【映画】「クナシリ」感想・レビュー・解説

個人的には、そこまで面白いとは感じられない作品だった。

普段、これから観ようとする映画について詳しく調べない。どんな映画なのか特に想像していたわけではないのだけど、なんとなく「思ってたのとは違った」という感じになった。

この映画は、今も国後島に住むロシア人の日常を切り取っていく作品、という感じだ。

確かに、「国後島」という名前は、「北方領土返還」の話題が出る時にしか意識されることがないし、そこがどのような状態になっているのか想像してみることはなかなかない。

そういう意味での興味深さはある。

ただ、一般的に社会問題全般にはそこそこ感心を持っているつもりだが、北方領土の現状には思いの外自分が興味を持っていなかったのだろう。映像的にはさほどの面白さを感じられなかったことが残念だった。

僕が一番面白いと感じたのは、国後島に住むあるロシア人女性のこんな言葉だ。

【日本人はこの島を返還しろというけど、ここに移り住むつもりはない。
漁業をするために海域がほしいだけよ】

なるほど、確かにそうだ。日本は島の返還を希望しているけど、そこに移り住みたいわけじゃない。もちろん、元々国後島に住んでいて強制退去させられた日本人からすれば、住む・住まないに関係なく「故郷を取り戻す」ことが大事なのだし、その辺りの感覚を理解できないわけではないが、実際的に言えば、誰もそこに住みはしないだろう。

つまり、国後島を始め北方領土の返還を求めるということは、歴史的背景や条約の成立など歴史・政治的な様々なことをすべて無視すれば、

<日本人は誰も住まないのに、既に住んでいる人を追い出してまで日本のものにするかどうか>

という問題に帰着すると言える。

国後島に住んでいるロシア人も色々と不満を持っているようで、「建設のための作業員は地元の人間ではなく東アジア人」「40年間トイレのない家に住んでいる(頼んでも整備してくれない)」などの発言があった。映画に登場する人がそうなだけかもしれないが、住民はお年寄りばかりに思えるし、様々なインフラがまともに整備されていない以上、若い人が新たに住むこともないだろう。

北方領土については「ロシアによる実効支配」という表現が使わるが、住民がいなくなれば「実効支配」の実態も消えることになるだろう。

そうなったら、また状況が変わるのかもしれない。

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