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「もしかして”上場”って知らない!?」#8

 ニュースや日常生活、就活などでよく耳にする「上場」という言葉。なんとなくは分かっているかもしれませんが、実際何をすることなのか、何が必要なのか、知っているでしょうか?

 上場企業やそれを目指す企業で実際に働いてみないと、その大変さや、それがもたらすものはイメージしづらいですよね。今回は、意外と知らない「上場」について山口豪志さんにお話ししてもらいました!


「上場」ってなんですか?

 実は「上場」って審査がとても厳しくて、選ばれた企業にしかできません。しかもお金も手間もかかります。

 しかしこれをすることによって資金調達などの面で大きなメリットがあるのです。だから上場を目指す企業も少なくありません。

 さて、さっそく「上場」について詳しく見てみましょう!


 「上場」とは、具体的には会社の所有権または経営権の所在を示す「株式」の一部を「株式市場」に流通させることで、一般の方々にも株式を保有してもらうことを言います。いわゆる「株式公開(IPO)」です。

 山口さんはご自身の著書(下部の引用参照)で「上場」についてこう説明しています。では、これをすることで一体何が変わるのでしょうか? 

 上場企業は具体的に何かできるかというと、例えば上場企業Aは自由に自分の名前のお金(=株式)を発行することができるんです。今月お金ないなと思ったら、A紙幣を刷って買いたい人に自由に買ってもらうことができる。

 つまり、資金調達です。不特定多数の人に株式(株主からの資金に対して発行する証書)を購入してもらえるので、大きな額を集めることが可能になります。だから自由度の高い企業運営ができる。これが上場の大きな魅力です。また、銀行と違って株で集めた資金は返済義務がありません。


 逆に、未上場企業は自ら株の購入者を探さなければならないので、身内や取引先、ベンチャーキャピタルなどの知っている人にしか売れません。この未上場企業の持つ株を「未公開株」といいます。

 知っている人にしか売れないと、株式を公開しているのと比べてどうしても規模の小さい資金調達となってしまいます。


 株式を買った人(=株主)は、会社の経営権を得ることができます。つまり、オーナーの一人になるということです。

 それに伴って、議決権や経営に意見を提出する株主提案権を持つことになります。ほかにも、株主優待を受けたり、配当金を受け取ったりできるというメリットがあります。


どれくらい大変なことなの?

 まずお金に関して、上場準備と上場を維持することの両方にお金がかかります。準備するお金が、監査法人や社内体制とかで大体2000~3000万。会社の規模が大きいとさらにかかります。

 例えば、1000人くらいいる会社だと派遣スタッフの労働環境や、セクハラ、残業代を払っているか、などの問題があったときに通報する窓口をちゃんと設置している必要があります。

 また、体制面、金銭面、労働環境などの最低水準をちゃんとクリアしているか、定期的にチェック、監査することも必要です。そして、それをしてくれる組織に対してもお金を払わなければなりません。

 対象人数、社員数、取引先が多ければ多いほどコストはいっぱいかかるので、大企業で上場するとなれば何千万じゃきかず、何億円とかかります。また3か月おきに四半期決算をし、取引先や、どこからお金が入っているのか等も細かくチェックされます。一般の商店や会社だとここまで細かくチェックはしません。


 このように上場企業は、自らお金を払って自分たちが嘘をついていないことや、正しく運営していることを証明しているので、安心して株の売買ができるのです。

 上場しているか否かは一種の信頼にもなるのですね。だから就活でもそれがウリになることが。最近沢山送られてくる就活サイトからのメールに、”東証一部上場”という文言が一番最初に書かれていることがとても多いです。

 上場しているかどうかは一つの判断基準ではありますが、あまり盲目にならずに企業選びができたらいいですね。


ああ

 株の始まりは1600年ごろ、当時非常に高価だったコショウなんだとか。コショウはお肉を美味しく食べたい人に大人気で飛ぶように売れたそうです。当時お肉を美味しく食べられる人は富裕層ばかりで、高くても売れました。

 インドに行けば普通に安価で売っているコショウ。それを買いに行く船賃に1億の出資が集まって、仕入れてきたコショウは10倍の値段でも売れる。そうすると売り上げが10億円にもなります。儲かったお金を、出資者に配当金としてお金を戻す。実は400年以上も前から、株の仕組みは始まっていたのです。


【引用・参考】
山口豪志『0 to 1 会社を育てる戦略地図』(2017) ポプラ社
カブガイド「株主が受けられるメリット」(ホーム>株主が受けられるメリット)

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このnoteでは「働く」ことや「仕事」、「就職活動」について考えたはじめた大学生からの素朴な疑問に、山口豪志さんが答えます。

会社の選び方や働き方を、ビジネスモデルと関連させながら、解説していただきます。

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