隣国の少女
今は全然独りが寂しいなんて思わない
ずっと抱えてきた寂しさが嘘みたいになくなったんだ
ただ宇宙のリズムが時々 俺の小ささを浮き出して
虚勢だらけの無力な 赤裸々な俺を映し出してしまう
”あきらめたら駄目”と”あきらめなきゃ駄目”
が自分の存在価値の中でいったりきたりする
だから今夜は何もかもが全部 どーでもよくなったりする
「お兄さんわたしとどですか」
「いや 間に合ってるよ」
こんな目立つ街頭で体を売る隣国少女たちは
きっと生きるために必死なのかもしれない
9月 僕はどうやったら死ねるかばかりを考えていた
10月僕はどうやったら生きのびられるかを考えはじめていた
片言の隣国語と英語と日本語を混ぜながら伝えてみる。
「そっちはいらないけど、焼肉でも食べないか?一人では行きにくいんだ」
「いいよ お腹すいてる。でもワタシお金使えないね」
「いいんだ 故郷の話を聞かせてよ」
子供のように笑う少女が少しだけ僕の失った人たちとかぶった
まだきっと絶望している まだきっと誰の事も信じてなんかいない だけど
11月 僕は1年ぶりに何かを少しとりもどした気がする
(2008年11月)
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