵柄を変える不思議なマンガ家。自身の体験もエピソードに多く活かされているという『ルミとマヤとその周辺』は、川遊び・自慢の筆箱・ヨーヨーなどが随所に登場する、昭和ノスタルジーものの一つとして捉えられている作品である。主人公の姉妹は母子家庭で、音楽家の母親は仕事が忙しく家を空けがち。そんな母を理解し、普段は気にするそぶりを見せない元気な二人を中心とした北国の人間模様が描かれる。登場する子供

文学フリマとコミティアに行ってきた。(2008年12月『Quick Japan』81号)

「同人誌」というと昨今は有名マンガの二次創作やエロパロを連想しがちだが、自分のキャラと物語で勝負してる人は沢山いるし、そもそもマンガ以外にも詩・小説・評論・イラストなど様々な内容があり、あまり固定概念で理解したつもりになっても機会損失にしかならない。ここではコミック・マーケットほどの規模と知名度はないが、コミケとは違った独自の方向性を打ち出している同人誌/ミニコミの即売会として、文学フリマとコミティアの二つの名前を挙げよう。文フリは二〇〇二年から毎年行なわれている「自分が文学

マイスペースとは何ぞや(2008年8月『Quick Japan』78号)

マイスペースはアメリカで生まれたSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)。SNSというのは例えばミクシィやモバゲータウンのような、会員制のコミュニティ・サイトのこと。その中でもマイスペースは現在2億人以上のユーザを抱える世界最大のSNSで(世界中のサイトで6番目にアクセスが多い!)、去年春に正式オープンしたマイスペース日本語版も急成長中だ。 なぜそんなに人気を獲得できたのか? 一番の理由に「音楽との融合」があげられる。マイスペースは最初に「アーティスト」として登録す

CDショップで気になるイラストレーター、HTCって何者?(2008年4月『Quick Japan』77号)

ジャケ買いなんてもう何年もしてなかったのに、まんまと買わされた!という経験を久しぶりにしたのが〇六年九月に出たWOODMANの『Warrior Angel』。ゴリゴリのエレクトロで音も最高だったけど、このムチムチ&キュートなイラストの訴求力も強烈だ。それ以来なんとなく気にしていたら、〇七年末に座久拓郎のアルバムやgassyoh『semi ep.』なんかで再び見かけるようになって、いよいよ一体何者なのか気になりはじめインタビュー決行。そしたらライブ会場でよく見かける人だった。ぎ

紹介記事:初音ミク、日常2巻(2007年12月『Quick Japan』75号)

初音ミク

音楽誌の最前線?(2006年4月『Quick Japan』65号)

音楽誌は90年代後半に一度到達点とでも言うべき高みに達していた。90年代のDJ文化/渋谷系的価値観を体現していた、橋本徹時代の『bounce』、増井修以前の『WHAT's IN? ES』、ドラムンベース特集以降の『MARQUEE』の三誌がそれで、「新譜/旧譜」「メジャー/マイナー」「邦/洋」にこだわらない驚異的なバランス感覚が魅力だった。これに次ぐのが97年に立て続けに創刊されたポストロック『AFTER HOURS』、ギターポップ『COOKIE SCENE』、田中宗一郎『SN