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「はじめまして」と、本日の収穫。

 誠に遅まきながら、noteを始めてみました。もともと、文章を書くのは好きなのですが、全くもって未知の領域に足を踏み入れてしまった上、卒論や院試等々の関係でどれくらいの頻度で投稿できるか見当もつきません。とにかく始動してみます。どうぞ宜しくお願い致します。

 さて、早速ですが、本日午後は丸々、筑波大学・第69回人文科教育学会大会に参加させて頂いておりました。「『読むこと』と創作」、換言すれば「読み書き指導の連携の可能性」というテーマでシンポジウムが開催されました。「前提としての『読み』と、自己表現としての創作活動との関係」「読書行為の構造化の学習」「作品の構造的強度」「評価の困難さ」がキーワードだったように思います。

 作者と作品、読者の三角形的な関係性と構図を、まずは把握することが必須というお話は、文学研究にも通ずるものがあり、国語教育にも適応できるのかと、嬉しいものがありました。文学研究と国語教育研究とでは、やはり解釈の多義性をどこまで認めるかにおいてかなり異なりますので、度々相容れないことがあるそうです。ただ、今回は文学研究の基本的な手法を文学教育にも活かすことができるという方向性で議論が進められ、むしろその知識を入れた方が、「道徳的読み」に偏らず、揺さぶりをかけることができる、とのことでした。

 作品読解において学習者自らが問いを設定し、それに基づき創作文を執筆する、という活動についてのお話だったのですが、創作したプロットが本文中どの部分から導き出されたものなのかを、生徒学生が自ら考え、交流し合うようなプロセスを踏み、読み/書き手の価値観や思いの影響を見てゆくことが大切、ということが語られていました。俯瞰的に読む観点やスキルに関する知識を付加することによって創作も変化するというお話は、非常に興味深かったです。

日本の創作指導における、「話題の選択機会の絶対的な不足」

 さらに、イリノイ大学名誉教授でいらっしゃる、ティモシー・シャナハン先生は読み書き関連を4つの類型に分類なさったそうです。

①メタ的知識:書き手の意図を考える、読み手に受け取って欲しいメッセージを思考させる

② 話題に関する知識:ある話題や概念に関する話を多く読み、その分だけ多く書く


③ 書き言葉に関する知識:文章構造(物語構造)、語のレベル(語用論等、言語学的な知見を織り込んだ創作)

④ 読み書きを行うための手続き的知識 :予測と質問

 このうち、日本の創作指導においては、学習者が何かの概念に着目し、それに関する資料を多く読むという「②話題に関する知識」に基づいた創作活動が圧倒的に不足しているという驚愕の事実が明かされました。むしろアメリカは②のタイプが多いそうです。日本は一つの教材、すなわち「教科書」しか授業では読まない場合の方が多いことが背景にある、とのことでした。「国語=教科書学習」からの脱却が喫緊の課題であると痛感しました。

 特に小学校低学年〜中学年の創作活動で、作品を外から俯瞰して読み、「読み手/書き手」である自分を意識できるメタ的認識を深化させることが重要なのでは、というお話も私にとっては大きな発見でした。「書くこと」は、自身を「読み物語る」ことでもあるので、こうした取り組みを早くの段階で行うことは、中学・高校の間で真の「論理的・批判的思考力」を身に付ける上でも非常に有意義だと感じました。

 人称によって発生する相違に注意を向けるという視点もありました。三人称は「全知(神の視点、多元視点)」と「一元視点(ある登場人物に注視する語り手)」というように大別され、それぞれによって読み方も異なってきます。「語る現在」における「私」にクローズアップすることで、新たな視点が開拓され、それが「学習のねらい」と繋がる場合もある、というお話でした。

 やはり演劇・朗読は、学習者のメタ認知力を鍛える上で重要なようです。「この言葉にはこんな響きがあったのか」という、言葉への純粋な驚きはもちろん、言葉を紡ぐプロセスを自ら体感することを通して話し言葉への言語認識が深まると仰っていました。「おぉ、"Kinesthetic-Intelligence"と"Linguistic Intelligence"が繋がったぞ!!」と一人喜んでいました(MI理論オタクなのです)。感動する力とメタ認知力は相互に往還する関係性なのかもしれない、それがひいては「感性と論理の統合」にも繋がるのかも...と考えました。後に「音声化と構造的読み」とまとめられました。

 「文学/非文学」という二項対立的な分け方ではなく、多様なジャンルに着目する文学指導が広く行われても良いのでは、というお話は、私自身文学を専攻している以上は肝に銘じたいと実感したところです。ぜひ現代文で取り扱われて欲しい分野です。

まとめ

 以上、拙いレヴューではありましたが、私自身の復習のためにも概括を試みてみました。今回の学会で、やはり国語教育は奥深い!というところと、国語は本来、楽しいものなのだという再確認ができたように思いますので、それだけでも個人的には大満足です。

 今後も「読むこと」の先行研究を学び、より理論的な部分を掘り下げて参りたいと思っております。

 ここまでお読み頂き、誠にありがとうございました。引き続きどうぞ宜しくお願い致します。

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