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ダダダイアリー、主に映画。2024/1/1ー1/15

1月1日
小津安二郎監督「秋刀魚の味」録画鑑賞。
下品な話を上品に、寂しい話をユーモラスに、貧乏臭さをポップに仕上げる色彩と構図。ぷりぷりしまくる岡田茉莉子のチャーミング。佐田啓二のハンサム。ハッピーエンドの後に訪れる平山の哀しみ。足りないのは原節子なだけな完璧な絵に似た小津劇場最終回。

元日早々の大地震とその後の対応の悪さ、終わらないイスラエルのジェノサイドと、全くおめでたくない幕開け。

1月3日
シネマカリテにて、礒谷渚監督「ポーラーナイト」鑑賞。
余計なことせずにズンズンと前に進んでいくヒリヒリする躍動感は「天使の欲望」に通じるタッチで、クールな廣田朋菜がヤバかった。ホラーでもサスペンスでもなく少女が大人の階段を登るグローアップものに着地しており昔だったら角川映画とかにありそうな作品だった。上映延長してくれたので観れて良かった。

続いてシネマート新宿にて、グレッグ・モットーラ監督「スーパーバッド」鑑賞。
童貞のセンシティブさと馬鹿さのディテール、エマ・ストーンのキュートさとビル・ヘイダーの仕事ぶり、極上のサントラと華麗すぎるラスト。青春の終わりに訪れる一瞬の煌めき。昔レンタルで観た時とは面白さと感動が桁違いだった。やっぱり映画はスクリーンで観ないとダメだなと改めて実感。
こんなに面白かったのか。こんなに感動するのか。これだったら「アドベンチャーランドへようこそ」も再上映して貰いたい。

1月4日
マーク・フィッシャー「K-PUNK 夢想のメソッド─本・映画・ドラマ」読了。同名のblogから本、映画、ドラマについて言及したものをセレクト。平易な言葉で難解に切り込み、マニアックな層に向けながらポピュラリティーを獲得した文体。特にドラマに関しては筆の勢いが良く、マークはテレビっ子だったのかなぁとか思ったりした。

1月5日
ポレポレ東中野で新作2本鑑賞。

ペヤンヌマキ監督「映画○月○日、区長になる女。」
187票差で当選した杉並区長とそれを支えた市民たちのドキュメンタリー。自分たちの国、自分たちの街は自分たちで作るという当たり前の当事者意識によるミニュパリズムの実践とその目に見える成果。杉並革命とも言えるその余波。そして1票のリアル。これは全市民必見の作品。
上映後にはペヤンヌ監督とライターの佐久間裕美子さんによるトーク付き。ニューヨーク在住の佐久間さんのアメリカとの比較や多視点でグローバルな切り口などまだまだ話を聞きたかった。前から気になっていたのでいい加減佐久間さんの本を何か読んでみようと思った。

ペヤンヌマキ監督、佐久間裕美子さん

杉田協士監督「彼方のうた」
何かあったんだろうなという語られることの無い余白とその場だけで立ち上がるホントの空気感、キノコヤを中心に広がるすべての作品と接続された杉田ワンダー。その中で冒頭の指先から存在感全開の小川あん。協士サーガにあんちゃんが新たに加入というトキメキの余韻に浸った。
上映後には杉田監督と小川あんさん登壇。監督の指名によるキャスティングで小川あんありきで作られた作品との事でアヴァンタイトルの絵の強さに納得した。あとパンフレットに収録された筒井武文氏の考察がむちゃくちゃ面白かったのでパンフ購入はマスト。

小川あんさん、杉田監督

1月7日
金原由佳、小林淳一編集「相米慎二という未来」読了。
相米作品に関わった俳優、スタッフの回想と関わらなかった者たちの邂逅により全てが伝説な13本の映画を捉え直す。今すぐ全作品劇場で観直したくなり、相米慎二に会いたくなる。そして余計な事言って怒られたくもなる。相米慎二ラブに満ちた一冊。

久々に新宿のFANTASTIC CABARETに顔を出してきた。皆さんそれぞれに素晴らしい演目を披露したけど、中でも改名したBABY the Rendezvousの
櫻坂→明菜→百恵→薬師丸というセーラー服メドレーな演目の構成力に改めて唸った。って事でにわかギャング団を結成。

BABY the Rendezvousさん、一期崎礼雄さん、Lola Valentineさん、お蝶Miss Ulyssesさん

1月8日
BS「佐野元春プレミアム2023」録画鑑賞。
去年9月の東京国際フォーラムでのライブ収録なんだけど、全曲に歌詞のテロップが入り、全ての楽曲が今この瞬間を歌っているようなタイムリー感にびっくり。真実はきっと君がほしい時いつもそこにあるよ。ライブで観た時よりもむしろリアルに響いた。

KAATにて、ポスト舞踏派 「魔笛」観劇。
1番後ろの席で観たが、最初コンドルズかと思った。菅原小春目当てで来てその点ではまぁ楽しめたけど、そういったダンサー個人のスキル頼りな雑な構成と演出と内輪ウケ。これだけのダンサー揃えてこんな事しか出来ないのかと心底幻滅。全員の頭打ち感だけは伝わってきた。

1月9日
イメフォにて、ガリー・キーン、アンドリュー・マコーネル監督「ガザ 素顔の日常」鑑賞。
2018年時点でのガザの日常を捉えたドキュメンタリー。現在の状況を考えると最初から最後まで冷静に観れなかった。ガザの事を知っていようがいなかろうが、パレスチナ人以外の世界の全ての人はイスラエルの加担者である事を改めて実感。絶対に許さない。

代官山の晴れたら空に豆まいてにて開催の「Oracle Sisters
-special concert ‘Lewis & Julia acoustic show-」へ。
パリを拠点に活動するトリオのルイスとユリアの2人によるアコースティックセットでのフリーライブ。無料だからサクッと終わるかと思ったら休憩挟んだ2部構成でガッツリ演奏。今回の来日で知ったにわかファンだが、アシッドでフォーキーなサウンドとコーラス。気さくなキャラクターにスッカリ大ファンになってその場でCD購入。また来たら絶対にライブ行く。

Oracle Sisters
Juliaさんと
Lewisさんと


1月11日
ヒュートラ渋谷で開催中のA24未公開作品特集にて、ケリー・ライカート監督「ショーイングアップ」鑑賞。
個展を間近に控えた陶芸家のリジー。お湯の出ないアパート、気が散る隣人、問題のある家族。果たして無事に個展を迎えられるのか。猫と鳩とミシェル・ウィリアムズが織りなす正解と出口のないクリエイティブ。ケリーの新たな魅力と挑戦に満ちたライカートベスト。単独で上映して欲しい。

1月13日
イメフォにて、マルティカ・ラミレス・エスコバル監督「レオノールの脳内ヒプナゴジア」鑑賞。頭部裂傷を負った映画監督が脳内再生する自作と現実世界が並行しやがて交錯する。進行に合わせながら次のシーンを考えて行く様な斬新さ。映画のラストシーンを皆で思考しながら見守るフィリピン版「エブエブ」とも言える若き才能による映画の可能性と愛情に満ちた荒唐無稽な娯楽作。上映後には主演のシェイラ・フランシスコさんが登壇。出演のきっかけや映画の制作過程やマルティカ監督とのエピソードなどについて。作品同様とてもチャーミングで気さくな方だった。マルティカ監督も来て欲しかったな。

シェイラ・フランシスコさん
シェイラさんと

その後は麹町に移動。
イスラエル大使館前のデモに参加。
強風と雨としまいには雪が降り出す悪天候だったが、多くの人が集まり声を上げた。寒い中行って良かった。

1月15日
北村匡平、児玉美月「彼女たちのまなざし 日本の女性作家」読了。
女性監督の歴史、16人の作家論、次世代の作家、作品ガイド100で日本の女性作家を網羅。瀬田なつき論、浜野佐知論だけでも読む価値あり、本書からさらなる論客による女性作家論(横浜聡子論とか)の展開が期待できる嚆矢となるような一冊。

下高井戸シネマにて、冨永昌敬監督「白鍵と黒鍵の間に」鑑賞。
南博の超絶エッセイの仰天エピソードの数々をサラッと放り込み3年間の濃縮された時間を一夜の出来事に纏め上げるという離れ技を敢行した94分のフルスウィング。2回目だけど改めてどうかしてるレベルの傑作だと思った。
上映後には冨永監督が登壇。本作の制作に至る経緯や思いを熱く語ってくれた。クリエイターの狂気と情熱と焦燥とが詰まった青春映画でもあるんだなぁと思った。本作はもっともっと高く評価されるべき作品。久々に冨永監督とも話せて良かったけど、母親役で出演の洞口依子さんも来てたのにサイン貰うの忘れた。

冨永昌敬監督
冨永監督
冨永監督と


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