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舞台『アドルフに告ぐ』──2023年10月29日②

東京芸術劇場にて公演されている、舞台『アドルフに告ぐ』を見てきました。

ずっと行くか迷っていたんですが、急遽前日にチケット取って行ってきた。基本的に心配性で準備しいなので、普段こんな突発的な行動を取ることはなくてドキドキしました。いつもなら原作を読み返してから行くんですが、直前まで病院で実習してたので、そんな時間もなく、舞台の前情報もほぼないまま見ることになってしまった。



以下、箇条書きの感想のような何かです。
(※舞台には全く詳しくないです)

舞台『アドルフに告ぐ』Mutチーム

・セットが鋭角を意識して作られていて、作品のピリついた雰囲気を感じやすくなっていた気がする。スクリーンが逆三角形のようになっていて、ステージ上に三角形の丘のようなものがあったんだけど、丘は本当にある立体感なもので、奥行や空間の広さを作っていたと思う。(角張った丘なので、そこに足を引っ掛けて転けやしないかハラハラした、皆さん運動神経抜群なので杞憂でした)

・峠の感電する演技が凄い。体を震わせているんだけど、随意的にああいう動きってできるんだな。頬が震えていた。

・幼少期カウフマンとカミルが2人でいるところ、全部微笑ましくてかわいらしかったな。2人でお母さんが作ったケーキを食べて笑い合うところとか。

・峠役の方の声の張り方、耳に心地いい感じの大声で良かった。峠、たまに客席に話しかけてくるし全体的にコミックリリーフ的な印象を受けた。

・真面目な雰囲気でずっと進んでいくのかと思っていたけど、意外とギャグシーンが多かったな。峠がドイツ軍に追われるシーンとか、迫力あったけどめちゃくちゃギャグだったし。あと、由季江と初めて会った際に1円を借りようとするシーンで「1円おかりできませんか」「えぇえぇえぇ〜?」ってドン引き困惑してる由季江とか。「おかしな方ね」「自分でもそう思ってますよ」とか、他にも色々。

・あ!そうだよ!ヒットラー・ユーゲントの生徒にパイナップルみたいなモヒカンみたいな特徴的な髪型のやついたよな!あいつギャグすぎる。

・行進のシーンって好きなんですよね。3月に同じく原作手塚治虫の『人間ども集まれ!』のミュージカルを見てきたんですが、その時も行進のシーンが大好きだった。一体感が凄くて、揃ってるものってなんであぁ感動するのか。

・アドルフ・ヒットラーの初登場シーンが多分1番照明焚かれていて、凄く眩しかった印象がある。

・ヒットラーの役者さん凄い。ヒットラーだった。足の屈め方、動き、発声方法、表情、全てが絶妙だった。目の彫りがハッキリしてて凄く外国的な顔立ちに見えたんだけど、役者さんは日本人だろうか。だとしたら表情で作ってるってことだよな、凄い。

・カウフマンとヒットラーが見つめ合うシーン、なんかこっちまで緊張した。

・戦いのシーンが良かった。カウフマンとヒットラー・ユーゲントの生徒フリッツが喧嘩するシーンとか。緊迫感があって。

・カミルの父親がパスポートを無くして絶望するシーンの表情、絶妙。

・エリザの役者さんが凄く凄く美しかった。全員男性が演じているという情報は得ていたのに、女性が演じているのかと勘違いするくらいには、女性らしく見えた。ワインレッドの衣装もハーフアップも髪飾りも全部良かったな。声も中性的な感じで、凛としてて素敵だった。私は芯のある女性キャラが好きなので、かなり好きです。

・エリザに出会い、カウフマンの心がエリザに持っていかれているということを、カウフマンの後ろで暗闇の中エリザが黙って立っているということで表現していて良かった。

・カウフマンがカミルの父親を撃つシーン、とどめを刺した瞬間に舞台が真っ赤になる演出。好き!私は!こういうのが!その後、初めて人を殺したことに絶望し叫ぶシーンも迫力あって良かったですね。

・エリザが亡命する際にカウフマンが手の甲にキスするけど、エリザは何も言わずに去って行ってしまうシーン。カウフマンから顔を背ける時のエリザの表情、良かった。

・どんどんナチスに染まっていくアドルフ・カウフマン。原作を読んでいる時から見ていて痛々しかったが、生身の人間がやると更に変化が強調される気がする。歓喜や絶望の表情が上手い。

・カウフマン本当に幼少期と大人で別人に見えますね。発声の仕方がぜんっぜん違う。表情も堅くなっていて、幼少期のかわいらしい印象とはまるで別物でした。心無しか身長も伸びたように見える。

・ランプさん、名乗る前からランプさんだって分かった。真っ赤なマントのようなマフラー?に縁の太い眼鏡。

・国の者が、由季江が開いたドイツ料理のレストラン『ズッペ』のメニュー表見るくだり、ギャグすぎる。確か結構長い間、口を無言でパクパクさせる時間があった気がするんだけど、笑っていいとこなのか!?これ!?って思った。その後の、メニュー表の上下を間違えるくだりは分かりやすくて安心して笑えた。

・2人のアドルフの再会シーン良かったですね〜(後を知ってるから切なくはなるけど)。2人がお互いを持ち上げては回転して、持ち上げては回転して。凄まじき体力…

・カウフマン、正直本当にクソ野郎だなと思ってはいるんだけど、どうしても同情してしまう。抵抗したのに無理やりドイツに連れていかれ、ドイツに染まり、親友の父親を殺し、人を追って日本に帰ればそいつは大好きな母親と結婚して父親になってるし、好きな女は親友に取られるし、ドイツのために生きてたのに最後は全てが無駄になる。そりゃ、自分をピエロだと道化だと言って発狂したくもなるよ。

・舞台だと、かなり濁されていたけどカウフマンがエリザをレ○プしたことに対して、カミルがブチギレるシーン。カミルがナイフ持ってたことが凄い頭に残ってて、確かナイフが舞台に吹っ飛ぶんだけど、その時の飛び方が良かった気がする。ここで、カミルが投げられて回転しながら地面に体を打ち付けるんだけど、役者さん凄いな〜って純粋に感動した。

・小城先生と峠とカミルが拷問されてるシーンで、先生の拷問に使ってたタバコ、本物…?吸った後に煙が出てたし、先端が赤く光ってたような気がする。

・カミルの台詞「あの頃のお前はどこに行ったんや」
この台詞、この台詞に尽きる。原作にこの台詞ってあったっけ。今度確認しよう。

・空襲が落ちた時も照明が真っ赤になっていた。赤が与える印象って他の色に比べて強烈だなと思う。

・ヒットラーが自殺を図ろうとして、ランプに撃たれるシーン。頭を撃たれて倒れたヒットラーが重力に従って丘からズルズルと下にずり落ちていて、本当に死んでるみたいに見えた。

・カウフマンとカミルがお互いを撃ち合うラストシーン。銃声と同時に画面が真っ暗になって全く何も見えない演出で、「す、すご」って声を出しそうになった。そこは赤じゃないんですね…

・峠が語りながら、幼少期の1番初めのシーン(虐められてるカウフマンをカミルが助けるところ)がもう1度演じられる。段々とスロー再生みたいに役者の動きがゆっくりになって行って、ギャグっぽい動きが多いのに音楽と相まってしんみりとする。みんな死んだんだもんな。

・最後は、峠と、寄り添って座り笑い合う幼少期カウフマンとカミルで暗転。

トークショーがあったので聞いてきました。
・金髪に染めたけどウィッグだったとか、舞台のために髪の毛切って染めたのに全部帽子被ってる役だったとか、皆さん髪型や髪色に色々不満があるようでおもしろかったですね。金髪にしてから満員電車で押しつぶされないようになったって話をされていて、いいな〜と思いました。私も金髪にしようかな。
・元々、2時間30分くらいの尺があったらしく削ったという話をされていたんだけど、あの壮大な原作を2時間15分でまとめるのって本当に本当に大変だろうな。
・皆さん兼役でやられていて、チームごとに役が入れ替わったりしているのによく間違えないな〜って思った。頭こんがらがりそうなのに…
・峠やカミル役の役者さんは、そもそも役が明るめなので、トークショーでもあまり印象変わりませんでしたが、他の方々は結構印象違っておもしろかった。びっくりしたのが、カミルの役者さん40代なんですか!?20代くらいかと思ってみていた。動きかな、凄い。

2時間30分くらい座るのシンプルに体がキツかった〜〜〜!!!そもそも東京まで来る電車で座れず立っていて、BJ展で5時間くらい立って見てて、その後も中目黒歩いて観光してからの、17:30くらいに劇場ついてやっと座れるって感じだったので、疲労が凄い。今これは帰りの電車で立ちながら書いてます。頼むから座らせてくれ。

最後に『アドルフに告ぐ』原作を読んだ時に私が書いていた感想を載せて終わりにします。↓

ユダヤ人を嫌いになりたくないからドイツに帰りたくないと言っていたアドルフ・カウフマンがヒットラー・ユーゲントに入ってユダヤ人が悪だと思うようになっただとか、神戸に暮らしていたアドルフ・カミルは自分のことを日本人だと思っているだとか、私は血より環境の方がよっぽど重要だと思っていたし、カミルが神戸でカウフマンに言った「アホらしいと思わんか?民族や人種に偏見を持つなんて…」って台詞に共感したけど、結局カミルもユダヤ人として自分の国を作るために、アラブ人を大量虐殺する。やっぱり血には抗えないのかと思うと同時に、さっきの言葉も、神戸でのアドルフ・カミルにとっては正義でもイスラエル軍24師団382部隊所属アドルフ・カミル中尉にとっては、もう正義ではないのかもしれないと思うと、正義とはなんなのか分からなくなる。終盤でカウフマンが言う「あちこちの国で正義というやつにつきあってそしてなにもかも失った…肉親も…友情もおれ自身まで…」って台詞を聞いて、今まで正義=夢や希望から生まれるものみたいなイメージがあったけど、憎しみや憎悪のようなもっと重く暗いものから生まれてくるのかもしれないと思った。

ありがとうございました…


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