あおぞらの憂い17
人には必ず弱い部分がある。ソラはそれがわかる子だ。だから私たちを放っておけない。私の意思の弱さもコウシの心の弱さも、きっと初めて会った瞬間にわかっていた。そして二人の弱さが合わさったとき、どんな結末が待っているのかもわかっているのだろうか。私には全く想像できない。
おばさんが死んだ。入院してわずか3ヶ月だった。80近くで体がだいぶ弱っていたのだろうか。私の生まれる前からずっと店で忙しく働いてきたおばさん。やっとゆっくりできますねと心の中で思った。お葬式に出席していると制服を着たソラとアミとフウカがやって来た。私が呼んだのだ。おばさんは若い子が店にくるといつも喜んでいたからお葬式も若い子がきてくれたほうがきっと嬉しいだろうと思った。彼らは少し距離があった私へ向かって軽く会釈した。今年一番の猛暑日だった。
おばさんが死んだと同時に私は本物の無職になってしまったんだ。しかし人の死を近くに感じているからだろうか、仕事を探す気が起きない。なんならコウシの死にたい気持ちが少しわかってしまった。人はいづれ死ぬ。ぼーっとしているとおばさんが乗った霊柩車の音が鳴り、私を現実に引き戻した。なぜか無性にアイスが食べたくなり、ソラたちを誘って駅の近くへ向かった。
さっきからフウカだけが私たちの少し後ろを歩いていた。おそらくソラに振られたのだとわかった。私は黙ってフウカの隣を歩いた。フウカは美人で気が利く。ソラは本当にバカだと思ったけど、私がこの子たちの青春に干渉してはいけない。汚してはいけない。店内のテーブル席でアイスを食べているとフウカはボロボロ涙をこぼし始めた。それを見たアミはフウカの背中をたださすっている。そしてソラはとても居心地悪そうにしている。私が「アイス溶けるから早く食べな」というとまたそれぞれがアイスを食べ始めた。そんななんとも言えない空気が面白くて我慢できなかった私はフッと笑いをこぼしてしまった。するとフウカも泣きながら笑った。アミは「お葬式のあとってこんな空気になるんだね」と言った。ソラは苦笑いだったが肩の力が抜けたようだった。私にできることは彼らの青春をどこかに蒸発させないことだろう。笑えるような思い出になればいいな。もし彼らが忘れてしまっても私は絶対に忘れないと誓った。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?