訪京行脚(冬) ─2023/02/9-10
肉の日のなかでも最上位で「肉」を表している2月9日、僕は東京駅の新幹線発着ホームにいた。
けして、こだまが好きなわけではない。
それなりに(この場合の比較対象はのぞみなどではなく深夜バス・飛行機)早く着くことができ、かつ安い交通手段として、最近ではもっぱら新幹線「こだま」を使うことが多い。こいつ、新幹線のくせに”各駅停車”なので、一般には「こんな駅、誰が使うんだよ」とイジられがちな駅(駅名は名誉のため伏す)にも停まるのだ。
「好きでこだまを選んでいるわけではない」と前段で言ったのはまさしくその通りで、これはJR東海が提供している「ぷらっとこだま」という旅行パックを使っているから。
ホテルと新幹線あわせて30000円でお釣りが来るくらいの値段設定なので、まあ重宝している。金に余裕がなく時間に余裕がある若者の平均値のような自分には最適のプランだ。ホテルはいくつかの候補から自分で選べるし、新幹線は座席の位置(3人がけの通路側とか2人がけの窓側など)を指定できるため、値段の割に満足度が高い。
2/9
13:30ごろ、京都に到着。
とりあえず地下鉄に乗り換えて烏丸御池駅の近くにあるホテルへ荷物を置きに行く。ちょうど部屋の清掃が終わったところなので、チェックイン時間前だけど部屋に入っていいよ、とのこと。嬉しい。
でも応対してくれたフロントの人がずっと小刻みに手を震わせていたので心配だった。
荷物整理をし、知恩院へ。
いつ見ても圧倒されるスケール感。さすが国宝。
こちらが御影堂。法然上人が祀られている。三門に負けじと劣らず大きい。
京都は街並みを観て回るだけでもじゅうぶん観光気分に浸れるので良い。
というか、個人的には非日常的な景色を見れるだけで旅行に来てよかったー、と思える。知らない街角は楽しい。東京でも知らない街角たくさんあるじゃん、と書いていてふと気づいた。もしかして、東京でも知らない街角を観たら旅行気分になれるのかもしれない。まあ、新幹線に乗って向かった先で見る街角は、東京の少し遠出したところにあるそれとまたちょっと違うのだと思う。
そんな感じでフラフラしながら街並みを見て回り、ふと気づいたら15時ほど。すっかり昼食を取るタイミングを逃してしまったので糖分を取ろうと京都駅にあるカフェまで歩いて向かった。
京都駅に駅ビルとして入っているのか併設されているのかよくわからない場所に立っている伊勢丹がある。そのなかの6階に「茶寮 都路里」はある。
都路里パフェと抹茶氷ストレートティーをいただいた。いいお値段したけど、それに見合うどころかオーバーするほど上品な味がして美味しい。ほぼ京都駅から望む(メインの口とは反対側だが)開けた景色は素晴らしかった。後日調べたところ東京にも店舗があるらしい
ホテルにも大浴場があったのだが、サウナも入りたいなー、という己の欲望に従い近くの銭湯に行った。
本当に昔ながらの銭湯、といった感じの浴室だった。内訳としては熱湯、ぬる湯、水風呂、ジャグジーバス、電気風呂。湯船は、前3つは3~4人、後2つは2人も入ればパンパンだな、くらいのサイズ感。
入れ替えのタイミングにちょうどあたったみたいで、浴室内で常に3~4人しかいない状態をキープしたまま利用できた。ストレスフリーな入浴。最高。
ぬる湯でも42℃はあったんじゃないかな。これもまた良い。熱湯なんて本当にクソ熱かったからね。
あ、でも、ギリギリ楽しめる熱さ。これ以上行ったら怒る人いるだろうな、でもここで高止まりだったら怒るまではいかないな、みたいな、そんな熱さ。
満足。近くの京都にしか出店していないチェーンのラーメン屋で夕食を食べて、ホテルの大浴場もちゃんと入って24時頃には寝た。
たしかに寝たんだ。でも、嫌な夢を観て起きた。
今となっては内容なんてまったく覚えていないけれど、とにかく嫌な夢。寝汗もすごかった。それがだいたい26時くらいだったか。で、半分起きていないような頭のままもう一回眠りについた。一番気持ちいいやつをやった。
そこからなんだよな。1時間おきに2回も起きた。それもさっきのとあわせて3回、それがぜんぶ別ジャンルの悪夢。
このホテルなんかいるんじゃないの?と思うほど最悪だった。本当にあの客室だけ軽く呪われているのかもしれない。
2/10
一日中雨が降ることは予報で分かっていたので、少し遅めの8時に起床。昨晩は例の悪夢で寝汗をかいたので、朝風呂だ!と大浴場に勇んで向かった。これで都合3回風呂に入ったことになる。1泊2日の旅なのに。
一応、ホテルの大浴場も温泉のようで効能なんかを書いてあるボードが浴室内に貼ってあったんだけれど、たぶん温泉じゃない。悪く言うつもりではないんだけれど、普通のお風呂だった。
ホテルを1回出て、傘を買いがてら朝食を取りに行く。
近くの良さげな喫茶店が満席だったので、妥協して上島珈琲店にした。並べばよかったんだけど、なんか嫌になっちゃって。
食べ終わり、近くのコンビニで傘を買って、半セルフレジ(自分の手元からレシートが出るタイプのレジ)なのに「レシートいらないです」なんて言ってしまった。店員のおばさんと二人で笑ってしまった。謎の、だけどなんだか気持ちいい時間。
身支度を済ませてチェックアウト。いざ今回の最重要目的である京都市京セラ美術館へ。
ホテルからそれなりに近い距離だったので雨の中を歩いていった。
10時半ごろに到着。
でかい。外観は、モダンな雰囲気と和の意匠が見事にマッチしていた。
それで何を観に来たのかというと「アンディ・ウォーホル・キョウト」だ。
100点以上の日本初公開作品をアメリカ合衆国・ピッツバーグにあるアンディ・ウォーホル美術館から携え開催された本企画展。詳しいレビューは別記事を立てたい。近日中に必ず…。
じっくり観覧し、満足して美術館を出たらもう13時近くになっていた。コレクション展も観たのだけど少しハイペースだったので、ウォーホル展は2時間強ほど観ていた計算になるか。東京から来た甲斐があったなー、と思えるくらい非常に良かった。
バスに乗り、次なる目的地へと向かう。途中でなんか京都っぽいものを食べようと思ってうどん屋へ。
関西のうどんは出汁が薄い、という話題はあまりにも有名なのだが、実際のところ関西でうどんを食べたことがなかった。大阪に行った際に肉吸いは食べたんだけど、あれはあれですごく美味しかった。だけど、アレはうどんとはちょっと違うなーと思ったので、ちゃんとうどんを食べようと思い立った。
で、注文したのがこれ。
大ポカである。うどんの出汁が濃いとか薄いとかっていうのは「熱いうどん」の話であって、僕が頼んだざるうどんのような、すなわち「冷たいうどん」にはあんまり関係がない。何をしているんだ。
まあ美味しかったのでヨシ。麺類はラーメン以外冷たいのが好みである。
腹を満たし、三十三間堂まで向かった。《千手観音立像》が、自分が今いるここから向こうの壁を超えて限りなく並んでいるかと錯覚してしまうような空間。京都に数ある寺社仏閣のなかでも1,2を争うほど好きだ。
すべてをまとめあげるようにお堂の中央に安置されている大きな《千手観音坐像》が、空間を引き締めている。
今日ずっと立ちっぱなしだ、と遅ればせながら肉体的な疲労に気づいたので、京都駅に向かう道中の喫茶店チェーンに入る。大学の近くにもあった珈琲館。小説を読んだり写真の整理をしたりして休憩。
こういう時間も作らなければいけないな、と去年あたりから思い始めている。休憩時間というのは何も肉体に限った話じゃなくて、脳の疲労にも関係があると思う。あとは精神的にも「自分はいま休憩しているぞ」という意識そのものが大切というか。ガンガンいこうぜだけじゃ駄目ってことです。
16時半ごろに京都駅着。お土産を買い、17:10発のこだまに乗車。
さらば京都。
冬の京都、夏に比べるとかなり良かった。夏は暑すぎてどうにもダメだ。「京都の夏は本当に厳しい」という話は聞いたことがあるし、6月の暑さですらかなりやられまくったので、8月に行ったらどうなってしまうんだろう。
ということを考えると、夏に行くよりも冬に行くほうが全然アリかもしれない。寒さはなんとか我慢できるけど、暑いのは本当にダメだ。これから京都に行くときは秋~春を狙っていこう。心に決めた。
(終)
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?