資本主義社会の「陰謀論」の正体(?)
今回の記事はちょっとした思い付きで、SNSなどで語られる陰謀論と資本主義経済の話をしたいと思います。なにかエビデンスがあったり、理論的にしっかりした話をしたりするわけではないので悪しからず…。
「DS(ディープステート)」などと呼ばれる言説を聞いたことがあるでしょうか。これは、世間でいわゆる陰謀論と言われるものの一種でして、「政府を陰から操る組織」を指す言葉です。政治は民主主義の下では、選挙で選ばれた政治家によって行われるべきものですから、当然この「DS」は悪いものとして扱われています。
「そんな悪の組織みたいなもの実際にはいないでしょ」「だいたい誰がなんのためにそんなことするの」と一蹴してしまってもいいのですが、政治に積極的に関わって影響を及ぼそうとする組織が世の中に全くないか、と言えばそんなこともありません。
例えば日本で言うと経団連なんかがそうでしょう。彼らは大企業の集まりです。より大きな利益を得るために日々ロビイングに励んでいます。悪しように言いましたが、彼らは企業ですから、株主や従業員への責任として、利益を上げる努力をする義務があります。ですから、決して彼らが悪の組織だと言いたいわけではありません。彼らは彼らで合理的な行動を取っているにすぎません。
政治家も政治家で、献金や得票のために企業とコネクションを持つことを合理的と捉えることもあるでしょう。
経済学には、「合成の誤謬(ごびゅう)」という用語があります。これは、個々の単位では合理的な行動でも、それが合わさった時に全体で見ると不利益を招くということを表す言葉です。
よく使われるたとえ話は、不景気になったときの話です。不景気の時、人々はできるだけ消費を控えて貯蓄に回そうとしますが、これが積み重なると社会の消費が減って、さらに景気が冷え込みます。
これと同じように、企業にとって合理的な利益追求も、社会にとっていい結果とならない場合があるのです。
私はこうした「合成の誤謬」が、陰謀論者と言われる人々が見る「DS」の正体ではないかと思うのです。個人や企業としてはただの利益追求にすぎない行動が、社会を通して別の個人である自分に悪影響を及ぼす行動のように見えてしまうのです。この時に企業などが追及している利益が何なのか整理できないと、「世界を悪い方向に動かそうとしている組織」であるように見えてしまうのです。
もっとも、これも仕方のないことで、堂々と「利益のためにロビイングをしています」と喧伝する企業はないでしょうし、どちらかと言うとむしろ民衆には隠したい部分でしょう。我々のような一般人からすれば見えにくいのも無理もないことです。
陰謀論と呼ばれるものの中には確かに突拍子もないトンデモ科学やオカルトじみたものもあります。しかし、合成の誤謬を感知している場合だってあるでしょう。陰謀論とひとくちにまとめて一蹴してしまうのではなく、背後にある利益関係を整理してみると意外と何か社会にとって有用な発見があるかもしれない…と思いました。