見出し画像

データ分析・活用の事例を分析する:店舗出入口からの流入数

分析屋の下滝です。

本記事のシリーズでは、データ分析・活用だと思われる事例を分析しながら、我々はどのような活動をデータ分析やデータの活用だと呼んでいるのかを考察していきます。

なお、データ分析の各種の枠組みを分析していくという別観点のシリーズは以下を御覧ください。

過去の事例記事の一覧はこちら。

過去の事例分析を整理してまとめた記事はこちら。


事例

今回は、店舗における売場レイアウトの見直しを、顧客の流入データの観点から行った事例を分析します。

具体的には、以下の事例記事を参考にしています。

モレスキンジャパン株式会社の事例で、セーフィーさんのAIカメラを導入によるものです。

今回は、上記の事例より、以下の箇所を分析対象としたいと思います。

まず売場のレイアウトですが、横浜の店舗は出入口が2か所あるので、メインとなる出入口からの流入を想定して売場を計画していました。しかしSafieでデータを取ってみると、2つの出入口を利用するお客様の数は大差ないことが判明したのです。そこで売場のレイアウトを再編し、商品体験スペースの場所も変えたところ、体験してくださるお客様が1.5倍ほどに増えました。

https://safie.jp/casestudy/moleskine/

流れはこうです。
・売場のレイアウトは、メインとなる出入口からの流入を想定をもとに計画していた
・流入データをみてみると想定と異なることが判明した
・売場のレイアウトを再編した
・商品体験スペースの場所も変えた
・体験する客様が1.5倍増えた

ここでのポイントは以下であると考えました。
・想定をもとに計画するしかなかった
・計画して実行もされている
・後に、データにより、その想定があっているのかどうかを確認できた

考える上で難しいと思う点は以下です。
・「想定」は「仮説」か?

なお。上記の事例は、AI-App 人数カウントというオプション機能をもとにしているものです。おそらく、出入口の入店者数は、ある程度集計済みのデータが見られるのではないかと思われます。

プロセスパターンによる表現

分析にあたっては、この事例がどのようなプロセスで構成されているのかに着目します。具体的には、いくつかのプロセスのパターンで構成されると考えます。

プロセスのパターンとしては、現時点は、以下を特定しています。
・集計の動機を生み出すプロセス
集計のプロセス
・調査の動機を生み出すプロセス
・調査のプロセス
・解釈の動機を生み出すプロセス
・解釈のプロセス
・知識を生み出すプロセス
 ・比較のプロセス
  ・非課題抽出プロセス
  ・課題抽出プロセス
・非課題抽出の動機を生み出すプロセス
・機会を探す動機を生み出すプロセス
・機会となる仮説を生み出すプロセス
・機会となる仮説を検証するプロセス
・仮説を生み出すプロセス
 ・存在を期待する仮説を生み出すプロセス
 ・施策の実行結果を期待する仮説を生み出すプロセス
・仮説を検証するプロセス
 ・存在を期待する仮説を検証するプロセス
 ・施策の実行結果を期待する仮説を検証するプロセス
・施策案を生み出すプロセス
・疑問を生み出すプロセス
・疑問に対する仮説を生み出すプロセス
・疑問に対する検証方法を生み出すプロセス
・疑問に対する仮説を検証するプロセス
・施策を生み出すプロセス
・施策案を施策に具体化するプロセス
・施策の仮説を生み出すプロセス
・施策を実行するプロセス
・施策の仮説を検証するプロセス

これらのプロセスパターンの特徴の一つは、「分析」という言葉を使っていない点です。これらプロセスパターンの部分的な組み合わせのいくつかをデータ分析と我々は呼んでいるのではないか、という仮説です。

今回の事例でもこれらのプロセスで表現できるのかを確認していきます。表現できなければ、表現できるプロセスを特定し修正していきます。

事例の表現

分析する事例を再掲します。

まず売場のレイアウトですが、横浜の店舗は出入口が2か所あるので、メインとなる出入口からの流入を想定して売場を計画していました。しかしSafieでデータを取ってみると、2つの出入口を利用するお客様の数は大差ないことが判明したのです。そこで売場のレイアウトを再編し、商品体験スペースの場所も変えたところ、体験してくださるお客様が1.5倍ほどに増えました。

https://safie.jp/casestudy/moleskine/

わかりやすい要素からプロセスで表現していきます。

以下のようなプロセス要素として解釈できると考えました。
集計のプロセス:AI-App 人数カウントによる、メインとなる出入口の入店者数とメインではない出入り口の入店者数を特定の集計期間(たとえば1週間)での集計
・非課題抽出プロセス:2つの出入口を利用するお客様の数は大差ない

ここで「非課題抽出プロセス」は集計結果から、比較をもとにして何らかの知識を得るプロセスです。
 ・比較対象1:メインとなる出入口の入店者数:たとえば100人
 ・比較対象2:メインではない出入口の入店者数:たとえば97人
 ・知識:2つの出入口を利用するお客様の数は大差ない

次に、図の上部の「集計結果」の存在に着目します。集計結果自体は、店舗側の意図とは関係なく、AI-APP人数カウントの機能として得られたものであると考えられます。したがって、店舗として集計結果をどのような目的で見ようとするのかは、店舗としての別のプロセスが発生したはずです。もちろん、集計結果が得られるためには、カメラを設置する必要がありますので、設置の時点で何らかの目的や意図は発生していると考えられます。

店舗視点で目的(の一つ)として考えられるのは、メインとなる出入口からの流入の方が多いと想定していたものが本当なのか確かめたかったというものです。さらにいえば、以下の依存関係も関係してきます。
・想定に基づいて売場レイアウトを計画しており
・さらに商品体験スペースの場所もその売場レイアウトに依存していた
商品体験スペースの場所をどこにするのかは、事例にあるように、体験顧客の数にも影響します。

このプロセスを表現するにあたり、2つの表現の選択肢があるように思いました。
表現1.想定に対する疑問を仮説として設定する:メインとなる出入口からの流入の方が多いという想定は正しいのだろうか
表現2.想定を仮説と設定し直す:メインとなる出入口からの流入の方が多いのではないか

ここで想定と仮説の違い何でしょうか。想定とは、ここでは、以下の決定がされた仮説の一種だと考えました。
・検証できない(と評価した):たとえば、計測手段がない。実際に店舗を開店してからでないと計測ができない。
・検証できるけどしない(と評価した):たとえば、計測にコストがかかる。

以下では、表現1だとして議論を進めます。

表現1をもとにして、以下のようなプロセス要素を追加しました。
想定を生み出すプロセス:メインとなる出入口からの流入の方が多い
・仮説を生み出すプロセス:メインとなる出入口からの流入の方が多いという想定は正しいのだろうか

「想定を生み出すプロセス」は今回新たに特定したプロセスとなります。

先程のプロセスの図の右にこれらの要素を追加しました。

ここで特徴として考えられるのは、「想定を生み出すプロセス」と「仮説を生み出すプロセス」には時間軸として隔たりがあることです。この点に関しては後に議論します。

非課題抽出プロセスには、すでにインプットとしてした集計結果に加えて、新しく仮説がインプットとして渡されるとして表しています。これにより、集計結果から何を読み取るのかの目的が加えられます。

仮説の要素が追加されましたので、仮説検証を行うプロセスも追加します。
・仮説を検証するプロセス:メインとなる出入口からの流入の方が多いという想定は誤っていた

図の下にこの要素を追加しました。

仮説を検証するプロセスは、インプットとして非課題知識と仮説を受け取り、仮説の検証結果をアウトプットします。

事例としては、この後、売場のレイアウトを再編といった作業の記述が続きますが省略します。

今回は以上となります。

考察

以下の考察を行います。
・想定の要素の特徴
・データの役割

想定の要素の特徴

今回、想定の要素がある事例を扱いました。

想定の要素がある場合の特徴は、以下だと考えられます。
1.想定と他の決定との依存性:想定をもとに、何か別の決定が行われている。想定が正しくなければ、その別の決定の妥当性に影響を与える。
 例:出入り口の流入数を想定して、店舗のレイアウトが決定されている

2.想定時の検証困難性:想定は、その想定をする時点では、その想定が正しいのかを確認できるとは限らない。
 例:出入り口の流入数を確認したいが、実際に店舗をオープンしないとわからない。
3.想定後の検証可能性:想定は、特定の条件が揃ったときには、検証可能な想定となっている可能性がある。
 例:実際に店舗をオープンしており、映像カメラを設置し、流入数の計測が行える。

今回の事例のように、データを使うことで想定は仮説として検証でき、想定が誤っていたならば正すことで、その想定に基づいて決定したものを適正化することができます。

適正化に向けては、以下を行う必要があります。
・想定の洗い出し
・洗い出した各想定をデータにより仮説検証できるのかの検討

データの役割

今回の事例はデータ分析なのでしょうか。データ分析の定義自体を模索しているのが本記事の内容ですので、定義自体は扱いませんが、データの役割に関しては、過去の記事では以下のものを挙げていました。
・仮説を確認するため
・仮説をつくるため
・課題を発見・抽出するため(問題点を発見するため)
・施策の検証のため(実験結果の分析のため)
・意思決定のため

これら各項目自体の定義にも曖昧さがありますが、今回の事例がこれらの役割のどれに当てはまりそうなのかを試しとして考えてみます。

仮説を確認するため
今回最も当てはまりそうなのはこれだと思われます。

仮説をつくるため
当てはまりません。データをみて、仮説を作ったわけではありません。

課題を発見・抽出するため(問題点を発見するため)
当てはまりません。課題や問題点を発見したわけではありません。

施策の検証のため(実験結果の分析のため)
当てはまりません。施策を行った結果のデータを見たわけではありません。

意思決定のため
当てはまらないと思われます。意思決定のため、というのは非常に汎用的な言葉であるため、この言葉の意味を明確にする必要があります。ただ、今回、流入数のデータをみて、結果として売り場レイアウトなどのすでに行われていた意思決定を変更した、という捉え方もできます。

プロセスパターンの修正

最後に、プロセスパターンのまとめです。今回の議論をもとに、プロセスのパターンを次のように修正しました(変更点は太字)。
・集計の動機を生み出すプロセス
集計のプロセス
・調査の動機を生み出すプロセス
・調査のプロセス
・解釈の動機を生み出すプロセス
・解釈のプロセス
・知識を生み出すプロセス
 ・比較のプロセス
  ・非課題抽出プロセス
  ・課題抽出プロセス
・非課題抽出の動機を生み出すプロセス
・機会を探す動機を生み出すプロセス
・機会となる仮説を生み出すプロセス
・機会となる仮説を検証するプロセス
・想定を生み出すプロセス
・仮説を生み出すプロセス
 ・存在を期待する仮説を生み出すプロセス
 ・施策の実行結果を期待する仮説を生み出すプロセス
・仮説を検証するプロセス
 ・存在を期待する仮説を検証するプロセス
 ・施策の実行結果を期待する仮説を検証するプロセス
・施策案を生み出すプロセス
・疑問を生み出すプロセス
・疑問に対する仮説を生み出すプロセス
・疑問に対する検証方法を生み出すプロセス
・疑問に対する仮説を検証するプロセス
・施策を生み出すプロセス
・施策案を施策に具体化するプロセス
・施策の仮説を生み出すプロセス
・施策を実行するプロセス
・施策の仮説を検証するプロセス

まとめ

今回は、店舗における映像データの活用例を見ました。店舗のレイアウトは、店舗に出入り口が複数ある場合、それぞれの出入り口における流入数がどれくらいあるのかに影響を受けます。映像データを使うことで、流入数を計測することでき、想定ではなく実測値に基づいて適切な店舗レイアウトを決定することができます。

今回は、「想定を生み出すプロセス」という新しいプロセスを特定しました。想定に基づいて、業務上の様々な決定が行わていると考えられます。想定が適切なのかは、データにより確認することができます。

次回は、今回と同じく、想定の要素が出てくる事例を紹介します。続きはこちら


株式会社分析屋について

ホームページはこちら。

noteでの会社紹介記事はこちら。

専用の採用サイトはこちら。

求人情報はこちら。

【データ分析で日本を豊かに】
分析屋はシステム分野・ライフサイエンス分野・マーケティング分野の知見を生かし、多種多様な分野の企業様のデータ分析のご支援をさせていただいております。 「あなたの問題解決をする」をモットーに、お客様の抱える課題にあわせた解析・分析手法を用いて、問題解決へのお手伝いをいたします!
【マーケティング】
マーケティング戦略上の目的に向けて、各種のデータ統合及び加工ならびにPDCAサイクル運用全般を支援や高度なデータ分析技術により複雑な課題解決に向けての分析サービスを提供いたします。
【システム】
アプリケーション開発やデータベース構築、WEBサイト構築、運用保守業務などお客様の問題やご要望に沿ってご支援いたします。
【ライフサイエンス】
機械学習や各種アルゴリズムなどの解析アルゴリズム開発サービスを提供いたします。過去には医療系のバイタルデータを扱った解析が主でしたが、今後はそれらで培った経験・技術を工業など他の分野の企業様の問題解決にも役立てていく方針です。
【SES】
SESサービスも行っております。