小噺「パチンコ」

パチンコ

息子
「ただいまー」


「お帰り、マスク外して、
ここに入れてちょうだい、
はい新しいマスク洗っておいたから、
とりあえず、その辺のもの、何も触らないで、消毒して、手洗いして、うがいして、
さあさ、早く着替えて、明日は?」

息子
「明日は、在宅でテレワークやから」


「良かった、あんたが外へ行ったら心配で
外でいろんな人に会ってるから、
絶対人から離れておいてや。
もしも、この家で、誰かが感染したら、
うちにはおじいさん、おばあさん、それにあんたの妹もいるし、どう隔離して生活するか大変やがな」

息子
「ほんまやな おふくろ」


「なんや?」

息子
「一体いつになったら、おさまるのやろな?」


「私なんか、3日に一度、買い物以外はどこにもでてないし、ずっと家の中にいるのも疲れるけど我慢してるねんで、
そやのに、1人我が家で困った人がいるねん」

息子
「親父か」


「そうやねん、いくら言うても、
これは生活習慣やから、言うて聞けへんのよ」

息子
「ほんならまた、パチンコか?」


「そやねん、やめとき言うてんのに、
朝から並んで行って、昼ごはん食べに帰ってきて、また、出かけたんやで、なんぼ言うても聞かへねん」

息子
「今、営業自粛に応じない店は
店の名前を公表する言うてんのと違うのんか」


「そうやねん、
公表した店見て、こんな近い店あったんや、
今日はそこへ行こう、言うて行ったんや」

息子
「何を考えてんねんな!
感染したら、どれだけ怖いのかわからんのか、親父が感染したら 我が家は崩壊するで」


「何回言うても、聞かへんねん。
あんたから、ビシッと言うたって!」

息子
「わかった、とにかく言うこと聞けへんかったら、この家を追い出そう!
今はみんなで力を合わせて、ウイルスに立ち向かわんと、あかん時に、ほんまにあのくそ親父は、家族のこと考えたことあるのか、
親父のためにみんなが、犠牲になるの嫌やで」


「そうやがな、
あっ帰ってきた、頼むで あんた」

息子
「ビシッと、言うたる!」



「ただいまー」

息子
「親父!」


「どないしたんや?和正、怖い顔して」

息子
「やかましい、近所の手前もあるのに、
何を考えてるねん?パチンコ行ってたんやて?」


「そうや、見てくれ、勝って、50枚入りマスク3箱と、消毒液スプレー3本 とってきたで」

息子
「よう、やった」

おわり

#桂文枝 #吉本自宅劇場 #小噺 #創作 #いま私にできること

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