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雪の日だったからこそ

今日は雪。
こうなることはわかっていたけど、なかなかバスは来ない。
周りの人も寒そうに灰色の空を見上げている。

まだかな。まだかな。
みんな気持ちは一緒。
その間も雪はどんどん空から落ちてくる。

他の行き先のバスは到着するのに、
私が待っている、同じ列のみんなが待っているバスは
なかなか来ない。

遠くが見えなくなるくらい、雪が激しくなってきて、
もうそろそろ寒さを我慢するのも限界に近づいてきたその時、
ぼんやりとバスの行き先の表示が見えてきた。

「あ、やっと来た!」
思わずみんなで声を上げた。

すくんだ肩で急いで乗り込む。
席について、ほっと一息ついていると、
肩にポンポンポンというリズムが伝わってきた。

びっくりして後ろを向くと、私より先にバスを待っていた人が
ハンカチを持って、私のコートの方についた雪を拭いてくれていた。

「このまま雪が解けてしまったら、冷たくなっちゃうでしょう?
こういう日はお互い様ですよ」

ただ一緒にバス待ちの列に並んでいただけなのに、
こんなにやさしくしてもらって、本当にうれしかった。

こんな雪の日だったからこそ、こんな素敵なやり取りができたんだ。
そう思うと、雪の日にちょっと無理して出勤してよかったなと思った。

「ありがとうございました。気をつけて帰ってくださいね」
それくらいしか言えなかったけど、
私より先にバスを降りるその人の背中を見送った。

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