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<無為フェス#5>劇場へ、まちなかへ、そしてBUoYへ 場を読み、映しとるダンサーたち

みなさん
こんにちは、はじめまして。

わたしたち【14.8moon】は、
ダンサー・振付家である望月寛斗のソロプロジェクトのためのカンパニーです。
2018年以降東京を拠点に、Co.山田うんでの活動と並行して自主公演を制作してきました。
とくに近年は多(他)領域で活躍する作り手との集団創作に取り組み、
さまざまな人・場所・もののつなぎ手として、
パフォーマンスに伴うすべての要素が睦み合う関係と環境づくりをめざしています。

14.8moon Facebookページ:http://www.facebook.com/14.8moon/
14.8moon Instagram:https://www.instagram.com/14.8moon/

きょうは14.8moonの制作・プロデュースを担当しているわたし、
冨山 紗瑛が書き手となって、14.8moonが日々どのように活動しているか、
そして今回どのように日々の活動と結びつけて
4月9日にBUoYの「無為解放プロジェクト」に参加させていただいたか
まとめてレポートします。

望月寛斗 hiroto mochizuki:1997年生まれ。14.8moon主宰、ダンサー・振付家。2019年からCo.山田うんに所属。/冨山紗瑛 sae tomiyama:1996年生まれ。アートマネージャー、リサーチャー。14.8moonの制作・プロデュース。

共通言語をさぐる

少しさかのぼって昨年(2021年)の秋、
同い年の友人でダンサーの望月寛斗に声をかけてもらい、
彼の作品づくりに並走することとなりました。

これは直近の自主公演、『花うらないと長い道』の映像。
2021年2月に渋谷公園通りクラシックスで公演。

わたしはもともと大学でアートプロジェクトのマネジメントを専攻しており
ダンスや演劇、パフォーミングアーツを専門にしていたわけではありません。
もちろん観劇に出かけることは頻繁にありましたし、昔から興味もあります。
が、どちらかというと、
おもに「まちなかで、地域の人とともに作品をつくる」ことについて
勉強して、実践してきました。

対して望月は、小さい頃にバレエを始めて以来
ずっと舞台の上で踊ってきた生粋のダンサーです。

そんな望月がわたしに「一緒にやらない?」と
(もしかしたら勇気を出して)声をかけてくれたことの期待に応えなくては!と思い
ひっしのパッチで約半年間、じっくり企画を温めてきました。

まったく異なるバックグラウンドを持つふたりだからこそできることは?
いま抱えている問題意識は?最近面白かった作品は?
話は深夜に及ぶこともしばしば。
共通言語をとにかく探してきました。

そこで出たキーワードが「集団創作」です。

パフォーマンスにおける踊り・ことば・音楽・照明・マネジメントなど
あらゆる要素と人をどのように繋げられるか、
その橋渡しのようなゆるい紐帯をどのようにつくることができるだろうか、と
話せば話すほど、わたしたちの問題意識はどうも深い部分で通底していることが、
やっとわかってきつつあります。

そして今回、BUoYの「無為解放プロジェクト」に参加する機会をいただきました。

共鳴と解放、その抑揚

「無為解放プロジェクト」に参加するにあたって、
14.8moonにBUoYでしかできないことは何かを色々と考えました。

元サウナという文脈を持った環境で上演される作品のために
地下におりていく、重い扉をひらく、
あのえも言われぬ緊張感は
どのように出演者や観客、スタッフ、
そしてパフォーマンスにまつわるすべての見えない要素を奮い立たせるのか、
わたしたちはどのように場所と時間に影響されるのか、
まずは素直に、からだ一つであの空間と対峙してみることにしました。

そして、重きをおいている集団創作をBUoYでも、と
ダンサーの黒田勇をゲストに迎えて
望月とインプロセッションを試みます。

※黒田勇 yu kuroda:1996年生まれ。ダンサー・振付家。2019年よりCo.山田うんに所属。Nullのメンバーとしても活動。

その場で選曲した Third Coast Percussion や Zoot Simsを流しながら、
黒田と望月は壁と呼吸を合わせたり、地面に力を溜めたりするうちに
徐々にからだがBUoYになじんでいくようすを見て取れました。
ふたりは会話をはじめるように、自然と呼応していきます。

空間が、BUoYが、ダンサーのからだを振り付ける

この日の帰り道、わたしは望月と制作をはじめたころに、
渋谷にある小さなギャラリーの下見に出かけたことを思い出しました。
そこもBUoYと同じ地下にあり、
ホームページで公開されている図面からはわからないことを確かめるために、
メールで問い合わせをして、見学をしました。

わたしがものすごく実務的な作業として
コンセントの数や、照明レールのつき方、音の反響、備品のイスなどを確認していたところ、
望月に「何を確かめているの?」と質問すると、
「この場所が踊りたくなる場所かどうか」と即答されたのを覚えています。

天井が何メートルだとか、窓が大きいだとか、
いわゆる「開放的」で「気持ちの良い」空間かどうかではなく
自分がその空間を体に取り込めるかどうかを、
その会場の持つ温度や湿度を確かめに伺ったということに改めて気付かされました。

今考えてみればダンサーの感覚としては当然のエピソードですが、
わたしは当時、上演する空間の持つ引力や情報量について
甘く見積りすぎていたようです。

今回の「無為解放プロジェクト」でも、
同様の風景にわたしはBUoYで立ち会いました。

ダンサーが空間を瞬時に読み解く時、
床の硬さ、光の当たり方、空気の冷たさ、柱の立ち方といった
物理的な要素はもちろんのこと、
自身のフローにどれだけ場をチューニングできるか、という内的で私的な作業が
目に見えるかたちの表現としてあらわれ、さらには他者と交感する
という状況は鮮やかでなりませんでした。

黒田勇の踊りの動機にサウナの浴槽があったり、
自分のからだの影があるようすからもわかる通り、
環境が彼の意識の奥のほうで作用しているのが
ありありとこちらに伝わってきます。

彼自身はセッションの後に
「普段使用する稽古場とは違い、そのままの形で残る銭湯をはじめ、
壁や床この空間から多くの刺激を受けて、よりインスピレーションを得る事ができた」と
話してくれました。

また、望月も
「いつも踊りながら色々と考えてしまうけれど、
この時は無心で空間にフィットするようにだけに集中でき、
空間との対峙の仕方というのを落ち着いて考える時間になった」と語ると同時に
「一緒に踊ってくれた黒田勇は、普段はCo.山田うんにて、
作品や観客を通して身体感覚をリアルタイムで共有しているのに対して
今回はBUoYの独特な空間に影響されながら1対1で身体感覚を共有することができ、
非常にリッチな時間を過ごせた」といいます。

偶然わたしが遭遇してしまった、
普段は作品の外側でおこなわれているこうした工程を
観客のみなさんにもお楽しみいただけるよう、作品づくりにこの時間を繋げていきたいと思います。

今後ともわたしたちを、どうぞよろしくお願いいたします。

(冨山 紗瑛)


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※ BUoYスタッフより※
「無為フェス」詳細については以下の記事をご参照下さい。


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