チューリップラジオ

何気無い毎日に疲弊するわけではない。物足りないなと少し思ったり、家具を全て買い直したくなることがたまにあるくらい。私はいつも少し日が落ちた頃に買い物へいく。何を作るか考えずにスーパー行って同じところを何周もしたり、一度の買い物で3000円を超えたりすることはもうなくなった。必要な食べ物、例えば卵、玉ねぎ、豚肉なんかを買っておけば、家にオイスターソースがあるから何とかなる。そうだ、あと家を出る前に洗濯機を回さないといけない。洗剤の量は今だにいまいち分かっていないから、とりあえずぐるっと一周。柔軟剤もぐるっと一周。トイレットペーパーがもうそろそろなかったから、スーパーの帰りに薬局に行かなくちゃ。そうすると少し遠回りになるな。自転車のタイヤはパンクしている。それもその内に直しに行かないと。疲弊するわけではない。だけど私は疲れた。

私が大学の授業に出ない本当の理由は、めんどくさいからとか眠たいからとかそんなのじゃない。好きな人がいないから。大学に入ってすぐの頃、いつも一人で座っているカチューシャをつけた女の子がいて、私はその子が大好きだった。密かな憧れのような存在だった。その頃は喜んで授業を受けに行った。その子はきっともう卒業している。だから今となれば授業をする先生も、受けている生徒も好きじゃない。好きな子のいない授業なんて何になる。興味もない授業を90分受けると私はいつも疲れてしまった。

私は4回生になった。就職活動が始まり、周りがどんどん内定を貰っていく。私だって周りと同じようにやっていたのに、全く内定がもらえなかった。その原因は、同じようにやっている「フリ」をしていただけだからだ。だから内定がないという当たり前の結果に私は落ち込むこともなかった。けれど漠然とした不安だけが日に日に大きくなっていくことを感じていた。気付けば外が暗い、私はそんな毎日を消費し、どんどん世界から離れていった。

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