文徒ジャーナル Vol.28

Index------------------------------------------------------
1)日テレがビーグリーに対してTOBを開始
2)社説でも取り上げられた瀬戸内寂聴逝去
3)樋田毅の「彼は早稲田で死んだ」(文藝春秋)が話題だ!
4)マスメディアの「劣化」が酷すぎる
5)匿名記者ツイートは恥ずかしいか?実名記者は偉いのか?
6)文庫版「日本国紀」と幻戯書房「もう一つ上の日本史」
7)四国新聞の「応援」報道の実態
----------------------------------------2021.11.15-11.19 Shuppanjin

1)日テレがビーグリーに対してTOBを開始

日本テレビは電子書籍配信のビーグリーに対して1株1900円で株式公開買い付け(TOB)を開始する。買い付け予定数の上限は151万4900株(所有割合25.43%)で、総額は20億円。買い付け期間は11月15日から12月23日まで。
https://www.ntvhd.co.jp/ir/library/toshokaiji/pdf/20211112.pdf
ビーグリーは、この公開買い付けに賛同し、日本テレビと資本業務提携を締結した。
https://contents.xj-storage.jp/xcontents/AS08121/5f156ced/fca3/44ee/a27d/c80c8f79b81e/140120211111432997.pdf
ビーグリーは「まんが王国」を運営し、また出版社の「ぶんか社」も傘下に収めている。
日本テレビのプレスリリースには次のように記されている。
《日本テレビグループ(以下「当社グループ」)は、アニメ、ドラマ及び映画の製作等のコンテンツ制作力に強みを持ち、テレビ放送事業や動画配信事業のほか、他の映像系コンテンツに係る取り組みとしての映画事業に加え、イベント事業、物品販売事業など幅広い領域でコンテンツのプロデュース能力、並びに経営資産を有しております。
一方でビーグリーグループ(ビーグリー及び連結子会社7社(本日現在)からなる企業グループ。以下同じ。)は、データドリブンな運用を強化しお得感No.1戦略のもとで成長を続ける「まんが王国」を中核としたプラットフォームセグメントと、女性向け漫画ジャンルを得意としデジタルシフトが順調に進捗する総合出版社である株式会社ぶんか社を中核とするコンテンツセグメントにおいて、ファンとコンテンツを感動とともにつなげるために『創る』『選ぶ』『届ける』の3つの価値を提供しています。
そしてコンテンツの価値を高め、メディアミックスを推進することでコンテンツプロデュースカンパニーとしてのプレゼンス確立を目指しています。
当社グループが作品創作の過程に早期から関与することができるような提携先を探索していたところ、2021年2月にビーグリーと、地上波を活用した新たな漫画創作手法として共同企画番組「THE TOKIWA」を実現させるに至り、両社グループの強みを掛け合わせた更なるシナジーが期待できると判断しました。
このように両社グループには得意領域の違いがあり、当社グループがこれまで行ってきたエンターテインメントコンテンツ領域での映像化やその他メディアミックス展開の推進に加えて、ビーグリーとの間で提携関係を構築することで、当該各領域での事業機会の拡大を通じた互恵的成長を遂げられると考えました。資本業務提携契約を通じて両社のリソースを拠出し合い、活用し合うことで、「共同IP(知的財産)開発」「既存IPの利活用の拡大」を行い、コンテンツプロデュースカンパニーとして継続的成長を目指してまいります。》
《当社グループが作品創作の過程に早期から関与することができるような提携先を探索していたところ、2021年2月にビーグリーと、地上波を活用した新たな漫画創作手法として共同企画番組「THE TOKIWA」を実現させるに至り、両社グループの強みを掛け合わせた更なるシナジーが期待できると判断しました。》
https://www.ntv.co.jp/info/pressrelease/20211112.html
「THE TOKIWA」というのは、今年の2月27日から3月20日まで放送された漫画家発掘ドキュメントバラエティー。
https://www.ntv.co.jp/mangaka/
それほど成功したとは思えないのだが、まあ、いずれにしても、TBSが7月にはマンガボックスを合弁子会社化したというように、地上波キイ局にとって、アニメ戦略やドラマ戦略を考えれば、傘下の企業と共同でマンガや小説のようなメタ・コンテンツ(=原作)を開発し、マンガや小説からアニメ、ドラマまで一貫してビジネスをコントロールできるのが理想なのだろう。
しかし、TBSにしても、日本テレビにしても選んだパートナーが最良の選択肢であるとは、私にはとても思えないのである。「まんが王国」程度の作品群からすれば、そう簡単にヒットは望めないのではあるまいか。それほど「出版」は難しいビジネスなのである。例えばフジテレビ傘下の扶桑社はマンガに挑戦してはいるものの結果を出せず今日に至っているのを見れば明らかである。
ただ、テレビ局がマンガでは既存の出版社と勝負にならないことに気がつき、ウェブトゥーンに舵を切ったとすれば、どうなるのだろうか。そういう微かな可能性に賭けられるかどうかである。

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