PUBG Analyst 論考② アナリストの現状

 こんにちは。みどると申します。連載企画第2回の記事です。

 前回記事ではアナリストの役割についてお話ししました。今回の話題は、アナリストが少ない現状についてから出発し、アナリストに必要な能力(適性)について述べていきます。


アナリストの母数

 結論から言うと、PUBGでチーム活動するアナリストは30人に満たないと考えています。選手の人数はといえば、PJS と PaR に出場するチームだけで100チーム近くあり、U-18のプレイヤーも含めれば500人ほどいるでしょう。

 しかし、アナリストは30人弱。アナリストとしてチームに所属すると、PUBG SCRIM JAPAN(PSJ)でオブザーバーとして練習試合を観戦することができます。実際にはコーチやマネージャーが兼任していることもあるので正確な情報ではありませんが、G1チームのほとんどがオブザーバーを参加させています。G2チームは約1/3くらいかと思います。

 PSJにはG1,G2に相当するTier1,2の下にTier3というランクがありますので、ここもG2チームと同じくらいの割合でアナリストを抱えていると考えると、50チームほどいる中の半数くらいでしょう。G2出場チームでもアナリストのいないチームはまだ半数以上あるでしょうから、アナリストは決して競争率の高いポストではないはずです。

 では、なぜアナリストは少ないのか、主な理由は2つ考えられます。


そもそも選手が必要としていない

 一つ目の理由はずばりこれだと考えています。もちろんやってくれる人がいるなら歓迎されるでしょうが、自らアナリストを募集しようというチームは多くないと思います。

 なぜなら、マップ録画とランドマークまとめにアナリストの役割が集中しているからです。このあたりの話は前回の記事で論じています。

 マップ録画やランドマークまとめは「敵の情報を得る」行為です。したがって、ある程度たたかうチームが固定されている環境でなければ有効な情報となりません。PSJは参加チームが序列化されていますし公式大会であたる相手と練習できますから、アナリストを募集しようとなるわけです。

 元来の(リアル)スポーツでは、アナリストは敵ばかりでなく自チームも分析対象として様々なデータを提示してチームに貢献する役割ですから、戦う相手が誰だろうと一定の活動ができるはずです。

 しかし、このようなゲームプレイからすこし離れた技能・適性を持つ人材を選手自身が必要とすることが、まだ意識として薄いのかもしれません。もちろんこれは、アナリスト側も自分たちの重要性を広めていく必要があるでしょう。


はじめはみんな「ゲームが好き」

 二つ目は「ゲームをやる側ではなくなるから」です。共感できる人も多いのではないでしょうか。多くの人はゲームが好きで、PUBGが好きで、競技シーンに参加していることと思います。

 アナリストになるということは、平日の夜3時間をマップを映すために費やすということです。ゲームをやりたい、という人にはなかなか覚悟のいる決断です。かくいう私も、当時は毎夜ゲームをやっていて、アナリストを目指すかどうかはかなり迷いました。

 TPPの頃にPUBGを1000時間以上やりこんだものの、FPSの経験が皆無だったため、FPPはほとんどやっていませんでした。今でもFPPはたまにやるくらいなので、プレイする側から降りてなおモチベーションを維持するという点では適性があったのかもしれません。


アナリスト適性

 「ゲームをやる側から降りても続けられるか」という話はどちらかというとやる気に関わる部分です。次は能力についてお話します。

 マップ録画やランドマークまとめといった「データコレクト」の部分はやる気とツール次第でどうにでもなりますから、問題は分析作業のほうです。

 PUBGの競技シーンにおいて、アナリストはシステムと人、2つの側面から分析を進める必要があります。


不完全情報ゲーム

 何かの選択をするときに、すべての情報がそろわない状況を、ゲーム理論の分野で「不完全情報ゲーム」と呼びます(ここでいうゲームは一般的なビデオゲームのことではありませんが)。

 PUBGでは、接敵したチームがどこなのか、何人残っていてどこに配置しているのか、すべてを把握することはできません。不確定な情報の中で、回り込むとか突貫するとか、選手はなにかしらの判断をして動きます。

 その判断の基準となるものは、各チーム、各選手で当然異なるでしょうが、それを導き出すことができれば、この状況の時このチームはこう動くはずだ、という行動予測につながります

 セーフゾーンや銃声などゲームから得られる情報と、それを得た人間がどういうプレイをするのか、それを合わせて分析することで、有効な情報をつくっていくことができるでしょう。


まとめ

・アナリストが少ないのは①遊べなくなるから②必要とされていない
・PUBGは人間がシステムからの情報で判断して動く
・システムの分析と人間の分析の両方が必要

 だいたいこんなお話をしてきました。数値をあれこれいじるようないわゆる「分析」については、abaraさんのこちらの記事をお読みになればイメージしやすいかなと思います。

 ただ統計データを扱えるだけではアナリストとしては半分で、そのデータから選手たちがどう考えてどう動くのか、を推測することがアナリストの大本命であり醍醐味であると思います。先に例に挙げたゲーム理論だけでなく、心理学とかそういう方面でも役に立つことがあるかもしれません。


 ここまでお読みくださってありがとうございました。次回は、実際に私が行っている活動についてお話して、今回の連載を終える予定です。Twitterでご感想いただけると大変励みになりますので、引用RTも歓迎しております。よろしくお願いいたします。

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