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出所者の就労を支援 北海道・弘和通商

社会復帰・生活再建の手助けに

 
 ㈱弘和通商(長谷川朋弘社長、北海道札幌市)では、日本財団主催の「職(しょく)親(しん)プロジェクト」に参加し、出所者の雇用を進めている。出所者の再犯者率は約49%。自力更生を支援し、再犯防止に努めることが犯罪被害を減らす鍵の一つとなる。


 職親プロジェクトは、少年院出院者や刑務所出所者に就労と住居、教育、 仲間作りの機会を提供することで、更生と社会復帰を支援し、 再犯率低下の実現を目指す。
長谷川社長は、同じく職親プロジェクトに参加する北海道帯広市の軽貨物運送業㈱ドリームジャパンの長原和宣社長から紹介を受け、一昨年からこの出所者就労支援活動に参加している。
 長谷川社長は出所者の雇用について、「一度罪を犯して収監された方でも、そうでない一般の方でも、面接をする時は同じ。どんな高学歴で好人物のようでも、うちの会社に合わないなという人は採用しない。
 刑務所に入ったからといって本当の意味で悪人という人はいない。非常に真面目で実直な人もいる。社会復帰してやり直したいという人の手助けになれば」と話す。
同社では、現在、元受刑者の社員が3人在籍し、会社の立派な戦力として働いている。社内は当然のことお客さんにも事前に元受刑者のことについて全てを話して理解してもらっている。どんな罪を犯して収監されたのかということを包み隠さず伝えている。
 納品先や取引先も、事情を知った上で温かく見守り育ててくれる。そういった周囲の接し方に触れて、当人もさらに真面目に自分の人生を建て直そうと頑張る、という好循環が生まれているという。


 同社では服役中の受刑者に人間学を学ぶ月刊誌「致知」を送り、感想文を書いてもらい、長谷川社長がそれを読み人間性を判断している。
職親プロジェクトでは、仮釈放後に6か月間教育支援を行う保護施設に入所させる。基礎知識の習得から道徳・倫理、社会規範などの心の教育及び実社会における生活指導を行い、社会・組織で働くためのカリキュラムを学ぶ。
同社では、高齢の整備士の後継を募集していたが、なかなか応募が無かった。そんな時に、運送会社で整備士として働きたいという元受刑者から応募があり、2023年5月に整備士の三浦貴志さんを採用した。
長谷川社長は、「すごい技術と知識と資格を持っている人材の獲得に成功した。ベストマッチだった」と話す。
同社では、今年秋までにドライバー職で3人の採用が決まっている。


 長谷川社長は、「今どの業界も人手不足の状況。現役世代の男性の働き手だけに絞ればパイの奪い合いになる。しかし、その採用の年齢の枠を広げるだけでもう少し人は確保出来るし、また、女性が働きやすい環境を整えればさらに倍の人材を雇用できる。
出所者の雇用はそれと同じなんです。そうやって門戸を広げることによって、彼らの自力更生につながり、社会が良くなり、企業にとっての人手不足の問題も解消できるのです」と話す。(5月6日号)

【写真】長谷川社長

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