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見るなら今!なぜトランプはトランプになったのか『アプレンティス:ドナルド・トランプの創り方』【映画レビュー】

★★★★☆
鑑賞日:1月23日
劇 場:伏見ミリオン座
監 督:アリ・アッバシ
出 演:セバスチャン・スタン


個人的に大嫌いなドナルド・トランプを、私の大好きな俳優の1人であるセバスチャン・スタンが演じるというアンビバレンス。

本作の主人公は、1月20日に返り咲きで第47代大統領に就任したばかり。
見るなら今しかない。


1980年代。気弱で繊細な若き実業家ドナルド・トランプは、不動産業を営む父の会社が政府に訴えられ破産寸前まで追い込まれていた。
そんな中、トランプは政財界の実力者が集まる高級クラブで、悪名高き弁護士ロイ・コーンと出会う。勝つためには手段を選ばない冷酷な男として知られるコーンは意外にもトランプを気に入り、「勝つための3つのルール」を伝授。
コーンによって服装から生き方まで洗練された人物に仕立てあげられたトランプは数々の大事業を成功させるが、やがてコーンの想像をはるかに超える怪物へと変貌していく。

映画.comより引用


予告を見る限り、セバスチャン・スタンはあまり本人に似ていないな、と思っていたが、実際に通して見てみるとめちゃくちゃ似ている。
徐々に徐々に我々が知るところの、あのドナルド・トランプになっていく。独特の仕草や表情も含めて、終盤はドキュメンタリーかと錯覚してしまうくらいだ。


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セバスチャン・スタン演じるドナルド・トランプ


父親が経営する不動産会社で、しがない仕事をこなし悪戦苦闘する若きトランプ。賃貸契約者に対する人種差別で政府に訴えられピンチに陥るトランプが縋ったのが、曰くつきの敏腕悪徳弁護士ロイ・コーン。


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ジェレミー・ストロング演じる弁護士ロイ・コーン


ロイは自身が定めた三箇条ルールの通り、ひたすらストロングスタイルで強くあろうとする。自分の非を認めることなく、相手の弱みを見つけ執拗に攻撃をする。

相手の弱みにつけ込むと言うことは、裏を返せば自分の弱みを相手に見せてはいけないと言うことでもある。

だから、ゲイにも関わらず同性愛者を攻撃する。
エイズに感染しても認めない。


経験を積み、成功を重ねることで、トランプはトランプになっていく。
自信満々でニヤリと笑うトランプ。
態度も図体もデカくなる。

逆にトランプが恐れていた人物たちは衰えていく。

かつて強権的だった父親は歳を取り認知症となり見る影もない。
師と仰いだロイは、ヨボヨボに痩せ細り、覇気のない姿で、焦点の定まらない虚ろな目をしている。

強者と弱者。
勝つか負けるか。
殺すか殺されるか。

金、権力、裁判結果、表面的で白黒がはっきりとした価値観。

この映画はトランプをむやみやたらに礼賛する作品でもなければ、必要以上に彼を悪く描く訳でもない。多少の演出はあるにしても、立場はフェアだ。

百歩譲って、このような傲慢不遜な人物が存在してもいいのかもしれない。しかしながら、このような人間が超大国の大統領を2回も務めてしまうという事実。

選挙結果によっては受け止め方が異なっていたかもしれないということも含め、2025年の今だからこそ見るべき1本。

(text by President TRM)


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