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副業を認めるにあたり企業情報の漏えいはどのように予防すればよいか

先週、労政審議会が副業・兼業の労働時間通算について資料を公開したことから副業と労働時間通算に関するnote(下記)を書きましたが、今回は副業の際の情報漏えいの予防について書きたいと思います。


1 副業と企業の情報漏洩のリスク

従業員が副業・兼業を行う場合に、その業務内容や雇用主(副業・兼業が雇用の場合)や取引先によっては本業でのノウハウ、重要情報、機密等が有用である場合があります。
これは、当該従業員が副業に当たり本業の情報を利用するインセンティブがあることを意味しますので、会社はその漏えいリスクに注意をしなければなりません。
そのため、副業・兼業を許可するにあたり、会社は、機密を含めた情報漏えいのおそれから自社の企業秘密等をどのように守るのかを検討する必要があります。
同様に副業・兼業先の重要情報が本業に有用なこともあり、その場合には、自社に他社(副業・兼業先)の企業秘密等が持ち込まれてしまう可能性がありますのでこの点にもケアする必要があります。

2 機密保持義務

検討の前提として機密保持義務について説明をします。

(1)機密保持義務について

従業員は、会社に対し、雇用契約(労働契約)の付随義務として機密保持義務を負います。この義務は、契約上の信義則により生じるものですので、雇用契約の成立により従業員に課されるもので契約書に記載がないからといって負わなくて済むものではありません。
もっとも、従業員が会社の重要情報を持ち出した際に上記の機密保持義務違反に該当するかの判断においてその情報が機密であるのかという点が論点になり、これを明確にしておかないと会社側が不利になります。
そのため、雇用契約書、就業規則、情報管理規程等で、どの情報が「機密」に該当するのか明確にし、かつそれを従業員も認識できる状態にしておくことが肝要になります。

(2)不正競争防止法

不正競争防止法でも「営業秘密」を侵害すると損害賠償請求や刑事罰の対象になります。不正競争防止法の営業秘密に該当するには①秘密管理性②有用性③非公知性の3つの要件を満たさなければならないため、特に①の観点から不競法違反は、容易には認定されません。
そのため、自社の情報管理という点から不競法があるから大丈夫と考えるのではなく、ちゃんと社内規定を整備しましょう。
また、従業員が副業・兼業先から営業秘密を自社に持ち込んだ場合、会社は自らが不競法違反(刑事罰)の対象となるリスクを抱えることになります。そのため、情報管理の問題は自らの情報が漏れることだけでなく、副業・兼業先の情報が持ち込まれないようにすることにも注意しましょう。

3 企業情報を漏えいさせないために

それでは、情報漏えいを予防するための方法についての説明に移りましょう。

(1)情報の特定・ランク付け、管理体制の整備

まず、重要な情報が容易に漏えいしないように物理的に管理体制を整えることが挙げられます。
そのためには、社内のどのような部署にどのような情報があるかを洗い出し、その中で情報の内容や性質に応じ漏えい防止の対象となるものについて特定やランク付けを行いましょう。
そして、その特定しランク付けした情報について、ランクに応じた管理方法を採用しましょう。具体的には、保管場所、媒体、アクセス権者を誰にするか、加えて重要なものについては管理責任者の設置や利用の手順といった点も検討して明確化・具体化することが求められます。

(2)社内規定の整備、機密保持の合意、教育研修

物理的に漏えいができないようにすることに加え、従業員がそもそも安易な持ち出し漏えいをしないように従業員への抑止を働かせ、かつ漏えいやその疑いが生じた場合には対応できる権限を取得しておくようにすることも重要となります。
上記(ア)で特定・ランク付けした情報について、これらがどのような内容でかつどのように取り扱わなければならないのか、またこれに違反したらどのようなペナルティがあるのかといった内容を就業規則または別途情報管理規程やセキュリティ規程といった社内規則で定めるようにしましょう。これらを補完ないし強化するために、個別の事情を反映したり従業員の意識を高める観点から個別に従業員から誓約書を取得することも有用です。

(3)定期的なモニタリングとマネジメントサイクルの設計

ルールや体制が整備されても機能しなければ意味がありません。
上記(ア)(イ)が遵守され機能しているのかを定期的にモニタリングし、状況の変化(社内だけでなく社外(社会情勢、法律、テクノロジー等)の変化も含みます)によって体制やルールの変更が必要であれば反映できるようにマネジメントサイクルも設計しましょう。

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