レインコード クリア後の感想その②【ネタバレあり】

今度こそレインコードの感想! でもその前にダンガンロンパについて知っておいて欲しい。
本作は「ダンガンロンパ製作陣が再結集し贈るダークファンタジー推理アクション」と公式が謳っており、比較しないわけにもいかない。
↓のリンクでダンガンロンパへの熱い思いを綴っているので見てもらえるとありがたい。ダンガンロンパのネタバレを含むので注意!

・超探偵事件簿 レインコードの感想
未プレイの方がこんな辺鄙な感想サイトにたどり着くことなんてないだろう。
プレイ済みのネタバレ承知人しょうちんちゅに届くと信じて、遠回しな作品紹介は省くことにする。
ポイントを①〜③に無理やり分けてみた。が、根っこの部分で問題はつながっているのでこの分類にあまり意味はないかもしれない。


・良くなかった点

①キャラへの愛着と事件の面白さ

私たちの生きる現実には謎や事件が溢れている。
人死なんかなくたって名探偵を呼びたくなることもあるだろう。たとえば冷凍庫に大事に隠していた”オハヨー乳業のBRULEE”を家族のだれかに食べられてしまっただとか!

オハヨー乳業のプレミアムアイス”BRULEE” ちょっぴりお高いがマジでうまい

そんな日常の事件にあたって、アイス強盗犯がどこの馬の骨とも知れぬ他人だったらどうか? 不法侵入で警察に突き出して事件は幕を下ろすんだろう。変な人が家に入り込んだけど家族が無事で良かったねって。(いや、結構怖い体験かもしれない)
たかがアイスの盗み食い程度でことが拗れてしまうのは犯人が家族だからではないだろうか? 勝手知ったる家族が断りもなく大事なアイスを食べてしまうから問題なのだ。
つまり、探偵(プレイヤー)と事件の関係者は親しい間柄でないと盛り上がらないのだ。

話をレインコードに戻そう。
本作は0章〜5章の事件をナゾトキすることになるが、その事件のほとんどで被害者と加害者がスポット出演である。事件を解決するとその後の本編にはほとんど顔を出さない面々ばかり。これじゃあキャラクターへの愛着が湧かないばかりか事件への興味さえ薄れかねない。
先の例でいうと、
 (母)お隣さんが強盗に入られたんですって。なんでもお金には手をつけずにアイスだけ食べて逃げたそうなのよ
 (子)ふーん
 (父)うちもしっかり施錠しなくちゃなあ
これで終わり。奇妙な話だけれどヒューマンドラマは生まれない。

もしくはとんでもなく事件やトリックに工夫が凝らされていれば話は別だ
事件を紐解くだけでドキドキさせられるなら推理ものとしてはオールOK! なんの文句もありはしない。けれどミステリー 作品の行き着く先はキャラ愛だってことを、私はなんとなく感じ取っている
シャーロックホームズなんて最たる例かもしれない。ホームズの作品はよく知らないんだけど、作者が筆を折りたいがために作中でホームズが死ぬ描写をしたら暴動が起きたっていうじゃない。結局、続編で生き返るハメになったなんてさ。
つまり事件のネタを一切のカブりなくやりとげるなんて土台無理じゃん、と。
レインコードも例に漏れず超オモシロ事件は準備できなかったと感じている。証拠集めしてる段階で事件のネタはうっすら透けてたしね。

こんな風につれない感想ばかり書いていると、会って話をしたこともない誰かから文句が聞こえてくる気がしてならない。
4章や5章は事件関係者が身内じゃないか! キャラ愛全開!
たしかにそうだ。そうなんだけどさ、事件にいたるまでの人間模様が薄すぎて感情移入できなくなくない!?
肉まん買ってこいのイメージしかねーよ!

引き合いに出して申し訳ないが先の記事の通り、ダンガンロンパではキャラ愛が自然に育つ仕組みが整っていた。加えて事件を楽しませる要素も成り立っていた。
ダンガンロンパは設定上、①〜⑤の手順を辿る。
 手順①:日常パート。同級生と仲良くなる
 手順②:事件発生
 手順③:時間が不足しがちな中の調査フェーズで証拠を集める
 手順④:みんなで学級裁判しながら足りない情報を補い合う
 手順⑤:事件解決
ここで大事な点は、
・同級生との接触によってキャラ愛が生まれること
・その同級生が加害者or被害者になるため事件に興味が持ちやすいこと
・調査フェーズでは全貌が見えず、学級裁判を通してようやく事件が見通せること
 (”分からない……” が ”分かる!” へ変化する快感、知的好奇心が煽られる)
ダンガンロンパにあって、レインコードにない点がわかってもらえるだろう。

②ないがしろにされたリアル

犯行を成立させる都合の良い道具は許されるだろうか? それが舞台設定にマッチしており違和感なく受け入れられれば構わない、と個人的には思っている。みなさんもそうじゃなかろうか。
ダンガンロンパに登場する超高校級の野球選手 桑田くんはその豪腕と水晶玉を使ってゴミ焼却炉のスイッチを撃ち抜いた。現実的にはいかにプロといえど狙いを外すことだってあるだろうとか。そもそもそんなやついねーよとか。無粋な思考が巡りそうになっても、超高校級がうじゃうじゃいる世界なのでモーマンタイ。

みんな大好き桑田くん アホアホアホアホアホアホ……アポ……?

話を本筋に戻して、”レインコード第2章 暗黒少女の沈黙” にて凶器となった毒薬へ迫っていきたい。ちょっぴり都合が良すぎる気がしてならないのだ。
(これが書きたいためにわざわざnoteを始めたまである)
まずは事件を振り返ってみよう。
舞台はカナイ区唯一の女子高、エーテルア女学院の演劇部。被害者のカレンは舞台練習を利用して毒殺されてしまった。犯人はヨシコ、ワルナ、クラネの3名による共犯。それぞれが凶器の準備、入れ替え、指示を分担した形だ。
犯行の手順やトリックに対して疑問はなかったものの、毒薬の存在はやや鼻につく。
【毒薬の特徴】
 ・有毒性の化学物質で微量でも体内に取り込むと即死する
 ・酸素との反応性が高く開封から30分で無毒化する
 ・毒薬(=薬品)は化学室に保管されている
 ・毒薬は1ガロン(=約4L)と大きく持ち運びが難しい
上記特徴のためにヨシコは練習中に劇場を抜け出し凶器を準備しに行ったわけだが、違和感が2点ある。

違和感①:酸素との反応性が高い薬品は実在するか?
私は化学系の大学院を修了していて、ほんの少しだが危険な薬品を扱った経験がある。そんな素人に毛が生えた程度の知識を持って回答すると、あるにはあるがそんな薬品は販売されない、たぶんってなところ。とはいえ薬品なんて無限に種類があるんだからわかんねえ! 
まずは正直な感想として、こんなに酸素との反応性が高い薬品は使いたくない。開封して使用しなかった分は無毒化=劣化しちゃうので使い物にならなくなってしまうから。残りは廃棄するしかないじゃん! 事件ではワイングラスの縁に塗る程度しか使わなかったので後はお察し。
現実的には薬品の中にインヒビター(阻害剤や安定剤のこと、LOLじゃないよ)が少量加えられていて酸素による劣化を防いでいる。インヒビターは不純物になるので使用直前に除去して使用するのが一般的。
↓の動画はインヒビター除去のイメージ。ラボスケールなら使用前にこんな感じの一工程が必要になる。

違和感②:高校の化学室に4Lサイズの薬品は存在するか?
調査パートにて保安部が凶器の薬品瓶を見つけたとやってくる。ゲームの画像をみるにガロン瓶という4Lサイズの薬品瓶である。

ガロン瓶 持ち運ぶには重く、大きいため目立つ

事件のトリックから考えるに、薬品は未開封だろうから質量は約4kg。女子高生が持ち運ぶにはちと重い。おまけにこんなもんを化学室から演劇部へ運んでいれば絶対に目立つ。目撃者は避けられない。だからこそヨシコは単身化学室へ乗り込んで薬品を失敬した。
違和感①で指摘した通り通常は反応性を低下させるためインヒビターを少量を加えて販売される。が、ここではピュアな薬品が保存されており毒物として利用できる状況だったと仮定するそんな風にゲームにとって理想的な状況だとしても疑問符がつく。
繰り返しになるが酸素との反応性が高いということは、開封した時点で不使用分はおじゃんになる。そんな薬品を4Lサイズで購入するだろうか

WAKOより引用 学生時代はお世話になりました

↑はとある薬品の容量と価格の表である。容量は100mL, 500mL, 3L, 18kgと4種類が展開されている。開封したら1回で使い切る必要があるので、使い方にあわせて容量を選択するわけだが。
化学の授業か部活動か知らないが、高校の活動で一気に4L使う機会なんてあるぅ? よほどのマッドサイエンティストでもいるんかいな。割高になってしまうが100mLか500mLがいいとこやろ……。このあたりが「薬品を瓶ごと運搬できなかった」条件を生かすためだけに都合よく設定された気がしてならない。
ダンガンロンパならモノクマが出てきて「オマエラがコロシアイをできるよう準備しました」とそれっぽい説明してくれるので溜飲が下がるけれど、今回は一般的な女子高やからねえ。普通に考えて女子高に4Lサイズの薬品なんて存在しないでしょうね。

理屈と膏薬は何処へでも付くらしいので無理やり納得する方法を考えてみた。悪徳会社アマテラスが原因ならあり得るかもしれない。
本来は容量バリエーションを準備するべきところを独占化学企業アマテラスは許さなかった。「うちは4Lサイズしか用意してまへんわ。大容量で買うて使わん分は捨てください。教育機関やから言われましてもわてら関係ありゃしまへん。小容量が欲しいんやったら他の企業はんから入手しはったらええどす。ま、うち以外からは手に入らんと思いますけど?www」
あながちやっちゃいそうな企業なのが困るところ。

③その他、細かい点

・探偵特殊能力
本作では探偵特殊能力という異次元の技能で事件を解決に導く設定があった。超高校級の〜、と同じく愉快な設定ではあったが超探偵の能力はゲーム中でうまく生かされていないように感じた設定だけ先行しているような印象があるのよ。
 ・ハララとヴィヴィア:担当した章で披露されたっきり
 ・デスヒコ:複数章で能力が活躍したものの、ユーマの能力共有を使わずとも誰にも効果を発揮できてしまう点はなんだか旨味が少ない
 ・フブキ:活躍の幅が広かったけれど”時戻し”は便利すぎるよ
 ・ユーマ:”能力共有”はシナリオの流れに沿ってはいたものの、彼の元の性格とアンマッチじゃないか? No.1は孤高の存在で人に頼らなかったって話なかったっけ?
ダンガンロンパでも1章で殺されて活躍なしのパターンもあったよ? 偽十神白夜ちゃんがその一例だけど。それでも千尋ちゃんのアルターエゴとか腐川冬子の二面性とか、事件のフックとしても活用しつつ物語の逆転装置としてうまく機能していたじゃん。そういう美しい完成度を体験したかったのだけどハードルが高すぎたのか。

・アクション
全体的にあんまり面白くなかったなあ。
とくに推理デスマッチは弾くだけ、切るだけ。ゲームとしての面白さはほとんど皆無だった。またセリフとの接触でダメージを食らう仕様と早送り機能の相性が悪すぎる。せっかくの早送りが細切れになっちゃってストレス。おまけにロードが長すぎる。あんまりにも長いから待ち時間で冷静になっちゃってゲームへの没頭感が消え失せる。

・未解決の謎
死に神ちゃんがどうなったのか。ユーマやクルミちゃんの行方は? このあたりは続編への伏線にしたい臭がプンプンするので今後に期待するところだけれど。
ハララの性別を頑なに隠している点や、サブクエストで登場した宗教団体?(赤い雨うんぬん言うてる奴ら)はなんだったのか。追加DLCで触れるための布石と信じたい

・良かった点

・レインコードを開発・販売してくれたこと
いろいろ書いてきたがそもそもゲームが開発されなければなにも始まらない。それに文句は言いつつもゲームとしてそこそこおもしろかった。続編製作狙ってるだろうし企画がんばってほしい。レインコード2出たら買うから。

・ストーリーの展開
狭い世界で縮こまってたダンガンロンパとは対照的に、本作は風呂敷の広がる様子が本当によかった。0章 アマテラス急行で超探偵が全員死んだ時は「これだよ、これが欲しかったのさ!」って内心叫んだし、3章でレジスタンスが出てきたときはリアリティというか納得感のようなものが感じられた。あれだけ好き勝手してる企業なんだからレジスタンス居ても不思議じゃないわ、と。

・情報の公平性
キャラクター情報がきちんと開示されていて、様々な関係性を類推できるよう準備してある点は好感触だった。
ユーマとマコトの身長・体重をまったく同じ数値にしてあり、早い段階からなにかあるなと感じることができた。おかげさまでストーリー展開を想像する際に、奥行きをもって楽しめた。

・まとめ

ダンガンロンパに比べると正直物足りないところが多々あった。本意は分からないけれど、新しい客層を捕まえる狙いがあったのかな?
個人的にはトリックを本格派に寄せてもらえると一層楽しめるので、追加DLCや続編には期待しています。あとは超探偵vs超探偵とかね。犯人側にも特殊能力がないと不公平だし、もっと面白くなりそうな匂いするじゃん。

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