住宅にどのくらいの気密性能が必要?

熱を逃がさないため

すき間が多いと熱が外に逃げていったり、風などにより換気量が増えたりするため、無駄な熱損失が多くなります。
では、風の影響をシミュレーションしてみましょう。
実際にはすき間が0ということはありませんが、0を基準として相当隙間面積(C値)別に、暖房費を計算してみます。

暖房費

基本的にすき間が小さいほど、暖房費は少なくなります。
どこまで許容できるかは人によると思いますが、C値が1~2以下であれば数千円しか変わりませんので、このあたりがラインになりますでしょうか。
なお、実際には地域の気象(気温や風など)によって暖冷房費は変わってきますので、高気密化による省エネの効果も地域によって変わってきます。

計画換気のため

なぜ住宅に高気密化が必要?」で説明しましたが、住宅のすき間が大きいと換気システムを通らない空気の出入りが多くなり、換気量が安定しません。
まず、無駄な換気の割合を見てみましょう。
1種換気で、室内外の温度差が15度、風速が1m/sを想定しています。

漏気率

これを見るとC値が1でも、26%が換気システム以外のすき間を通っていることになります。
風が強くなるとさらに漏入量の割外が大きくなることが予想されます。
これから見ると、C値が1でも不十分で、もっと小さなC値が必要なことがわかります。

環境によっても異なるのではっきりしたことは言えませんが、風や内外温度差に影響されない安定した換気量を得るためには、C値が0.7、理想的には0.5以下が必要と言われています。 

熱交換型換気システムのため

最近は熱交換型の換気システムが増えてきています。
住宅にすき間があると熱交換素子を通らない換気が増えてしまうため、熱交換を効率的に行うためには高気密化が必要です。
こちらは明確なデータがないのが残念ですが、漏気率が小さいほど効率が高くなるため、C値0.3以下の超高気密の必要があると言われています。

結露防止のため

住宅にすき間があると、冬室内の水蒸気が壁を抜けて外に出て行く過程で冷やされ結露します。
結露しますと、グラスウール断熱材の場合は濡れて断熱性能が低下しますし、結露水が蒸発することで壁内の湿度が高くなったり、木材の含水率が高くなったりして、カビや腐朽の原因になります。
これを防ぐためには、高気密化して水蒸気が壁内に入らないようにする必要があります。
これも明確なデータがないのですが、水蒸気は非常に小さなすき間でも通り抜けることができるので、できるだけ高気密な住宅の必要があります。

必要な気密性能は目的によって異なる

どのくらいの気密性能が必要なのかは、気密の目的によって異なります。
一般的に高気密化は暖冷房の省エネで語られることが多いのですが、実際には高気密で節約できるエネルギーには限界があります。
従来の低気密住宅から高気密住宅になれば年間の暖冷房費は安くなります。
ただ、一定以上の高気密化に達すると省エネへの影響は限定的になります。
それでもさらなる高気密化が求められるのは、健康に影響がある換気や、住宅の耐久性に影響する結露などのためです。

基本的には気密性能は高ければ高い方がいいと言えます。
気密性が高ければ息苦しいと考えるかもしれませんが、実際には換気システムの効率がよくなり空気はきれいになります。
(正しく設計され、正しく運用されている換気システムの場合)

ただ、闇雲にC値の値を小さくしようとしている人たちもいて、耐久性の低い気密施工(たとえば強風が吹くと壊れてしまうような気密施工など)をしていたり、ひどい場合は不正な気密測定をしていたりします。
これは業者に問題があるのですが、最近は施主が無理難題の数値を要求する事例も増えてきているようで、業者も困っているようです。
最も重要なことは人が健康・快適に過ごせて、住宅が省エネ・高耐久なことです。
自分にはどのくらいの気密性能が必要なのかを考え、業者や住宅を選択する必要があります。
そのためには住宅に関する正しい知識が必要です。


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