見出し画像

薬屋のひとりごと。小説2巻の感想。猫猫と羅漢の歪な親子関係。(アニメ感想も)


「(羅漢を)嫌いだけど恨んではいない。」(猫猫)
「好きで嫌われたい父親はいない。」(高順)

2巻で印象的な言葉です。
猫猫と羅漢の関係は普通の親子関係ではありません。
猫猫と羅漢、鳳仙。親子について少し考えてみました。


親子だからといって愛情があるとは限らない




「親のことは嫌いだけど恨んではいない」というのは結構理解できる話ではあります。

理解できない、という人もいるでしょうか。

「一緒に住んでいるけど他人より遠くの存在」

とでもいえば良いでしょうか。
現実にも親だからと言って必ず子供に愛情を注ぐわけではないですし、理解できるわけでは無い。
逆もあります。
育ててくれたことは感謝するけど、性格や信条が合わない。
でも血縁関係は切っても切れない…。
自分や周りの家庭環境、生き方によっては、猫猫と羅漢の関係の見方が変わってくると思います

羅漢について

羅漢はなかなか理解するのが難しい人物です。
後半で高順が言うように

「人の顔の判別がつかない」

と言うのは文字通りで、相手を駒としか見れなかった。
ただ、羅漢の場合は外見ではなく、本質は見ることができるので、仕事をする上では問題が無かったという人物。
奇行が目立つので変人呼ばわりもされています。

顔が判別できない=男女の区別もつかなかったため、
両親との関係は最悪で、幼少のころ、父親は家庭を放棄し愛人に逃げ、それを追い続ける母親、羅漢に人との付き合い方を教えてくれたのは叔父=羅門(猫猫のおやじ)だけということでした。

羅漢が愛した鳳仙


羅漢は緑青官で一番の妓女、鳳仙に入れ込みます。
笑いもしない彼女との対話は将棋と囲碁のみ。
そんな時が何年も続きましたが、やがて鳳仙は子供を孕んでしまいます。
トップの妓女が子供を孕んだなどあってはならないことですが
鳳仙は子供(猫猫)を出産しました。
そのため鳳仙の見受け話は流れ、緑青館の客は減り、苦しい状態が続きます。
鳳仙も客を取り続け、病に冒されます。

そして羅漢は3年間、緑青館に顔を出しませんでした。
自分の意志ではなく、父親が遊説(諸国遠征のようなもの)させたのですが
不運が重なり、判断を誤り、連絡もできず3年帰れなかった結果、
鳳仙は孤独に猫猫を産んでいた。

自分の家に帰ったとき、大量の文と、最後の文には鳳仙花の小指のかけらと、猫猫の指の先と思われるものが包んであったというのが壮絶でした…。

羅漢は恨まれていた?

猫猫が言う通り
祇女が同意しなければ子を産むことはないので鳳仙は羅漢を恨んではいなかったと思います。が、病に蝕まれ、決死の思いで送った文も返信されない中で精神が病んでいったのでしょう。

気づいた時には遅く、羅漢はひどく後悔し、10年かけて賠償金を払って、猫猫を追い求めていました。

羅漢と猫猫の勝負。愛情と後悔。


猫猫との将棋(シャンチー)勝負。
負ければ毒を飲まなければならない。
負けた方は勝ったほうの願いをきくという条件付きです。

羅漢がわざと負けた時、

「まちがっても娘に毒を飲ませるわけにはいかないからね」

と言っていました。
羅漢なりに猫猫のことは愛していたのかなと思います。
もしかしたら負けて死んでも良いとすら思っていたかもしれません。
猫猫のほうが一枚上手で、羅漢が下戸なことをいいことに、一回飲めば昏倒する酒を盛りました。
猫猫にとっては一発ぶん殴りたい相手なわけで
酒と毒という得意の領域で、羅漢を叩きのめしたという…
どうなることかと思いましたが、なんにせよ戦略勝ちですね。

愛しているから、後悔しているから、といっても

ひっくり返ってしまった水盆は元には戻らない。

いや…もう人生って後悔の連続だから、あの時ああしてれば…ってのはほんと、そうなんですよね…。
どうにもならないことってあるけど、じゃあ自分は100%努力して考えて行動したかっていうと自信がない😔

猫猫の想い。羅漢の想い。


猫猫との勝負に負けて、緑青館に担ぎ込まれた羅漢。
羅漢は、いつ死ぬかもわからない鳳仙を見受けすることで、決着をつけました。

愛の言葉を伝えることは最後までなかったが、行動で示したのかと思います。
個人的にはずっとそうしたかったのだと思います。

猫猫はただ、

母を「莫迦な女」
父には「他の祇女を見受けすれば(妻に取れば)よかったのに」

と言っていました。

心中は書かれていません。

猫猫は緑青館に鳳仙がいることを伝えるために枯れた青い薔薇を託しました。
そして祇女が見受けされる時に、祇女達がするようにドレスを着て外壁で舞いました。
鳳仙という人間に対して見送る気持ちを込めて。

猫猫は今回羅漢と鳳仙に対しての想いは小説でも直接描写されず、ただ行動で示しました。

言葉で伝えることはなくとも
羅漢には羅漢なりの愛情があり
猫猫には猫猫なりの羅漢と鳳仙という人間への思いはあったのでしょう。

十数年も続いた冷たく張り詰めたものが、
月夜の風で遠くへさらわれていくようで、
読んだ後ほっとしました。
いや、ほんと、ほっとしましたよ(T ω T)


探偵もの、恋愛もの、たまにコミカル、様々な人間模様がある薬屋のひとりごと。
心動かされてまいました😂

…今回けっこうカットしたのですが軽く2000字超えてしまいました…(笑)
読んでくださってありがとうございました😊

まだまだ小説は続くので引き続き追いかけていきたいと思います!

追記

さっき最終回見たのでまだ余韻がすごい〜…のでついでにアニメ感想書いておきます。
羅漢と鳳仙が再会した時の鳳仙の昔のあの時の笑顔が出た瞬間泣けました…(T . T)
猫猫の舞が美しかった。演出パワーにやられてしまいました…。
壬氏と猫猫、なんとなくいい雰囲気だったのに、最後は猫猫らしかったですね。
(愛の言葉を囁きそうな顔と声だったのに…笑)
薬屋2期、2025年らしいから楽しみ!😊

書籍情報

アニメ公式サイト


この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?