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雁首を揃える:がんくびをそろえる #48 辞書の生き物

雁首を揃える

 雁首はタバコを詰めるキセルの頭の部分のことで、曲がっている様子を人の頭(首)に見立て、何人かの人が集まること、整列することを表現した言葉です。

キセル屋

 昔、キセル屋ではキセルの頭を揃え並べて売っていましたが、その様子が、まさに「雁首を揃えて」という状態を示していました。やや軽蔑する意味を含んでおり、「雁首を揃えて謝罪する」のように使われます。
 おそらく、キセル屋での雁首の並べ方がきちんと揃えられていなかったため、悪いイメージの言葉になったのではないでしょうか。雁首を揃えるメンバーには入りたくないものです。

雁行飛行:がんこうひこう

 雁首といえば雁など大型の渡り鳥は、前の鳥の斜め45度後ろに陣取ってV字型の隊列を作り、首を揃えて長距離の飛行を可能にしています。
 前を飛ぶ鳥が羽ばたいて生み出した上昇気流を利用して斜め後ろの鳥は省エネ飛行ができるようです。
 V字飛行での効率を調べた研究では、単独で飛ぶよりも1.5倍以上遠くまで飛べるとのこと。
 先頭の鳥には恩恵がなく疲れるだけですが、鳥たちは順番に入れ替わり、全体で遠くまで飛べるよう協力しあっているようです。話し合うでもなく自然に協力できているのは素晴らしいですね。
 雁やハクチョウなど1000km以上の渡りをしますが、若どりにとっては過酷な移動ですので、少しでも省エネで飛べるV字隊列は必要です。
 雁以外の渡り鳥もこのV字飛行を行いますが、雁の形がきれいだったのか、この形での飛び方は「雁行飛行:がんこうひこう」と呼ばれます。

 この位置で飛ぶと楽だと気付いて群れに広めた最初の鳥は偉大です。
スピードスケートや競輪でも、前の選手の後ろに位置して空気抵抗を減らし体力を温存します。チームでの走行では、雁と同じく時々先頭を交代しています。鳥の隊列飛行がヒントになっているのでしょうか。

がんもどき 

 ちなみに、おでんや精進料理に使われる油揚げ料理の「がんもどき」の「がん」も鳥の雁に由来します。「もどき」は「似て非なるもの」の意味です。雁の肉の味に似せて作られたということで「がんもどき」あるいは「がんも」と呼ばれるとうになったようです。

雁字搦め:がんじがらめ

 このほかに「雁」が付く言葉としては、雁字搦め(がんじがらめ)があります。
 雁字とは雁が一列になって飛ぶ様子を字に見立てたもので、雁字搦めとはヒモや縄などで何重にも巻き付けて縛ること。そこから、規則や伝統などで強い制限を受けて自由に身動きが取れないことを意味しています。

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