誰も教えてくれないベトナムに生産拠点を作る時の重要検討事項

「ベトナム人は真面目で勤勉、そして人件費が安いからベトナムに生産拠点を作ろう。」

過去の話しのようだけど、実際には今もまだこの神話が続いている。

1つ前の記事でベトナム人の気質については紹介したので、「ベトナム人は真面目で勤勉」は否定しないとして、人件費についてはどうだろうか。

ベトナムの最低賃金は4地域に分け設定され、毎年1月1日に改定される。2020年の最低賃金(月額)は、第一地域442万ドン(約2万円)、第二地域392万ドン(約1.8万円)、第三地域343万ドン(約1.6万円)、第四地域307万ドン(約1.4万円)である。5年ほど前までは上昇率が10%を超えており、どんどん膨らむ人件費を心配する声もあったが、近年は5%程度の上昇で落ち着いている。

一方、お隣のカンボジアは月額190米ドル(約2万円)とベトナムとほぼ同額。いや、ベトナムの製造業が第一地域に属するというのは稀なので、ベトナムの方が安いと考えられる。

近年ベトナムとどちらが良いかとテーブルに乗ることが増えてきたミャンマーは日額で4,800チャット(約370円、26日勤務とすると月額約9,620円)と人件費はベトナムよりも圧倒的に安い。しかし、まだインフラが安定しておらず生産拠点を作るのには心許ないというのが現実のようだ。

このように見ていくと金額そのものではなくコスパが良いという方が正しいのかもしれないが、人件費が安いことも納得ができた。

「ベトナム人は真面目で勤勉、そして人件費が安いからベトナムに生産拠点を作ろう。」このベトナム神話、今も続いているようです。

しかし

ここでベトナム生産拠点を作ることを突き進めるのではなく、しっかり検討したい重要なことが2点ある。

1)現地調達

ベトナムは元々産業がなく、裾野産業が育っていない。イコール現地調達率が低い。ある調査によると、日系企業のベトナムでの現地調達率は36.3%(金額ベース)、さらにはそのうちほとんどが現地に進出している日系企業から、そして日本以外の外資系企業からを占めていることもわかっている。要するに、ベトナム現地企業からの調達はほとんどないということ。現地日系企業は駐在員のコストなどもあるのでどうしても高くなってしまう。

調達の約6割は、日本から、そして中国やタイなどの近隣諸国から輸入している。輸入は材料費に加え、国際送料や関税がかかりそれらコスト高は想定内だが、煩雑な通関に読めない時間や見えないコストがかかることも否定できない。なかなか思うように輸入ができないという声も多い。

デメリットばかりになってしまったが、優良な現地企業もあるし、2018年には、現地系コングロマリットのVin Groupが初の国産車を発売するなど成長も見られる。

身近なところで特に注目しているのは、元技能実習生が現地で起業する会社だ。技能実習中に技術を学びながらお金を貯め、帰国後に機械1台から起業するというケースが出てきている。日本の製造業の文化も日本語も多少わかるため、日系企業も取引がしやすい。こういった企業に今後期待をしている。

2)日本人含め外国人(ベトナムから見た)の必要性とそのボリューム

ベトナムは外国企業に対しウェルカムな姿勢を示しているから設立や容易なのだけど、外国人の個人所得税が企業運営の負担になることは早い段階で知っておきたい。

負担になる要因は大きくわけて2つ。1つ目は、累進課税であることは日本と変わらないが、現地の給与相場が低いためほとんどの日本からの駐在員は高所得者に該当し課税率が最大の35%になること。もう1つは、所得控除できるものが少なく(基礎控除の約4.5万円以外ほとんどない)、逆に家賃や所得税を会社が負担する場合はそれらも所得に含めることになり、課税対象金額が額面の給与よりさらに大きくなること。

ざっと計算すると、年収500万円で、家賃120万円の駐在員に対しては、約200万円の個人所得税を払うということになる。日本のように市県民税などはなくこれだけではあるものの、結構大きな負担になりかねない。

支払うしかないものではあるが、給与の低い若手社員を駐在させたり、ベトナム人を日本本社で教育して現地の責任者にさせるなどは多くの企業が取り組んでいる。

今回はここまで。最後まで読んでいただきありがとうございます。次回は、現地企業との取引について紹介しようかな。

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