ウェルビーイングとギフトエコノミー

ギフトは無償であり、かつ見返りを求めない
というギフトエコノミーの考えと
ウェルビーイング(自分が「良い」と思える状態)は
とても密接に関わっていると思う。
その参考になったのが
石川善樹氏と吉田尚記氏のPodcast番組
「ウェルビーイング〜旅する博士と落語するアナウンサー〜」の
内容を大幅に加筆した書籍
「むかしむかし あるところにウェルビーイングがありました
日本文化から読み解く幸せのカタチ」
である。

「なんもしない人」として活動する
森本祥司さんという方を知っているだろうか。
彼は2018年から
「レンタル(自分の存在と時間を give する)」を始めた。

幼少期から協調性のなさや飽きやすい性分で
部活動や就労などの社会的に当たり前とされることに
順応できないことへの葛藤があった。
社会生活では「みんな一斉に同じことを」求められる場面が多くあるが
自分なりの哲学やタイミングがあった。
それを人に押し付けることはしたくないと考えているうちに
「なんもしていない」と評価されしまうことを何度も経験した。

定職にも就かず、苦しい日々の中2017年の仮想通貨バブルと
プロ奢ラレヤーさんとの出会い」が転機になり、
お金は生きる目的でもなく本質的なものでもない
という考えに至り、
「プロ奢ラレヤーさんの現物給付で生きていく考え方を真似したい」
と思っていたところ
ある日突然閃いたのが「レンタルなんもしない人」だった。

資本主義社会の日本では
「何かする(動く、do)こと」で
お互いを無意識に評価している傾向があるように思う。
「ただそこにいること(存在、being)」では意義がない。
と考えてしまうから
「働かざるもの食うべからず」という言葉があるのかもしれない。

「なんもしない」は、ただいるだけにあらず。
「なんもしない」をしている( doing )。
「なんもしないそのままの状態 ( being do nothing )」が
人の役に立つと実証し、大きな反響を呼んだ。
彼は昔からの「なんもしない自分」のままでいい。
なんもしない自分がなんも変わる必要なく存在を否定されない。
それはまさしくwell being であると言える。

彼は「なんもしない人」を本業としており
「なんもしないこと」で暮らしている。
社会が誰にも平等に求める支払いを賄うため
依頼人に交通費や食費は負担してもらうことで
自分をレンタルをしている。
2020年からは1万円の代金と有料化し始めたが、需要は減らない。

森本さんは贈与経済を実践しよう!と
自分のレンタルを始めたのではないので
本来の「ギフトエコノミー」とは逸脱する部分もあるかもしれない。
けれど自分がこれからなにをgive するかを考える参考になると思う。
自分がこれまでに受けたgive を振り返るのにも
大いに役に立つのではないだろうか。

森本祥司さんについて紹介するにあたり
参考にしたのはこちらの記事
私が「レンタルなんもしない人」を知ったのは
放送1年で打ち切りになってしまった
「NHKラジオ こやぶとみちょぱのとりしらベイビー!」。
NHKサイト内での番組紹介ページはもう削除されていたので
リンクはなし。
毎回印象的なゲストのインタビューが聴ける優良番組だった。

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