『#2000年以降の邦ロックベストソング100』みなさんはどう見ました?

(9月28日、追記しました。邦ロックについての記述で間違いがありました。申し訳ありません)
(また多く誤解されてますが…「このバンドが入っていないなんておかしい!」ということを訴えたいわけではなく、僕が言いたいのは「名曲」「好きな曲」「人気曲」の違い、ランキングをつける本当の意味、「邦ロック」という単語の曖昧さ、の3点を語りたかったわけであるので最後まで読んで。読解力)

音楽好きのX廃(ツイ廃って今どう言えばいいの?)の間でにわかに話題になってた『2000年以降の邦ロックベストソング100』
@fulu_grooveさんという方がXで公募した意見をまとめあげて作ったそう。
(募集要項や条件は以下)

結果として250人ほどから表が集まったとのこと。
これをまとめる労力がすごいし、きっとこれは現代の邦楽を読み解く上でもわかりやすい指標になるんではなかろうか。
「ふーん良かったね」で終わってもそれでいいのだが、やっぱりこのランキングが持つ意味を考えることで、音楽が身近にない層にどう届き、どう届かせたいのか明確になるし。俺は興味がある。
そう思ったので分析してみようではないか!立ち上がれ音楽オタク!
(前半はマジで私の好みが反映された感想でしかないので、ふーんくらいで見てください)


というわけで結果です

(有志の方がSpotifyプレイリストも作ってくれてました)

トップ10を抽出して挙げてみるとこちら

1.若者のすべて-フジファブリック
2.ばらの花-くるり
3.天体観測-BUMP OF CHICKEN
4.ロックンロールは鳴り止まないっ-神聖かまってちゃん
5.空洞です-ゆらゆら帝国
6.深夜高速-フラワーカンパニーズ
7. BABY BABY-銀杏BOYZ
8.NUM-AMI-DABUTZ-NUMBER GIRL
9.群青日和-東京事変
10.YUMEGIWA LAST BOY-スーパーカー

おお〜「若者のすべて」が1位になったか。「ばらの花」「天体観測」はそりゃそうだよな〜。4位にかまってちゃんか…5位に「空洞です」!?
こんなこと言ってて尽きないのだが…

とりあえず100位まで目を通して、3つの感想に分けてみた。
(ただしこれはあくまで私の好みも存分に含まれた個人的な感想である)

「低すぎでは?or入ってないなんて…」

GRAPEVINE(光についてもないのか…)
eastern youth(このラインナップなら踵鳴るは入りそうなのに)
bloodthirsty butchers(easternが入らないならここもなのか?)
POLYSICS(ここらへんの年代はスルーされがち?ナンバガはいるのに) 
アジカン(リライト、遥か彼方がTOP10にいない…)
ラッド(初登場が35位とは)
椎名林檎(バンド限定なのかな?って思ったら89位に罪と罰がある、なら丸サ、本能はもっと上では…)
米津玄師(1曲もない!?こんな天才、後にも先にもいないぞ)
星野源(ソロだしロックではない、からかなあ…?”邦ロック”には入りそうな気もする)
けいおん!(ブームを起こしたという意味では確実にデカい存在)
9mm(オイ!)
凛として時雨(オイオイ!9mmと同じくムーブメントの立役者だろ!)
ART-SCHOOL(オルタナ・ネガティブ層ならフォロワー絶対多いはず)
ストレイテナー(アジカン・エルレがいるのにテナーがいない現実…)
KANA-BOON(確かにオドループほど伸びてはないけど…)
GOING UNDER GROUND(これは俺が好き、なだけ、か…?)
THEE MICHELLE GUN ELEPHANT(2000年代以降ではあるはずじゃん)
[Alexandros](現在ゴリゴリ前線張っててもか…)
クリープハイプ(上記に同じく)

いやこれはキリがないな…もちろんまだまだある
好みで言ったら「THE NOVEMBERSは!?!?!」「 cinema staffは!?!?」と言いたくなるもんだが、そこはグッと我慢。
人気投票で行われたにしては、いわゆる人気バンド・人気曲がランクインされづらく、かと言って、邦ロックの文脈でターニングポイントになっている曲のようなものも避けられており、ちょっと中途半端な印象がある。

例えば…
「音楽オタク層の人気」に向けられているならbloodthirsty butchersあたりは外せなさそうな気はするけど、そういうわけでもない。
「文化的ターニングポイントな名曲」で考えるならアジカンのリライトやミッシェルはもうちょい上でもいい気がする…あと"残響系"とか…
現在の「ロックフェス層の人気」で考えるなら[Alexandros]、フォーリミみたいなバンドもない…
ギンギンに今、最先端の音楽をやっている米津玄師や星野源、CHAIとかそこらへんもいない。
そんな感じ。

ちなみに応募の詳細には
「あなたが邦ロックと言われて思い浮かぶ名曲を教えてください!」
となっている。
「好きな曲」を、ではなく「名曲」を、ではあるので、もうちょっと、後に影響を多く与えたような文化的に意味のあった曲が入ってもいいかな、と個人的には思うが…
「名曲」、「人気な曲」、「私の好きな曲」はすべて似たようであって持つ意味は違ってくる。そこをはっきりすべきだったかなと思う。

もちろん、すべての音楽を聞く層にアプローチするなんて不可能だし、fulu_grooveさんが手の届く範囲でしているのだから偏りが起こるのはしょうがないだろう。
あくまで私の感想である。

「そんな高いランクインにいく!?」

こちらに関しては1曲ずつ印象を述べていこう。もちろん音楽的にそぐわないという意味ではなく、「そんな位置になるなんて…意外だ…」という感想である。

●5、空洞です-ゆらゆら帝国
はじめ、このランキングを見たときは「現在の」「人気投票で」ランクインしたやつだと思ったのでもっと現在もキャッチーとされているものが上位にくると思ってた。あんま今の子ウケはせんよね。56位の「無い!」にもそう。渋くね?「ラメのパンタロン」とかではないんだ。
●8、NUM-AMI-DABUTZ-NUMBER GIRL
正直自分も南無阿弥陀仏が一番好きなので嬉しい。が、絶対「透明少女」に負けると思ってた。
●12、1984-andymori
しぶっ、andymoriは1stアルバムからが一番始めに入ると思ってたし、FOLLOW MEのような疾走感あるものが先に選ばれると思ってた。
●14、エイリアンズ-キリンジ
キリンジは正直あんま聞いてないんだけど"邦ロック"でいいんだ?
●22、STORYWRITER-スーパーカー
10位のYUMEGIWAからすでに2曲ランクイン。そんなみんな聞いてたんだ。
●40、グッドバイ-toe
根拠はないけど「ほんとぉ?」ではある
●66、東京-GEZAN
これはtoe以上に「ほんとぉ?」感が強い。GEZANってそんな人気だったんだ…?
●74、十四才-↑THE HIGH−LOWS↓
ハイロウズ全然聞いてなくてすいませんでした…

もちろん全部名曲で良曲であるし、ケチ入れたいわけではない。私自身も音楽詳しいです顔してハイロウズとキリンジは全然通ってない愚かさがあるので、良さがわかってないのがある。

そして、この「思ったより低くない?or入ってなくない?」と「思ったより高くない?」の2つを考えてみてわかったことがある。

このランキングで本当に見えること

ここまではマジで私の好きな音楽への忖度が入っている感想である。
ここをゴリゴリに強調するのは、本当に本心で「このランキングは良くない、意味がない」ということが言いたいわけではないからだ。
本当にまんべんなく「名曲」や「人気投票」を決めるのは難しい。それは想像に容易い。統計学に詳しい人誰か説明してください。
聞いてる年代、普段行くライブの層など確実にそこで動いていくし、なんなら地域も関わってくるだろう。名古屋で聞いたらメロコアもっと入ってくるんじゃないか?
まあそんな感じで、これを総意と受け止めて、そこに憤ってはいない。

で、だ。
アンケートを取った、主催のfulu_grooveさんに注目してみよう。

都内を中心に活動している、「ヒメウズ」(ちなみにfulu_grooveさんはドラム)
00年代の邦ロック感あるボーカルと10年代感あるギターリフで初期きのこ帝国みたいなシューゲイズ、とツイートでは自称していた。
fulu_grooveさん自身のフォロワーは1800人超。
つまりは「ヒメウズのようなバンドを聞いていて」「fulu_grooveさんの知らせが届く範囲」の人のアンケートの結果である。

これ結構、大事なことな気がしていて。
これ大事な市場調査じゃないですか?
オリジナルをやって、コンスタントに活動しているバンドなら気になってもいい「自分のライブに来てくれてる人はどんなバンドを聞いて、結果自分のとこに来てくれてるんだ?」の答えを出すことができる。
私だって気になる。たとえ、自分のファンじゃなくても、友人でも全部統計とってみたくなる。
それを知ることって、自分の音楽に反映させなくとも、身になることはありそうだ。

そして、当事者じゃなくても、俯瞰で見ると「ほーーーこういうバンド(ヒメウズ)を聞いてる人はこういうバンドも聞いているのね」と把握できる。
自分はそう見えた。
「シューゲイザーでもがっつり轟音でノイズまみれやドリームポップに寄りすぎているものみたいなのではなく、歌モノに寄り添ったものを好む層」や「邦楽ロックのしっかりと聞かせるものを好む層」にヒメウズは好かれている、と見ることができる。というか俺はそう見た。
年代も、20後半〜30前半くらいに絞られるだろう。いやもうちょい上か?
その分析ができるのがこのランキングの強みではないだろうか。

"邦ロック"という言葉の危うさ

しかし、Xの界隈ではあまり好意的に見られてはいなそうだ。
原因はこの「邦ロック」という言葉にあると思う。(あと年代)

単純に「邦楽+ロック」、つまり国内で創作されたロックと考えるものでもない。
だったらなんでラルクは入ってないんだよ!とか言い出しかねない。俺が。
俗っぽい言葉で一番近い言葉だったら「ロキノン系」だろうか。
つまりは"ロッキンオンジャパンに載るような音楽"なわけだが。
そういうのと似た雰囲気にある。
定義が曖昧なのだ。

ちょっと頑張って言語化してみると…
「邦ロック」は"日本のロックバンドが好きな層が主に聞いている音楽"(ただしバンド形態やロックとは限らない)
なのだろうか?
そう思うと人の趣味嗜好に言語の定義がブレるという難しい点があるな…

そして「邦ロック」には年代の固定が含まれていないが、なんとなく「現在の」というニュアンスが含まれているように思う。
これには、批評や文化のムーブメントとして使われる文脈よりかは、若い子が「邦ロックなにきく?」くらいのラフな会話・及びネット上でのやり取りで使われるor使われてきた印象が強いため、「昔の音楽は指さないだろう」みたいな先入観がある。
というか「邦ロック」という言葉が使われだしたのは2010年代以降だし。

(参考記事と参考ツイート↓)

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【追記】
「"邦ロック"という単語は2000年代前半から存在していた」という指摘を幾人からいただいた。
アンダーグラウンドな掲示板(ふんわり表現)などではすでに使われていた用語のようだった。
そこに関しては間違いを書いてしまっていたようだ。誠に申し訳ない。
「邦ロック」は一種のスラングであり、スラングらしくネットの深くから現在の広がり方を見せている。
また、記事を出して読んでくれたフォロワー諸君から「結局"邦ロック"てなに?」という意見がよく見られた。
先述の通り、言語としては「邦楽+ロック」ではあるが、意味としては「国内で創作されているロック」ではない。
バンド形態のTOKIOやラルク、ミスチルは"邦ロック"ではないのに対し、ソロのシンガーソングライターとして活動しているあいみょんやVaundyが邦ロック扱いであり…この場合分けをすべからくしていくと見えてくるものがあるのだろうか…
キーとなるのは夏フェスとSNSだろう。
夏フェスを好むようなファン層、そのファン層たちがSNSで繋がろうとするために表明するバンドが「邦ロック」に属するのだろう。
そもそも音楽は一人で聞いても素晴らしさは変わらないし、フェスもライブも一人で行けばいいねん派なのであまり感覚は共有できないが、
「音楽で誰かと繋がる」のではなく、「繋がるために音楽を聞く」という逆説的な現象が"邦ロック"と"邦楽ロック"の乖離を産んでいる、ような、気もする。

また、この言葉の違和感には蔑称という側面も持ち合わせている。
かつての「ロキノン系」はある程度スタイリッシュな意味合いも持ち合わせていた。
なんていうか、こう、J-POPと一線を画すような「日本でロックやってる奴ら」みたいな感覚だ。
それが「ロキノン厨」という言葉が出来上がった。
「ロキノン系のようなものを聞いている"うざい"奴ら」みたいなニュアンスだろうか。
こちらは、バンドを指すものではなく、そのファンを指す単語。
始めのほうから観測できていないので予測でしかないが、「邦ロック」もこの進化を辿っていたのではないだろうか。
かつてはライブハウスで汗かいて、観客を沸かせていたバンドが、
傍から見たらフェスで消費されているようなバンドやファンを指す言葉にすり替わった…なんて進化を遂げているような気がする。
事実、「"邦ロック"って言われたくねえ」なんて言うバンドもいたし、筆者自身もこの単語を連発する音楽ファンを潜在的に懐疑的に見てしまうことはある。ほんまに好きなんかこいつら?みたいに。
蔑称と処理してしまえば酷く冷淡でそのままだが、この単語を属性としてしっかり使用している人もいる手前、その処理は倫理的に適さない。
が、時代の流れや定着した文化もある。
その文脈を理解した上で、納得はできなくても、今後の流れを読み解いていく必要があるだろう。
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みんなそれぞれの"邦ロック像"があり、生きている時代がある。
2010年代以降に注目していた人からしたら、ゆらゆら帝国より絶対入れたいバンドもあるだろうし、"邦ロック"がフェスでモッシュしたりする盛り上がるバンドと思っているならキリンジじゃあないだろうと思うだろう。
この認識のブレが荒れの原因を産んでいるだろうなと思う。

この"邦ロック"という言葉にしっかりと定義がつくのはもう少し時代が経ったあとなのだろうか。
ムーブメントは、最中にあるときはうまく定義付けをするのが難しいように思う。
歴史は振り返ることで形をしっかりと固める。
かつての1970年代からの「シティポップ」が後ほど研究され再評価され、新しい価値で聞かれ続けるときのように、現代の「邦ロック」も後の時代に研究されることを願う。

というか、そのときの証言の一つに俺はなりたい。なれなくともその研究を絶対見守りたい。

そう思うと生きる理由ができたな……健康でいよう…

それにしてもミッシェルは入るだろ!(まだ言う)

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