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鞭と人参:ムチとニンジン #89 辞書の生き物

鞭とニンジン

 ムチは馬など動物を叩くための革や竹などでできた道具で、競馬で騎手が追い込みの際に使うのを見たことがあると思いますが、不快・苦痛を与える象徴として使われています。
 一方のニンジンは馬の好物で、ムチと対極の快・心地よさを表現しています。
 ムチとニンジンは、不快と快を使って動機付けして人を動かす手法として使われてきました。

 親が子供に勉強させたいと、「期末テストでクラスで一番にならないとゲームは禁止」というのがムチ。「一番になったら新しいゲーム機を買ってあげる」というのがニンジンにあたる例でしょうか。
 この手法は、家族内や会社などでも使われていましたが、国家として人民を動かす政策や、国家間の経済政策として導入されたこともあります。

飴と鞭:アメとムチ

 同様の意味を持つ言葉が「アメとムチ」です。
 ニンジンがアメに変わっていますが、最初に使われたのは旧ドイツのビスマルク政権を揶揄して使われたものだそうで、「甘いパンとムチ」政策として広まりました。
 ビスマルクの政策は、社会保険制度によって労働者を優遇し、一方では社会主義者を弾圧するなどして国を支配していました。

 アメやニンジンのご褒美をぶら下げられるのと、罰や不利益が待っているのでは、どちらが効果的でしょうか。効果のほどは人それぞれかもしれません。

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