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一枝

夕方。おつかいの帰りに空を見上げると、一羽のサギが小枝くわえて海の方向に飛んでいる。こころなし嬉しそうな、してやったり、の風情。海まで歩いて15分ぐらいの場所です。

サギはこのぐらいの時期から、海辺の防砂林の松に営巣して子を育てます。注意して見上げれば松の木のあちらこちらに大きな巣ができていて、そのうち子サギの声が聞こえるようになるでしょう。

いま私の頭の上を渡っているサギはおそらく巣の建材を運んでいる。
でも、彼女(?)がくわえている小枝はそれこそどこにでもありそうな小枝です。海辺に行けばいくらでも見つかりそうです。あの小枝のいったい何が彼女の金色の目に留まり、多少の重さでも大きな負荷となる飛行において、こんな距離をわざわざ運ぶ必要があるのでしょうか。

私にはわかりえない何か特別な美点があるのかもしれない。
一本の小枝を探すのは、私が想像する以上に難しいものなのかもしれない。

それでも、私から見るとただの一枝。

何かを作るときの、はた目にはよくわからないこだわり。
これじゃないと、だめなの、という強い思い。
見習いたいなと思いながら、買い物袋を左肩から右肩にかけなおします。

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