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サーガの新たなる一篇『MM:フュリオサ』とマックスシリーズ振返り

★★★★☆
鑑賞日:6月2日
劇場: MOVIX三好
監督:ジョージ・ミラー
出演:アニャ・テイラ―=ジョイ
 

『マッドマックス 怒りのデス・ロード(2015)』の前日譚であり シタデルの大隊長 女戦士フュリオサ・ジャバサの若き日を描くスピンオフ映画。

ミラーは「『~フュリオサ』の物語は、おそらく『マッドマックス/サンダードーム』の後の出来事だが、このシリーズに厳密な年表はない」とローリング・ストーン誌で明かした。
2023年11月30日にアメリカで公開された予告編では、本作の舞台は世界の崩壊から45年後だとされている。

Wikipedia


「怒りのデス・ロード」が最高すぎたため 今作に対する期待度爆上がりなまま鑑賞した。
思えば「怒りのデス・ロード」の公開前も、 
「マッドマックス」シリーズをリアルタイムでドはまりしていたた身としては、“メル・ギブソンじゃないの?” “いまさら何故にマッドマックス?” 
“70代のミラー監督で大丈夫か”と不安ばかりであったが、
観始めてすぐに没入 観てる間中ずっと心臓バクバクしていた。 
“やってくれたぜミラー監督!疑ってごめんなさい” であった。

そんな「怒りのデス・ロード」を超えるのは、生半可じゃ無理だろうと不安もあったが、超えてくれるという期待の方が大きかった。

その結果は…残念ながらあの衝撃を超えてはこなかった。
ただそれはあの最高峰のイカレたアクション映画に対してであって、 
今作はそもそも「怒りのデス・ロード」とは土俵が違っていたのだ。
あちらは、台詞は少なく、画だけですべてを納得させるバイオレンス・アクション映画(そこが良かった)だったのだが、 
今作はドラマ要素が多めでテンポも遅く感じた。
2匹目のどじょうを敢えて外してきたのか ミラー監督。 

単なる「怒りのデス・ロード」の前日譚というだけでなく 
今後も続くであろう「マッドマックス サーガ」の一篇だと感じた。
(監督本人が「怒りのデス・ロード」の大ヒットに一番驚いていたのではないか?やってることは40数年前と一緒なのだから)
なので「怒りのデス・ロード」超えを期待していた人は、
肩透かしをくらうかもしれないが、
「サーガ」としては、申し分なく面白かった。

『マッドマックス:フュリオサ』撮影風景 J・ミラー監督(中央)


アニャのフュリオサは熱かった。特に眼力が最高だ。
凄く良かったが、それでもシャリセロ=フュリオサを超えてはいなかった。でもしょうがない。それだけシャリセロは、強烈でカッコ良すぎたから。

大健闘のアニャ・テイラ―=ジョイ カッコ良し

AIによって少女時代から大人の顔に違和感なく変化させていたらしいが、必要だったのか。演技力で自然に魅せてほしかった。そこは俳優の仕事であり腕の見せ所なのでは。ディープフェイク等凄い技術だが、この先俳優いらずにならないか心配だ。今作は許容範囲内だが、技術ばかりを使いすぎると白けてしまう。 
あとエンドロールで「怒りのデス・ロード」のハイライト映像も要らなかった。なんだか説明しすぎな気がした。ミラー監督の考える壮大な「マッドマックス サーガ」の始まりなら尚更だ。
 
「怒りのデス・ロード」で残されていた謎がクリアになったのは良かった。「緑の地」、母メリー・ジャバサのカッコよさ、フュリオサの隻腕、坊主頭等々。今回はパラシュート部隊に興奮した。MADなマシンは安定のカッコ良さ。

母は強しメリー・ジャバサ 出番は少なかったがカッコ良し


クリヘム演じるディメンタスは小者過ぎてあまり好きになれず、 
話の流れ上今回はイモータン・ジョー側に肩入れしてしまう展開も少しモヤモヤした。

マントのせいでどうしても ”マイティ” 感が…
ラッキー・ヒューム(左)は、イモータン・ジョーとリズデール・ペルの二役をこなした

ウォーボーイズのニュークス登場にも期待したが叶わなかった、残念。
そして一瞬だけインターセプター写ってた。一度フュリオサのこと助けてたんだな。
ディメンタスの終の住処はショッキングであった。


 
ネタバレになるが、
セルフオマージュを感じさせる場面も多々あった。
パラシュート部隊はジャイロ・キャプテンを連想。 
ジャックの風貌は「2」のマックスによく似ていた。あんなショットガンも持ってたしね。

ジャック(トム・バーク)とマックス(メル・ギブソン)『MADMAX2』
トゥーカッターの腰巾着ジョニーは、逃亡中にマックスに見つかってしまい、
超合金製の手錠で足を括り付けられる 引火した車と共に
「爆死」するか鋸(しかも糸鋸)で「足首を切って脱出するか」の選択を突きつけられ…

フュリオサが隻腕になる場面では、
「マッドマックス」1作目のラストシーン(上、写真)を思い出した。
ジョニーは逃げれなかったが、
フュリオサは、見事に自ら腕一本くれてやり 脱出に成功した。 
あとマックスの妻ジェシーがトゥーカッター一味に絡まれ、車で逃げる際に意図せずバイカーの腕を引きちぎってしまうというシーンも想起。
 

御年79歳 老いて尚意気盛んなミラー監督。 
シタデルに戻ったフィリオサの その後を観てみたい。 
もちろんシャーリーズ・セロンで!
メル・ギブソンのカメオ出演にも期待。
次作はどうなる?ByThe Hollywood Reporter Japan

ミラーは、前作『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(2015)の企画段階で、「ザ・ウェイストランド」の脚本を「フュリオサ」と同時に執筆していた。「怒りのデス・ロード」の1年前を舞台にした「ザ・ウェイストランド」は、マックスが主人公の物語になるとされていた。

ミラー自身は、先月16日にカンヌで「『ウェイストランド』のことを考える前に、『フュリオサ』の結果を見守る」と語っており、次作の可能性は「フュリオサ」次第であることを認めている。

The Hollywood Reporter Japan

『マッドマックス 怒りのデス・ロード(2015)』(120分)★★★★★
今回「MADMAX SAGA」となっているが、そもそも前作「怒りのデス・ロード」もフュリオサの物語であった。
メル・ギブソン版とは別物と認識している。
しかしながら終末の世界観は地続きでアクションは変態的にパワーアップ。
乱暴に言ってしまえばただ行って帰ってくるだけの内容だが、画だけですべてを納得させる圧倒的な熱量。
ただその実 やってることは40数年前から変わっていない。
時代が追い付いたんだな。

写真だけでもワクワクする
ラストのフュリオサとマックス(トム・ハーディ) 言葉なんていらない
きっとまた出会う
『ストリート・オブ・ファイヤー(1984)』の別れのシーンを思い出した。
『ストリート・オブ・ファイヤー(1984)』
ステージから一瞬だけ目を合わせるエレン(ダイアン・レイン) 
自ら去るトム(マイケル・パレ)「…必要な時は 俺がいる」カッコ良すぎる

『マッドマックス/サンダードーム(1985)』(107分)★★★☆☆
当時「ロックンロールの女王」としてヒット曲を連発していたティナ・ターナーを敵役に向かえた色々大人の事情を感じる作品だ。3作目。
タイトルにもある ”2人が入り 出るのは1人” のサンダードームは前半30分でお役目御免。
インターセプターは登場なし、期待していたマックス的カーアクションもラスト20分くらいにやっと機関車とバギーのチェイスでおしまいだ。コメディ要素も少し入って、なんだかとっ散らかっていた。
「2」でジャイロ・キャプテンを演じたブルース・スペンスが別キャラで登場する。
マスター・ブラスターやアイアンバーなどいいキャラはいたのだが、ミラー監督は本当にこれが撮りたかったのか?と長年疑問だったが、最近では
「サーガ」の一篇には、必要なのかもと思うようになってきた。

「1」と「2」のプロデューサー、バイロン・ケネディの喪失も影響大だったのだろう。興行は大いに不振で「怒りのデス・ロード」まで30年掛かってしまった。
しかしながらミラー監督は、ヒットしなかった要因を理解していたから
大傑作「怒りのデス・ロード」を撮ることが出来たのだ。

白塗りドクロメイクの少年は、ウォーボーイズへと発展したか。

白塗りドクロメイクの少年 最後はメイクが落ちて普通の顔に

ツッコミどころ満載の珍作であるが、
ここでもマックスは英雄譚として描かれ
それは「フュリオサ」まで続いている。

「いつの日か 彼らはこのともしびを目指して 戻ってくる」

長髪マックスは新鮮
アウンティ演じるティナ・ターナー(中央)
2023年5月24日83歳没 RIP

『マッドマックス2(1981)』(95分)★★★★☆
マックスマニアたちの度肝を抜いた2作目。
1作目とは全く違うディストピアなその世界観は、以降の80年代SFに多大な影響を与え、日本では世界観を完全拝借した『北斗の拳』が大ヒット。
この作品をスケールアップ、パワーアップさせたものが「怒りのデス・ロード」だ。CGの無い時代、生身のスタントの本気のアクション。
「マックス」映画に欠かせないクセツヨなキャラ群。この頃から既に登場している。ヒューマンガス、赤モヒカンのウェズやジャイロ・キャプテン、鉄ブーメランのキッド…女戦士もいたが活躍できず。
ここからマックスは英雄譚として描かれていく。
「マックスがどうなったかは知らない 記憶の中だけに生きている」

タンクローリーを駆るマックス、ショットガンで応戦

日曜洋画劇場『マッドマックス2』解説:淀川忠治
“暴走族、嫌ですねぇ~”W
この時のマックスの声 山寺宏一だった

ゴールデン洋画劇場『マッドマックス2』解説:高島忠夫
マックス:柴田恭兵、ジャイロ・キャプテン:ジョニー大倉(映画『チンピラ』コンビ)


『マッドマックス(1979)』(93分)★★★★★
オーストラリア発アクション映画。
仲間と我が子を殺され闇落ちするマックスの復讐劇。中二病的映画小僧たちを大いに興奮させた。
クールなマックスは勿論、不死身のグースや敵役のトゥーカッターとその相棒ババなど魅力的なキャラに加えて、V8インターセプター、カワサキZ1000等のマシンが爆走。スタントマンが2名亡くなったという噂のシーンを探したり、マックスターンや伝説の目玉のアップに大興奮した。

「主演のオーディションに現れたメル・ギブソンはボロボロの服装だった。前夜に喧嘩をして、そのまま来たという。これをミラーが気に入って主演が決まった。メルは当時演劇学校に通う学生だった。」

Wikipedia
V8インターセプターを駆るマックス(マクシミリアン)・ロカタンスキー
ダークサイドに堕ちていった
    無口なババ(ジョフ・パリ―:左)     不死身のグース(スティーヴ・ビズレー)

日曜洋画劇場『マッドマックス』解説:淀川忠治
“暴走族、嫌ですねぇ~”WW

水曜ロードショー『マッドマックス』解説:愛川キンキン欣也 
(1983年参議院議員選挙に出馬するために水野晴郎は一旦降板していた)

マックスターン誕生


『マッドストーン(1974)』(103分)★★★★☆
日本公開は1981年で『マッドマックス』のヒットを受け「マッド」の冠をつけた(原題はSTONE)便乗公開。こちらもオーストラリア発。
TVの洋画劇場で鑑賞。ばったもんかと思いきやMADさマシマシで面白く
実は本作が『マッドマックス』のストーリーや設定の原型とされている。
トゥーカッターことヒュー・キース・バーンをはじめ、多くのキャストが『マッドマックス』にも出演している。ピアスを引きちぎるシーンが痛かった。

モーターサイクル・ギャング「グレイブ・ディガーズ(墓掘り軍団)」のメンバー・
通称「ガマ蛙」役のキース=バーン(左)

             


「マッドマックス」シリーズを語るのに欠かせない俳優
ヒュー・キース=バーン。
怪演をありがとう。 RIP

トゥーカッター&イモータン・ジョー
ヒュー・キース=バーン
2020年12月1日没(享年73歳)RIP

「マッドマックス 怒りのデス・ロード」(2015)の悪役イモータン・ジョー役で強烈な印象を残した俳優のヒュー・キース=バーンさんが12月1日(現地時間)、亡くなっていたことが分かった。
キース=バーンさんの代理人が発表した。享年73歳。
1947年にインドで生まれたキース=バーンさんはイギリスで育ち、68年からロイヤル・シェイクスピア・カンパニーで活動。同劇団のツアーで訪れたオーストラリアを気に入り、そのまま移住した。
「マッドストーン」(1974)、「スカイ・ハイ」(75)などのオーストラリア映画への出演を経て、ジョージ・ミラー監督のシリーズ第1作「マッドマックス」に、暴走族のリーダー、トゥーカッター役で起用され注目を集める。15年にシリーズ4作目となる「マッドマックス 怒りのデス・ロード」でシリーズに復帰し、武装集団の首領イモータン・ジョーを演じた。
ミラー監督は、「マッドマックス 怒りのデス・ロード」で再びキース=バーンさんを起用した理由について、「マッドマックス」の初期バージョンで、彼の声をアメリカ人が吹き替えており、その出来がひどかったためだと、USAトゥデイ紙のインタビューで明かしており、「ずっと罪悪感を抱いていたんだ。なんらかの形で埋め合わせをしなくてはいけないと思っていた」と話していた。
なお、ミラー監督は、2009年に公開を目指していたものの頓挫したDC映画「ジャスティス・リーグ」において、火星出身のスーパーヒーロー、マーシャン・マンハンター役にキース=バーンさんを起用する予定だったといわれている。

また「マッドマックス 怒りのデス・ロード」のフュリオサ役で知られるシャーリーズ・セロンは、Twitterにて追悼の意を表し「邪悪な武将を素晴らしく演じられたのは、あなたがそれだけ優しく、美しい魂を持っていたから」と投稿した。
RIP Hugh Keays-Byrne It’s amazing you were able to play an evil warlord so well cause you were such a kind, beautiful soul. You will be deeply missed my friend.Charlize Theron

映画.comm
左からイモータン・ジョー(キース=バーン)、フュリオサ(シャリセロ)、ミラー監督


マッドマックス「ザ・ウェイストランド」の撮影を願う。
    

                      (text by 電気羊は夢を見た)



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