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あおさ漁に潜入!激しい「あおさしぶき」を浴びる収穫から、出荷までの流れを体験

4月上旬、鹿児島県長島町であおさを養殖している石元淳平さんのところにお邪魔してきました。

普段は触れることのない、未知の海の世界。漁師さんのかっこいい姿に心躍り、ひたすらあおさと向き合い、そのおいしさに舌鼓を打つ……そんな体験をお届けします。

あおさってなあに?

「あおさ漁に行きました!」と言うと、多くは「あおさってなに?」という反応が返ってきます。そして、「どうやって食べるの?」ともよく聞かれるので、最初に基本情報をまとめておきます。

青のりとの違い

(以下、多紀 保彦ほか,2000,食材魚貝大百科 4 海藻類+魚類+海獣類ほか,平凡社より)

あおさは一般的にはアオサ科アオサ属の「アナアオサ」を指しますが、各地ではヒトエグサ類をアオサと呼んでいることも多いようです。
見た目も香りも青のりとよく似ていますが、青のりはアオサ科アオノリ属の「ウスバアオノリ」「スジアオノリ」などを指すことが多く、別の種類の海藻ということになります。

収穫時期

収穫したあおさ

鹿児島県長島町では1月頃から収穫を開始し、4月中旬頃まで漁が行われていました。アオサ漁は春の風物詩ともなっており、旬真っ盛りの時期は「生あおさ」として、乾燥前の状態でも出荷されます。

食べ方

あおさ入り卵焼き

あおさは粉末でなく、薄くてヒラヒラしています。海藻独特の磯の風味は万能調味料と化し、お味噌汁やうどんのトッピング、卵焼き、ポテサラ、天ぷらの衣に混ぜるなど、何に入れてもおいしくなります。

長島特産の赤土じゃがいもとあおさのポテサラ

ちなみに香りの強さは、乾燥あおさを車の中につんでおくと芳香剤として活躍してくれるほどです。

保存方法

生あおさは冷蔵庫にて、1週間ほどなら大丈夫でした。
乾燥あおさは、密閉袋に入れて直射日光を避けて保存。あまり温かいとよろしくないので、冷蔵保存だと安心かもしれません。ただしにおいが移りやすいので、香りが強いものと一緒にするのは要注意です。
いずれにせよどんどん風味は落ちていくので、早めに食べ切るのがおすすめです。

あおさ漁のようす

ここからようやく本題!
あおさはどうやって収穫されるのか、あおさ漁に連れて行ってもらいました。

養殖場へGO

朝6時、日の出前の薄明るい時間。

船の上からおはようございます

胸まであるカッパを着て、船で養殖場に向かうこと10分ほどすると、あおさの養殖網がずらりと並ぶ姿が見えてきました。

まるであおさの田んぼ

網にはびっしりと、緑色に輝くあおさがくっついています。

うつくしい〜

まず、刈り取り隊と網コントロール隊に分かれ、一列ずつ網を巻き上げていきます。刈り取り隊船には有能な「スパットくん」が搭載されていて、瞬時に網とあおさを引き離してくれます。

激しいあおさしぶき

この時、漁師さんの顔にはあおさがばじゃばしゃとふりかかりますが、激しい「あおさしぶき」をものともせずに作業していました(カッコ良すぎる)。

スパットくんが刈り取ります

旬の序盤では、2度摘み、3度摘み……のために、刈り取った網はもう一度海に戻すようですが、今回は最後の漁だったのでそのままお持ち帰りしました。

刈り取り後の網

あおさしぶきの反対側では、うまく網が巻けるようにコントロールをします。そのままだと潮流で流されてしまうので、網をほどよい力加減で引っ張りながら持って、スムーズにできるようにしていました。

コントロール隊(私は滑らないように歩くのに必死で見守り隊)

わたしはここで一体なにをしていたかというと、網コントロール隊の中の、紐外し&ゴミ拾い班です。
いうなれば一番楽で簡単な仕事ですが、血圧計のようにきゅっとしめつけてくる水圧と、石ゴロゴロで安定しない足場で、歩くのすらおどおどしていました。

付着物を取り除く簡単な仕事

縛り付けてある養殖網の紐をほどいて(しかも一番端っこだけ)、網に付着している他の海藻やらを取り除く、ただそれだけなんですが、めちゃくちゃ働いた気分になってしまいました。

さあ帰りましょう

なのでいっそう、海の中を自由自在に動き回る漁師さんがカッコよく見えるのです。

あおさ出荷まで

港に着いたら、フォークリフトにあおさを乗せて、出荷のための準備をします。

フォークリフトの操縦も自由自在な漁師さん

生あおさも乾燥あおさも、まずは「攪拌→ごみ取り→脱水1→脱水2→ほぐす」作業をします。

一番右が攪拌、真ん中がごみ取り、左が脱水1

ごみ取り隊になった私は、泡とともに浮いてくる小さな虫やゴミを、灰汁取りのようなものでひたすらすくい上げました。普段使わない腕の筋肉を使うので、途中からちょっと痛くなってきます。

手を休める間も無く泡わわわ

ごみ取り後は、脱水1です。機械のフィルターを通して脱水されますが、それでもまだびちょびちょ。

のりの佃煮みたい

ここで、脱水2。数台ずらりと並べられた二層式洗濯機の出番です。びちょびちょのあおさをネットに入れ、脱水機能を活用してびちょ、くらいの水っぽさにします。

びちょびちょをネットに入れて
二層式洗濯機で脱水

そうしたらほぐす機械にいれ、乾燥あおさの場合はそのまま平らにならして乾燥機へ。
生あおさの出荷は一度冷凍庫に入れるため、大きな箱に詰めて冷凍庫へ運びます。

どばばばばーっとほぐします

生あおさの袋詰め

袋詰めの際は、冷凍しておいたあおさをもう一度、攪拌〜ほぐす作業までを繰り返します

ほぐされたあおさ

あおさを袋に1kgずつ詰める作業は、専門知識がない素人でも簡単にできます。なので、わたしはひたすらこの作業に没頭していました。
手でほぐしながら、ごみ取りパートでとりきれなかったゴミや虫を、再度取り除きながら袋に詰めていきます。

こういうのを取り除きながら

生あたたかいねちょっとした感覚はなんだか不思議。片手いっぱいにすくいあげて6回分くらい入れると、だいたい1kgになりました。

ひたすら詰める!

量りながらやって、ピタッと賞だったときの快感は半端ありません。
本日の出荷分を詰め終えたら、地面に散らばっているあおさを流して掃除して、終わりです。

各地へ行ってらっしゃい

作業中はあおさのいい香りに包まれ、幸せでした。

網の設置〜収穫までの過程には携わっていないので、私が体験したのはほんの一部ですが(いいとこどりともいう)、それでも出荷されるまでにはこれだけの過程があることを知っていただけたら嬉しいです。

以上、石元淳平さんの作業場よりお届けしました。

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淳平さんは漁師のかたわら、甘くてフルーティな味噌「COCOROMISO」も作っています!
乾燥あおさとの極上味噌汁セットなどもあるので、ぜひこちらからチェックしてみてください〜👇


これでおいしいものを食べます🍴 ありがとうございます!