憧れのラジオ SCHOOL OF LOCK!
中学時代、SCHOOL OF LOCK!が流行った。
クラスメイトはもうみんな聴いていた。
radikoどころかスマートフォンすらなかった時代。
ラジオといえばカーラジオで、親の運転する車の中で流れてくるものというイメージだった私には、衝撃の流行だった。
わざわざ時間を合わせて、周波数を合わせて、その番組の為に時間を空けて聴くのか。ラジオ。
クラスメイトの話題に私も入っていきたい!
そんなに楽しいラジオを聴かないわけにはいかない!
と、母にねだって買ってもらったのはホワイトとミントのバイカラーが可愛い携帯ラジオ。
君を絶対に大切にすると誓うよ。
私の知らないラジオの世界を届けてくれ。
電池を入れて、アンテナを伸ばして、電源を入れる。
ザーッという音を聴きながら、周波数を少しずつ合わせ……
あれ?
合わせ……
あれ??
合わ……
合わねぇ!!!!!!!
どんなに周波数を合わせても、延々と流れるのはザーッという騒音。
窓際でも
リビングでも
ベランダでも
なんなら一回外に出てみても
聴こえないじゃんラジオ!!!!!
「おかーさん、ラジオ聴こえないんだけど!?何これ!?」
アンテナをマックスまで伸ばしたノイズしか聴こえない携帯ラジオを胸に抱いて涙目になっている私に、母は
「あー、山奥やし無理やろ」
完
いや、マジで先に言えし。
なんで買ったし。
は?マジふざけんなし。
確かにここは山奥。
最寄りのJRの駅までバスで一時間。
そのバスも一時間に一本。
ていうかまずバス停まで三十分くらい歩くし。
駅に辿り着いてもJRも一時間に一本だし。
県庁所在地の金沢まで電車で一時間かかるし。
通学路に鹿も栗鼠も熊も出るし。
カブトムシと蛾、エグい量出るし。
びっしり敷き詰められたカメムシで、白いはずの外壁が茶色く見えるし。
この町にはコンビニもねぇし、なんなら信号もねぇ!
小学校では信号の授業がある。
本物の信号機がないから警察が信号機の模型を持ってきて、信号機を教えてくれる。
あと小学校の畑もある。
小学校の畑ではキュウリとか大葉とかさつまいもを作る。
おいおい、強めの田舎だな……。
SCHOOL OF LOCK!に校区外あんのかよ。
んで私、校区外在住だったのかよ。
それ以来、教室でSCHOOL OF LOCK!の話題になるとしれっと逃げるようになった。
みんなもっと街中に住んでるから聴けてたのかよ。
クソが!!
携帯ラジオは捨てました。
私がオールナイトニッポンに出会ってラジオを好きになるのは、それからまたもっともっと先のお話。
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