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明治ホールディングス(2269)

こんにちは。


今回は、日本のモンデリーズ(MDLZ)こと(違うか?)、明治ホールディングスを調べてみます。

パッと思いつくだけで、チョコレート、「ブルガリアヨーグルト」、「おいしい牛乳」、「R-1」など有名な商品名が浮かびます。


とはいえ、長期投資対象銘柄として適切か否かは別問題ですから、そのあたりはしっかり見ていこうと思います。



さて、今まで散々、長期投資だの何だのと言っておきながら、どういった基準でどのように見ているかということを言ってこなかったので、そのあたりをご説明させていただいて本論に移ります。
(まー過去記事見たら大体、私の思考のクセは分かると思います。)


細かい説明は抜きで、簡単に申し上げますと、


①事業の継続性、モート、競合の状況
②海外売上高比率及びシェア
③財務及び収益の安定性
④長期潮流
⑤割安感

 の5点に集約されます。

 それでは、これらの基準で、同社を見ていきましょう。
(以下の資料は、断りなき場合、同社HPから引用したものです。)


なお、ここで提供する情報は投資助言や銘柄推奨ではございませんので、当該銘柄への投資をなさる際はご自身の判断にてお願いいたします。


事業内容



こんな感じです。

お恥ずかしい話ですが、医薬品セグメントについては知りませんでした。

ただのお菓子屋さんではありません。
モンデリーズとは全然違うビジネスモデルです。


まず、Meiji Seikaファルマから見てみましょう。

その名のとおり、お薬をつくっている会社のようです。


具体的にはこんな感じ。


抗菌薬、中枢神経系、ワクチン、後発薬がメイン。
 また、グループ会社が作ったインフルエンザのワクチンを販売しているようです。





世界各地で事業展開をしています。
歴史は古く、1950年から抗菌薬の輸出をしているそうです。

この医薬品受託製造がどのくらいの利益を上げているのか気になりますが、後で見ることにしましょう。



さて、医薬品セグメントからもう一社。
KMバイオロジクスです。

国内唯一ということなので高いシェアを保持してそうですね。


ほぼ国家事業のようなものですね。
 やはりただのお菓子屋さんではありません。



次、同社の強みの部分です。

代替製品がないというonly one事業です。
 数多く必要とされているわけではありませんが、なければ困ります。


次、オーファンドラッグについて。

こちらも上記と同様、数多く必要とされている訳ではないが、なければ困るモノです。

ニッチなところを攻めています。



次はメインの株式会社明治です。

主なブランドは以下のとおりです。

一覧をクリックすると全て見ることができますが多すぎるのでスクショは割愛します。


…話は脱線しますが、このお菓子、知ってますか?
 私は子供の頃から目にしていますが、西日本限定だったことを今知りました。笑



明治グループ2026ビジョン及び2023中期経営計画


こちらをご覧ください。

明治グループ2026ビジョンにおいて、現在は第2ステージに位置しています。


 ここでは、「明治ROESG経営」を掲げています。
 ROE(自己資本利益率)とESG指標を掛けて、「明治らしさ」を足したものとのこと。


目標値としては、

 ①営業利益成長率が年平均1桁台半ば以上
 (はっきりせい)

 ②海外売上高比率20%
 (現状20%ないわけですから、国内比率高いですね。)

 ③ROE10%以上
 (ROESGと言うてるくらいやし、このくらいの数字はほしいところ。)

ROESG。キャッチーではある
ESG指標。内容はさっぱりわからん。



各セグメントについて見てみましょう。

中国市場に力を入れていることがわかります。
割合(%)が未記載の不親切なグラフ


食品セグメントのメインはヨーグルト・チーズです。
 ぱっと見で4分の1くらいを占めています。

 海外は…見た感じ10%なさそうです。


以下は主力品の国内シェアです。
国内では強いです。


メインのヨーグルトについて見てみましょう。

ヨーグルトの国内市場規模は緩やかな減少傾向が見て取れます。
 これが激しく減少していないのは、健康志向食品としてのヨーグルトが、(一般的に)老若男女に支持されている製品であるということが大きいと思います。



んーなんというか…「世界トップクラスの乳酸菌研究」の基盤があるのに、海外の消費者にリーチできていないのはなんだかもったいない感じがしますね。


次、医薬品セグメントです。

こちらも食品同様、国内メイン。


国内医薬品で約半分を占めています。
 海外医薬品は4分の1ないくらいです。


海外の医薬品需要の波に乗れるかが今後の課題

まとめると、医薬品受託製造とワクチンに力を入れるようですね。

 (無断転載を禁じる旨の記述がありましたのでスクショは貼れませんが、インフルエンザワクチンの国内シェアは29%で1位、抗菌剤のメイアクトは21.5%で1位です。)


CDMOは富士フイルムHD(4901)も力を入れていましたね。(国内初のバイオCDMO拠点の整備等)→過去記事参照

 ということはCMO/CDMOはその業界におけるトレンドなんだなと。


先程の、「海外展開の強化」の部分では中国のことしか書いていませんでしたが、食品セグメントの海外売上高比率を10%以上とするため、以下のような取り組みをするようです。


まずは中国から。

中国でもプロテイン市場は成長中



次に東南アジア。

アジアの成長率半端ないです



次、米国。

 老舗ビスケットメーカーを子会社化し、そのチャネルでローカルスーパーに進出するようです。


次、その他のエリアです。


実際のところ、これらの記述だけでは海外売上高が継続的に増加するストーリーを描くのは難しいですね。

 どのようにして現地の競合他社に勝つのかが見えにくいです。

 また、食品セグメントの海外売上高比率10%を目指す方針のようですが、それはつまり、市場の小さい日本9割に中国・北米・中国除くアジア諸国1割という意味ですから、海外売上高比率10%を達成したところで、各国それぞれどれくらいのシェアを獲れるのかというのは程度が知れています。

 とはいえ、10%というのもあくまでプロセスであって、最終的な目標ではないでしょうから、まずここは達成してほしいところです。



知的財産戦略


キッコーマン(2801)の時にも触れたように、優良企業は知財戦略もしっかりしています。

 明治の知財について見ていきましょう。

お菓子以外は強い


 お菓子以外のカテゴリーは、保有特許件数が多く、さらに一件あたりのパテントスコアも高いです。
 いいもの持ってるんだから海外展開をギャンギャンに加速させればいいと思うんですけどね。


確かに、お菓子を含む食品系の商標は個性的なものが多いですね。
 特に明治の場合は、パッといくつかの商品名が浮かんでくるほどですから、同社の商標の強さを認識させられます。



商標権のコラボについては、まあまあ聞く話ではありますね。色んな会社がやっていますので同社に限った戦略ではありません。

少し古い記事ですがご覧ください。

出典 namae.co.jp
出典 namae.co.jp
出典 namae.co.jp


そうなんです、結構あるんです。



では質問です。
あなたが明治の広報担当だったらどんなコラボを考えますか?


チョコ、牛乳、ヨーグルト、アイス…
売れてはいます。
 売れてはいるんだけども、カルピスやネクター、ガリガリ君ほどエッジが効いた商品ではないですよね。

 さて難しいぞ。。


 答え知りたいですか?
 後の資料で出てきますので今しばらくお待ちください。

 考えるヒントをお出しします。

私も含め、同社の商標コラボについて考える際、同じカテゴリ同士でのコラボを無意識のうちに考えてはいませんでしたか?

食×食 のような。

その発想から解き放たれたら新たな世界が見えるかもしれません。
(あ、私は思いつかなかったクチですので偉そうなことは言えませんが…)


一旦話を戻します。

ブルガリアヨーグルトとかがいい例


食品カテゴリでは特に、「迷ったらこれ買っとけ」的な消費になるのではないかと思います。

 食べたことのない新商品よりも長年親しんだ商標の商品を選ぶことはなんら不自然ではありません。


以下では、商品と商標について、2つの型を用いて説明されています。

例えこれらがシルエットで出てきても正解できる自信ある(たぶん)




さて、ここで先程の答え合わせです。

食べ物とのコラボではなく、ファッションというかおしゃれアイコンというか…
 モノではないところとのコラボでした。

 賢いですね。
私のような平凡なサラリーマンには思いもつきません。


統合報告書

ここからは2022統合報告書から資料を抜粋して見ていきたいと思います。


まず、同社の情報開示についての記載です。

 何が、どこで見れるのかがよくまとめられた分かりやすいページです。
 親切ですね。好感度上がります笑



グループ会社と従業員数です。

グループ従業員が全世界で約17,000人、うち日本が約1,1000人とのことですから、国内のウェイトが高いです。

 また、海外売上高比率は食品セグメントは6.4%、医薬品セグメントは21.5%です。


連結でどのくらいなのか気になりますが書いていません。
冒頭で紹介した円グラフにも数値の記載はありませんでした。(見た感じ、連結で10%ないくらいか?)

医薬品セグメントで21%あるといっても売上高のほとんどは食品によるものですから(冒頭の中計資料中の棒グラフより、2022年度売上高において、食品8,656億円に対し医薬品1,972億円)、食品セグメントの数値に引っ張られます。

 …うーん、あまりこのあたりに触れられたくないのかなという感じがしますね。



次に進行中の新たな取り組みについて。


食品事業における同社の課題は、「市場の需要を喚起する新商品の提案」であるとしています。



また、グローバル展開については、2023中計期間はまだ基盤構築の段階であるようです。

 長いこと国内中心でやってきて、近年やっと海外展開に舵を切りだしたというところでしょうか。

 上記の文中に「国内食品市場縮小への対応が重点方針」と書かれていますが、そういったトレンドは今に始まったことではありませんのでもう少し早い時期に対応してほしかったなという思いはあります。


次に財務面についてです。

ROICによる経営管理とは、管理者層や現場の従業員も、自らの業務がROICのどの要素に関係しているかを理解させ、事業単位ごとのROICとその構成要素の取組みの変化を観測しフィードバックするサイクルのようです。

 また、国際会計基準IFRSを導入し、グローバルな土俵で戦う意識を持たせるとのこと。

海外売上高比率が10%以下とのことですから、これからが勝負ですね。



 そういえば、この前アサヒグループHD(2502)のCEOインタビューを観たのですが、アサヒも2010年頃には海外売上高比率が10%台(確か)だったみたいで、そこからグローバル化に舵を切り、海外進出やM&Aを加速させました。

 「M&Aで時間を買ったわけです。」と仰っていました。

 この前の私の記事でも書いたとおり、事業利益のうち、国際事業が占める割合は64.5%ですから、10年ちょいで大きくグローバル化が進んだことになります。


アサヒが歩んだ道はもちろん平坦な道ではなかったとは思われますが、明治HDも本気でグローバル化に注力し、成功すれば、長い目で見ればアサヒ並みのグローバル企業に化ける世界線もあり得る訳で…

 そうなるのか、なれないのかについて、どう判断するかが、この企業に投資するべきか否かの(私なりの)答えになりそうです。


その判断を下す上での材料を探すのだという意識でここからは見ていきたいと思います。



事業の選択と集中について。

医薬品セグメントは農薬事業を譲渡してヒト用ワクチン事業に集中。
 食品セグメントは物流子会社を譲渡しています。

雑な言い方をすれば、シナジーが限定的な事業は切り、成長期待の高い事業に資本を投下する経営方針のようです。


そのために、売上を伸ばし、政策保有株式の簿価3割分の縮減を目指すとのこと。
 もちろん株主還元も手を抜かず、配当性向40%を目指して引き上げ中であると。



次に、メインの食品セグメントの事業戦略を見てみます。

海外売上高比率の低さや海外進出の遅さについては認識されているようですね。

 海外展開の中心的役割を担うのが中国事業です。
現地会社の権限を強め、スピード感を持ってマネジメントできる体制を整えています。

また、業務用食品の中国進出も視野に入れているそうです。


 この会社の海外展開の肝は中国市場ですから、そこをどう考えるかが、同社に投資するか否かの分かれ目となります。

つまり、明治の持つ商品群が中国で受け入れられ、マーケットシェアを獲れるのかどうなのかということです。

 さらに分解すると、
 中国での、乳製品や菓子の市場成熟度や外資の参入具合、明治のブランドイメージ施策などについて考える必要がありそうです。


少し調べてみるとこんなのがありました。
 参考になるかはわかりませんが…

出典 global-biz.net
(以下4枚同じ)

チョコレートについても調べてみましたが、中国では国内産のチョコレートよりも海外ブランド(or海外の現地ブランド)の製品の方が価格は高いけど人気らしいです。

(中国に行ったことある人いましたらコメント頂けたらありがたいです。)


海外進出と言ってもいろいろと方法がありますが、明治はあくまで正攻法で自社製品を売り込む戦略のようですね。

 自社製品のプレミアム戦略や、現地で大きなシェアを持つ企業をM&Aして時間を買ったりするアサヒとは対照的です。
(悪口ではありません。)


さて、話を戻します。

医薬品事業のキーワードは「経済安全保障」と「感染症対策」の二本立てです。


必須医薬品であるペニシリン系抗菌剤の原料は現在のところ中国頼みであり、これを国内製造にシフトさせる国の方針に従い、岐阜工場で原料の生産体制の確立に取り組んでいます。


食品は中国市場を目指し、一方、抗菌剤原料は中国に頼らない体制をつくる…


なんだかニデック(日本電産)に似てますね。

eアクスルは中国製EVに搭載されることによる爆発的普及を狙いつつ、一方で中国依存が強い希土類(レアアース)を使わずして造る研究をするなど、一見すると相反しているように思える政策を実施しています。


そのような強かさが求められている時代なのかもしれませんね。


話を戻します。

もう一つのキーワードである感染症対策については詳しい説明は不要でしょう。

 新たな感染症が出現した場合に備えて、ワクチン開発のノウハウを蓄積させることが目的です。



2022年度通期決算

ここからは、2022年度の通期決算資料を見ていきたいと思います。


まず、通期の決算ハイライトです。

売上高は増収ですが、営業利益は大きく減益。

 医薬品は大幅増益らしいので、比率の高い食品が大きく足を引っ張っていることになります。

一体何が起こったのでしょうか。
(次の資料に掲載されています)

また、当期純利益も前期比マイナス20%と大きく落ち込んでいますので、EPS(一株あたり利益)とROE(自己資本利益率)も下がっています。



食品事業の詳細を見てみましょう。

原材料コストが爆上がりしています。
これが原因です。

 あと、価格改定効果に比べ、容量変更によるプラス効果って限定的なんですね。

 海外では容量変更でステルス値上げみたいなことやるのかどうかわかりませんが、これだけしか効果出ないのなら、印象悪くなったり評判落ちるリスクの方がよっぽど大きいような気がしますね。

すみません、ただの感想です。


はい、次は医薬品セグメント。

薬価改定やその他の費用でのマイナス分を売上増や構造改革による費用減少分で押し返しています。
 営業利益が前期比プラス16.4%はなかなかすごいのですが、いかんせん割合が低いので連結の当期純利益で大きくマイナスが出るという…。


次に2023年度の連結での計画です。

営業利益は全てのセグメントで前期比プラス予想。
 しかしながら前期での研究所跡地売却益計上の反動により当期純利益はマイナス予想。

まぁ、ここは仕方がない部分です。



食品セグメントの営業利益の推移を表したグラフです。

長期で見ると、営業利益は2020年がピークでそれ以降は大きく下げています。
 20中計の3年間と現中計の3年間を比べてみると、原価アップと売上減は半端ないし、その他でも大きくマイナスですからまあそうなるよねという感じです。

 この会社に限らず、食品セグメントにおける原材料費の高騰はなかなか問題なんだなと感じます。
(キッコーマンもなかなか大変そうでした。)


医薬品はどうでしょう。

薬価改定でなかなかのマイナスが出ていますが売上増が寄与し営業利益は増益です。

 今後は成長を加速させるフェーズとのことですから、これからも調子は良さそうです。



次に、食品セグメントの施策について。


次に海外事業の成長施策について。

地域別売上高を見て驚きました。
 中国がメインかと思いきや、欧米がメインです。
 2023年予測を見ると中国と欧米の差が縮まっています。

 中国に注力することによる成長と、米国における価格改定のプラス影響で売上高アップが見込まれています。

 食品セクターに限らず、モノを売る日本企業にとって海外は値上げしやすいですから、原材料費高騰のリスクを低減できます。

  一方で、日本はインフレが定着してきたとはいえ、それ以上の長い期間がデフレでしたので、デフレマインドはまだまだ払拭されず、値上げ→客離れのリスクは常に付きまといます。

 (20円の値上げに消費者は敏感に反応するとスシロー(3563)のCEOは仰っていました。)

 こういったこともあって、国内メインの企業よりもグローバル企業の方がダイナミックなプライシングで勝負できます。
(要するに、長期投資対象として適切であると私は判断するわけです。)


次に設備投資と株主還元について。

2023年度の設備投資は海外事業関連がメインです。
海外事業をガンガンやってもらいたいですね。

一方、株主還元としては、配当性向が50%を超える計画になっていますが、あくまで方針は40%までの段階的引き上げと記載されています。


ここからは食品の事業概況です。

今まで見ていただいたとおり、海外は調子良さそうですが、国内が弱いです。


医薬品はどうでしょう。

ヒト用ワクチン事業のマイナスが目立ちますがインフルワクチンの返品額の増加によるものです。

そういえば多くの方がマスクやら消毒やらしっかりしてたおかげで昨年はインフルが流行りませんでしたね。



ここからは収益と財務について見ていきましょう。 

売上高営業利益率・売上高経常利益率はともに7%です。
 営業外収益と営業外費用にあまり差がなかったためこのような結果となりました。

 また、今期は政策保有株の売却等による特別利益が計上されています。
 前述したとおり、簿価比にして3割を売却する方針のようですから、来期も同様に計上されると考えられます。


次に財政状態です。

通期での安全性分析を行います。

 流動比率は177%です。
 短期的には問題ありません。

 固定比率は100%です。
 株主資産と固定資産(工場etc)がほぼ同じです。
 なお、固定長期適合率は85%です。

長期的安全性は高いとは言えません。


負債比率は58%です。
 自己資本額の6割近くの負債があることになります。



次、表中にあるとおり、自己資本比率は62.7%です。
高い方だと思います。

 統合報告書において、キャッシュを創出し、財政規律の維持と、成長期待の高い事業に集中的に資本投下する旨が記載されておりましたのでその方針に沿ったものだと思われます。


自己資本比率の高さはわかりました。
ではCFはどうでしょう。

営業CFを見れば稼ぐ力を判断できますし、
フリーCFは事業への資本投下量を左右します。

出典 SBI証券



営業CFは緩やかに伸びていますが、23年3月期は減少しています。

投資CFは22年のマイナス幅が減少しており、それに伴って財務CFのマイナス幅が拡大しています。


つまり、(グラフから読み取ることのできる範囲においては)2019年から3年間は投資にお金を使い、2022年に多額の借入金の返済をしていることになります。


フリーCFは2022年から大きく増加しています。
財政規律の適正化に向けて進捗がみられたと考えていいと思います。



長期的分析


ここからは、irbank様の資料を引用して、長期でこの会社を見ていきましょう。


収益性分析を見てみます。

 利益率は全項目で近年増加傾向です。
いい流れです。


次は効率性。

ROE、ROAは長期で伸びています。
売上高販管費率は下落傾向ですから効率性が上がっています。


 総資産回転率とは、企業の総資産額が、1年に何回売上高という形で回転したのかを示す数値です。

 直近2年は1を下回っていますから、売上が下がっているか、売上に貢献しない資産があるかのどちらかが原因です。

ここで利益率の表に戻っていただくと、粗利率がここ2年減少していることが確認できますから、総資産回転率の減少は売上減によるものだと思われます。


次に短期の安全性。

流動比率、当座比率ともに長期で増加傾向です。

 営業CF対流動負債(一年以内に返済するべき短期の負債)比率は長期で増加傾向ですから、流動負債に対して営業CF(本業でのもうけによるキャッシュ)が増加しているということです。

 また、有利子負債月商倍率は長期で減少傾向ですから、負債に対して月商の割合が高くなっていることがわかります。


短期的安全性は良好です。


次に長期的な安全性について。

固定比率、固定長期適合率は長期で減少傾向。
先程、単年で見ると高いなと感じましたが、
長期で見ると印象が変わりますね。

 自己資本比率も増加傾向。

負債資本倍率(負債総額÷自己資本)は減少傾向で、
営業CF対有利子負債倍率(営業CF÷有利子負債)は増加傾向ですから、短期的安全性のときと同様、長期的安全性も良好です。

先程から見ていますと、長期で財務指標がどんどん良くなっている様が読み取れますね。

 この会社の印象が私の中で変わりつつあります。


次、生産性を見てみます。

一人当たり売上高は長期で減少傾向ですが、他の4項目は増加しています。

 従業員の数は以下のとおりです。

従業員数は長期で増加傾向。
なのに、一人当たりの利益も増加傾向。

つまり、生産性が上がっているということです。


次に価値算定です。

あくまで想定株価ですが、足元では割安、短中期では割高のようです。


次に株式指標。

PERは減少傾向。
PBRは1を超えていますが、低いです。

PSR(時価総額÷売上高)は減少傾向ですので、売上高の割合が増えています。


PERとPSRの傾向を考えると、
割高な株価水準が適正値に戻りつつあると考えることができるのではないでしょうか。

さらにPBRはここ5年は減少傾向です。

適正水準に株価は戻り、それに比して純資産は増加(≒財政規律が良化)したわけですから、当然PBRは減少します。

 つながってきましたね。



EPSとBPSの推移を見てみます。

EPS、BPSともに長期で増加傾向。
見ていて気持ちがいいですね。



次に株主還元です。

過去13年において、減配は2017年の一度のみ。あとは増配です。


 一応優待(自社商品詰め合わせパック)もありますがここでは割愛します。

 ちなみに、優待品は、株主が希望すれば福祉施設へ寄附することも可能です。
優待品を受け取った福祉施設の子どもたちの手紙もHPで公開されていますので一読されることをお勧めします。)


配当利回りの推移から。

高配当ではありませんが、低くもない。
配当原資はまだまだ余裕ありそう。
2017年から方針が変わったかのように株主還元に積極的に…


最後にチャート。(2023年6月28日終値)

短期と長期。
ガツンと下げていますが、株式分割した分が反映されてないためこのような形になっています。対応はよ。

出典 iPhone株価アプリ
出典 iPhone株価アプリ


株価のピークは2016年の7月です。
そこからジリジリ安のところ、今年株式分割。

短期的には、分割以降大きく買われることはなく、どちらかというと日本株買いの波に乗り遅れている印象です。

 高すぎることはないので、端株ならまあいつでもエントリーできるかなくらいの感じです。


結論


私がこの会社に対し積極的になれなかった理由として、海外売上高比率の低さ、そして今後の海外展開における成長ストーリーが見えにくいと感じたことによるものが大きいです。

しかも統合報告書では中国メインで頑張る的なことが書いてある。

 個人的な意見ですが、中国比率を高めることに対し、ポジティブな見方はできません。

 確かに、仮に有事が発生すれば、サプライチェーンの混乱及びその連鎖により、日本も経済的には無傷ではいられないと思います。
 だったら中国市場のウェイトが高かろうが日本のウェイトが高かろうが大差ないだろうという意見もごもっともです。

 ですが、やはり中国重視というのはリスク管理の面からあまりポジティブには考えられないのです。


その一方で、同社の売上高は中国依存というわけではなく、欧米や東南アジアもそれなりの比率を占めていますから、現状では問題視するほどではないと考えます。


一旦まとめますと、今後同社が成長するためには海外売上高の増加は必須であり、中国だけでなく、他の海外地域の成長性について考え、または経過を観察する必要があると私は考えます。


 医薬品事業は、国内医薬品が売上高の半分を占めており、半ば公益事業のように感じられます。(売上高に占める海外比率は20〜25%程度)

 売上高や利益はしっかり伸びています。

公益事業のような性格を持っているので、事業自体はそこまでの爆発力はないでしょうけど、
ここでしかつくれないonly one製品がありますし、事業規模はこれから成長していく可能性が高いと考えます。


明治ホールディングスの今後の方針としては、財務規律の適正化と海外事業の拡充、成長事業における選択と集中がメインであると私には読めました。

 しっかりとした数値目標も挙げておられますから、このあたりの姿勢は問題ないと思います。


さて、財務や収益などの数字に目を向けますと、足元はやや軟調ながらも長期では上昇傾向であり、問題ありません。個人的にはむしろ美しいぐらいだなと感じています。

 株主還元も問題ありません。


株価ですが、足元の業績を反映してか軟調な中、3月31日に2:1の株式分割がなされました。

4月以降、他の日本株が上昇する中、出遅れている感は否めません。
 ですが、日本の主要株の買いが一巡すれば、出遅れ銘柄の見直し買いが入る可能性はあります。

(自社ブランドの強さ、食品の栄養価などの本質的な中身、財務の健全性など、いいもの持ってる企業だと思いますし。)

ただ、そのいいものを世界にもっと広げるために、何を、どのように、いつまでにやるのか。
 そこをPDCA回しながらやってる最中なのかなと個人的には思っています。


では、今回はこのくらいで。

お疲れさまでした。


あざした。

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