文徒インフォメーション Vol.30

Index------------------------------------------------------
1)【Book】年間ベストセラー、新書小説は集英社の独擅場
2)【Publisher】広告依存度を下げ、ライト文芸や漫画に真剣に向き合うべきだろう
3)【Advertising】「本を読む」ことをトレンドにできないものか
4)【Digital】デジタル庁のアナログミスはなぜ起きるのか
5)【Magazine】紙がデジタルに対して圧倒的優位なのは付録
6)【Marketing】失敗の「構造」に着目すべしというが
7)【Comic】韓流〝縦スクロール漫画〟が世界を席巻する可能性
8)【TV, Radio, Movie& Music】「裸のラリーズ」海賊音源がサブスクから消えていっている
9)【Journalism】実はマスコミ企業こそパワハラを根絶できてない?
10)【Person】〝資本主義と闘った男〟宇沢弘文がいま売れている
11)【Bookstore】ネットで買った本を受け取る書店は、アマゾンより優位な点があるのか
----------------------------------------2021.11.29-12.3 Shuppanjin

1)【Book】年間ベストセラー、新書小説は集英社の独擅場

◎日販が年間ベストセラーを発表した。総合ランキングは次の通りだ。
(1)人は話し方が9割(すばる舎)(2)スマホ脳(新潮社)(3)推し、燃ゆ(河出書房新社)(4)星ひとみの天星術(幻冬舎)(5)本当の自由を手に入れるお金の大学(朝日新聞出版)(6)52ヘルツのクジラたち(中央公論新社)(7)鬼滅の刃 塗絵帳-蒼-、鬼滅の刃 塗絵帳-紅-(集英社)(8)秘密の法(幸福の科学出版)(9)よけいなひと言を好かれるセリフに変える言いかえ図鑑(サンマーク出版)(10)呪術廻戦 逝く夏と還る秋(集英社)
https://www.nippan.co.jp/ranking/annual/
トーハンも年間ベストセラーを発表した。
(1)秘密の法(幸福の科学出版)(2)スマホ脳(新潮社)(3)推し、燃ゆ(河出書房新社)(4)52ヘルツのクジラたち(中央公論新社)(5)人は話し方が9割(すばる舎)(6)星ひとみの天星術(幻冬舎)(7)本当の自由を手に入れるお金の大学(朝日新聞出版)(8)鬼滅の刃 塗絵帳-蒼-、鬼滅の刃 塗絵帳-紅-(集英社)(9)よけいなひと言を好かれるセリフに変える言いかえ図鑑(サンマーク出版)(10)呪術廻戦 逝く夏と還る秋(集英社)
https://www.tohan.jp/bestsellers/upload_pdf/20211201bestseller_2021y.pdf.pdf
総合では小学館、講談社、KADOKAWAの作品はベスト10にランクインしていない。文庫ベスト10の1位「そして、バトンは渡された」、2位「沈黙のパレード」はともに文藝春秋であった。凄いのは東野圭吾。文庫ベスト10には「沈黙のパレード」のみならず、集英社文庫「マスカレード・ナイト」、角川文庫「魔力の胎動」までランクインしている。
日販の新書フィクションではベスト10のうち集英社が8点、中央公論社が2点。トーハンの新書ノベルスでは集英社が9点、中央公論新社が1点。
いわゆる新書ノンフィクションではベスト10に岩波新書、中公新書、現代新書のランクインはなかった。「老いる意味」は中公新書ラクレである。

◎朝日新聞デジタルは12月1日付で「時代と半生とを刻んだ1万首の軌跡 馬場あき子さんが全歌集を出版」(聞き手・佐々波幸子)を掲載している。馬場は次のように語っている。
《 《軍国の少女のわれが旋盤をまはしつつうたひゐし越後獅子あはれ》
都下の中島飛行機の工場で、旋盤を回していました。戦闘機に取り付ける発動機の台座を作っていたのよ。休憩時間に、長唄の名取になっていた友だちが越後獅子を口三味線で教えてくれて。いまでも歌えますよ。
家族は無事でしたが東京大空襲の翌月、わが家も焼夷弾により全焼しました。
《あんのんと七〇年もあんのんと生きてきぬ九条よさうだつたのだ》
自分は戦後、何をしてきたのか、という自戒を込めた歌です。》
https://digital.asahi.com/articles/ASPCY7J2XPCSUCVL027.html
「馬場あき子全歌集」はKADOKAWAから刊行されている。税込で9900円だ。欲しいなあ。
https://www.kadokawa.co.jp/product/321905000405/
夜蝉一つじじつと鳴いて落ちゆきし奈落の深さわが庭にあり
なんか好きだ。代表作といえば
さくら花幾春かけて老いゆかん身に水流の音ひびくなり

◎「星落ちて、なお」で直木賞を受賞した澤田瞳子が京都新聞大賞を受賞した。
《本日、京都新聞主催・京都新聞大賞を受賞いたしました。
9月の京都市文化芸術きらめき賞、先日の京都府あけぼの賞に引き続き、地元京都から度重なる応援をいただきましたことは本当に心強く、身の引き締まる思いです。関係者の皆様に深く御礼申し上げます。》
https://twitter.com/nono_sansan/status/1464074122208497669

◎世界文化社は、2021年10月に発売した、長 新太の絵本「きつねのぱんとねこのぱん」の重版を決めた。「きつねのぱんとねこのぱん」(作・小沢 正/絵・長 新太)は1973年、 幼稚園・保育園・こども園向けの月刊「ワンダーブック」2月号に掲載されたが、これまで市販化されていなかった。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001211.000009728.html

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デイリー・メールマガジン「文徒」はマスコミ・広告業界の契約法人にクローズドで配信されている。2013年より月〜金のデイリーで発行し続けており、2021年6月で通巻2000号を数えた。出版業界人の間ではスピーチのネタとして用いられることが多く、あまりにも多くの出版人が本誌を引用するせいで「業界全体が〝イマイ社長〟になっちゃったね」などと噂されることも。

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