あおぞらの憂い9
心を許しては閉ざす。たとえ一度心を許した相手でも少し糸が絡まると切って捨てた。それで自分を守ってきた。私は中学生たちが嫌いになったわけではなかった。彼らと一緒にいる自分がどうしようもなく嫌になったのだ。ソラと2人でいる時には全く感じなかった。むしろ楽しかったのだが、それすらも自分の思い上がりであったかもしれない。そうやって自分の頭の中で糸を思い切り複雑にして、そのあとやはり切って捨てた。考えることをやめたその日はぐっすり眠ることができた。
私があの男の再会したのは雨の日の映画館であった。母が調査で北海道へ行くことになり一週間家を開けるということで、1人になった私は気晴らしで市内に映画を観に行くことにした。その日はどんよりした曇りでじめじめしていて傘を持って行くことに迷いはなかった。
駅のホームに着いたと同時にやってきた電車。平日の昼間ということもあり、ここの駅から乗るのは自分だけらしかった。久しく感じられる電車の揺れと流れる灰色の空と海がなにか心をざわつかせた。ガタンガタンと鳴らす車輪の弾みでうるさいはずであるのに、目線の先の灰色の海が。風の強さが。おそらくの波の音をザーザーと私の耳だけに聴こえさせた。
映画館に着くとやっとワクワクした気持ちが戻ってきた。目的であったフランス映画のチケットを窓口で買うと、パンフレットを貰うために入り口あたりへ戻った。さまざまな映画のパンフレットが並べられている。20作品ほどであろうか。その中から3枚ほど気になるパンフレットを手に取った。私はどうもヨーロッパあたりの街並みに惹かれているらしい。それとピンとこない題名、眠くなりそうな憂いた雰囲気が好きだった。私の生き方がそうだったように。
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